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シロアムの園

4月4-6日に障がい児施設の「シロアムの園」にてボランティアをさせていただきました。短い期間でしたので、あまり多くを知ることはできませんでしたが、できる範囲でお伝えしたいと思います。

The Garden of Siloam

シロアムの園は2015年にケニアの首都ナイロビ郊外に開設されました。「ケニアの障がいがあり特別な支えを必要とする人々が一人一人の可能性を発揮し、神様の愛をお互いに分かち合う存在として、完全な一員として生きられる社会を実現する」をビジョンに掲げ、ケニアの障がい児たちを支援しています。ここには、脳性麻痺、発達障害、癲癇(てんかん)、二分脊椎(にぶんせきつい)、ダウン症などの障がい児が50人ほど通っており、デイケアサービスとして、リハビリ、医療、クラスでのアクティビティ、セラピー、外遊びを個別、またはグループ療法で提供します。

セラピーの様子

シロアムの園では地域や家族が子どもを育てるべきだと考えているため、入所は行わないそうです。子どものケアに加えて、保護者のケアも行っています。保護者も基本的に一緒に通所してもらい、カウンセリングや他の保護者との交流を通してメンタルケアを行います。そうすることによって、重い障がいを抱えた子どもに対する理解を深めたり、心を癒すことで家庭での関わり方を改善します。(活動の様子を撮影した動画はこちら)そして代表として活動されているのが公文和子さんです。

小児科医・公文和子さん

公文さん(右)と娘さん(中央)と共に

公文さんは1994年に北海道大学医学部を卒業し、小児科医として働き始めます。2001年には内戦中のシェラレオネを訪れ、子どもが毎日何人も死んでいくのを目にします。その中で「一人の命に関わるとはどういうことか、自分に何ができるか」と考える日々を過ごしたそうです。ケニアには2002年に渡航し、JICAの専門家としてや医師としてNGOで働きます。ここでは問題やニーズが山ほどある中で、誰のために働いているのか、何をすべきなのか、何をしたいのか、が分からなくなったそうです。地域に根ざした活動をしているようでも、実際はドナーの意向に沿って動かざるを得ない現状があるからです。また、発展途上国の政策として行われている「死亡率を下げる」ということに焦点を当てて活動していましたが、その中で本来輝くべきなのにうずもれてしまっている多くの命に出会い、目の前にあるその命をもっと輝かせたいと思ったそうです。日本のNGOにて、医療スポンサーシップをする活動をしていた時に、健常者は借金をするといった最終手段がありますが、障がい者は、親は世話のために働けないため収入が減る一方で、社会保障が不十分なため収入もない、という厳しい状況にあることに気づきます。「命は神様の計画のもとにつくられて」おり、意味のない命はありません。社会に守られづらい環境にある障がい児たちの命を輝かせる手伝いをしたいという思いから、シロアムの園が始まります。(公文さんは本も出版されています「グッド・モーニング・トゥ・ユー!」)

愛に溢れるボランティアでの3日間

私がボランティアをしながら思ったのは、施設に愛があふれていることです。シロアムの園の先生たちみんなが、子ども達に愛情を持って心からの笑顔で接しているのが見てすぐに分かりました。

優しく明るい先生(アシスタント)たち


一人ひとりの特徴を理解した上で、その子に合わせて対応を変えたりサービスを提供したりしています。そのお陰で子ども達もとても楽しそうで幸せそうでした。私は日本で、認知症を抱えた方たちの老人ホームと障がい児たちの施設で、1年間アルバイトをしていました。しかし、そこには残念ながら言われたことを実行できないおばあちゃんに対して、いつも怒鳴るスタッフがいました。見学に来られていたJICAボランティアの方も、彼が働いている施設のスタッフの多くは仕事中に携帯をいじったりするなど、「仕事」はするがシロアムの園のように利用者さんに向き合っていないと話されていました。公文さんによると、最初は難しい面も多かったそうですが、彼女の思いと人柄が他の先生たちを変えたのだなと思います。

月に一回の誕生日会(4月生まれの子達)

もちろん、医療的な成果もたくさん達成されています。これまで貧困のために抗痙攣剤(こうけいれんざい)を購入できず、痙攣(けいれん)がコントロールできなかった癲癇児(てんかんじ)たちに適切な薬を処方し、社会生活ができるようになりました。私が関わった女の子も、最初は笑わず喋らないし、1人では何もできなかったそうです。しかし、私が会った彼女は、お喋りも人も大好きで、みんなにくっついて回って、ニコニコ話しかけていました。また、自分で服も着れるし、食べれるし、先生たちとの知育トレーニングもしていました。自分の事だけでなく、友達がクラス中に教室を歩き回っていると、その子の椅子をポンポンっとたたいて着席させようとするなど、周りの事も見ていました。


クラスアクティビティの様子

ケニアは福祉制度が十分ではなく、日本のように政府からの保障などはありません。適切な医療や教育を行うことができる専門家や施設は限られている上に、医療保険や福祉サービスなどはほとんどなく、障がい児をもつ家族は経済的にも厳しい状況に置かれています。さらに、障がい児に対する差別や偏見も深刻です。個性豊かで感情豊かで、とても可愛い子ども達が笑顔で過ごせる環境を提供しているシロアムの園は、彼ら彼女らにとって、また保護者にとって、とても有難い場所だろうなと思います。

公文さんは「一人一人が生きる喜びを感じ、既に持っている能力や賜物をキラキラと輝かせて生きていくことができるように」支援を続けています。先日クラウドファンディングにて寄付を募り、より充実した支援ができるように、新しい施設の建設も同時に進行しています。

シロアムの園に興味を持ってくださった方は、シロアムの園・後援会のシロアムの友の会を通してや、現地での訪問・ボランティアなど関わりを持っていただけたら嬉しいです!




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