『ゆっくり』 #362

これまで360本くらい書いてきて、わざわざ品詞を分類してちょっとした枠組みを与えてみて当然ながら名詞が多くなってそれに次いで形容詞や動詞がくるわけだが、まったく気づかなかったのが、これまで副詞がひとつもなかったということ。まんべんなく均等に広く浅くやろう、と思っていたわけでもないがわりとメジャーな品詞である副詞がこれまで出ていなかったというのは驚いたけれど、時間や数の目標があるわけでもないし、ゆっくりと、ということで。
この書き出しのために選んだのがゆっくりというわけでもなく、そういえば副詞がゼロだと気付いて検索窓に副詞と打ち込んで出てきたのが「ゆっくり」だったというのが理由。検索してみて副詞について語尾が「と」「に」「り」「ん」で終わるものが多い、とあって、まったくそれは知らなかった、気付いていなかったなとハッとした。と、については「もっと」「きっと」「やっと」と、こうしてすぐ思いついたのはみんな促音。に、については「まことに」「つぶさに」「じょうずに」という感じか、状態を表しそうな名詞ににを付けたような感じだ。り、は「ゆっくり」「のんびり」「すっかり」と思いついたけどさらに「まったり」「ぐっすり」が出てきて、とにかくスローな感じになるのが、り、か。ん、は「どんどん」「ぐんぐん」って感じで擬態語ばかりが思い浮かぶ。こうして書いてみたけど、もっと、もそうだし、たぶん、まるで、しばらく、とか色々と型が定まらない言葉でもある。ふと気づかぬうちに、という「ふと」もそうだし、なかなか奥ゆかしい。の、なかなか、も、きっと、そう。
副詞は旧くに「そえことば」であったことを知れたのは今回最大の旨味だと思う。
言葉の解説みたいな文章にしてしまうとカギカッコや読点が増えてなんだか間抜けな文章になってしまうのが悩ましい。以前はゆるふわというか、間を取ったような文章を志向していたこともあったけれど今は言葉のリズムや速度よりも、内容の浅さと深さをゆらゆらと変えて、その浮沈で面白がれる文章の方が読むにも書くにも好きだなと思っている時期(2021年8月中旬)なので、あまりゆっくりな文章にはならない。根がゆっくりなくせにと自分でも思うけれど、作業とかどうでもいいと思うことにはものすごく効率を求めてせっかちな性質もあるので、一度、私はゆっくりするために急いでいるのか、ただ無駄であることに腹が立つから急いでいるのか、と考えたことがあったけど、急いで行程を短縮していって得られた時間で結局、「ゆっくり待つ」ことはできなかったから単純に、無駄だなぁ、と思うことが嫌なんだなと、後者なんだとわかった。
ゆっくりタイピングするなんてもってのほかだし、景色を見るでもないのにゆっくり歩くことはできないし、あえてゆっくり歩いて自分の関節とか筋肉とか動作を感じ取りながら歩く、ということでもなければゆっくり動くこともできなくて、いつのまにか、意味をもたないゆっくりさを許容できなくなったんだなぁ、と、「ゆっくり」の字面を見ながら萎びる。

#ゆっくり #210821

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