【随想】消費生活センター条例化の課題#7−県としてのあるべき消費生活相談の体制(7/10)

 消費者安全法により、都道府県の役割として明示された点については、これまでも多かれ少なかれ実施されてきたところでもあり、とくに異論はない。だが、現実に県が市町村に対しこうした役割を適切に果たしているか否かについてはさらに検討が必要である。殊に、神奈川県では、比較的充実した消費生活センターを有する3つの政令指定都市とその他の市町村との間で提供される行政サービスに差があるとの指摘が少なからずみられ、こうした市町村間の格差に対応した補完的な役割が県には期待されている。
 また、都道府県にあっては、同法にもあるように、消費生活相談等の「広域的な見地からの対応・実施」が要請され、かつ、市町村に対する助言、協力、情報の提供その他の援助も求められている。当然そうした助言、協力、情報提供その他の援助といった機能をになうためには、自ら十分な体制を維持・構築すると同時に、専門的な知識・技術を伴った調査・分析の蓄積が不可欠となる。つまり、都道府県レベルの消費生活センターには、通常の相談部門のほかに、調査・研究部門の充実が図られなければならない。現在、神奈川県の消費生活センターには相談部門のなかに情報収集や分析等を行うグループがある。これが消費生活相談のセンター・オブ・センターとして、県や県内の市町村の消費生活センターから集まる高度でより専門的な相談に対応できるよう常時情報収集や分析等に努めることが期待され、ここでの情報収集・分析の成果を有用な助言や情報の提供につなげていくことが求められている。
 また、都道府県は、「消費者事故等の状況及び動向を把握するため」、「専門的な知識及び技術」を伴う、「必要な調査又は分析」の実施が義務づけられている(同法8条1項2号ハ)。ここで想定されている都道府県の義務は、同法12条にもとづき内閣総理大臣に対する情報通知義務等を果たすための前提である。したがって、単に消費者事故等の状況や動向の統計的把握・分析のようなものにとどまらず、消費者事故等につながる可能性のある消費者の苦情や被害について、その原因究明のため、専門的な知識や技術を駆使した調査・分析を実施する体制が整えられることが必要である。殊に、苦情品テストを含めた商品テストの実施は、現実問題として市町村レベルでの実施は相当困難であるといわねばならず、市町村に対する消費者行政の補完として、都道府県ないし都道府県の消費生活センターの役割がとくに期待される(2015年3月5日記)。

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