【随想】消費生活センター条例化の課題#8−消費生活センターの「センター」のもつ意味(8/10)

 消費生活センターの条例化を促す消費者安全法は、これまで同センター一般の機能として捉えられてきた消費者教育や、これと関連して展開してきた消費者の自主的な活動に対する場の提供などについては特に書かれていない。これは、地方公共団体の消費者教育について、消費者教育推進法があるからだと考えられる。もちろん、条例には「消費者教育を受ける権利」が規定され、県も消費者に対する啓発活動および消費生活に関する教育の充実に努めるべきことが責務として掲げられている。とくに、消費者教育推進法制定以降は、「かながわ消費者施策推進指針」(平成27年3月最新改定)において消費者行政の重点施策として消費者教育が位置づけられ、消費者教育推進地域協議会(消費者教育推進法20条)をはじめとする推進体制の充実が図られている。そして、消費生活センターも、教育委員会等とともに地域における消費者教育の推進機関の一つとして位置づけられている。
 消費生活センターが担う消費者の自主的な活動の場の提供・確保は、消費生活センターが「センター方式」を採用するもっとも根本的な理由に関わる問題である。単に、物理的な意味での場の提供ということであれば、神奈川県においては、県民活動サポートセンターがあり、従来の消費生活センターの機能を一定程度代替していると言えるかもしれない。だが、もともと消費生活センターは、消費者行政を具体的に展開する場であると同時に、地域における消費者運動や消費者の自主的な活動による力の形成に拠点を提供するという機能を果たすことが重視されてきた。「センター方式」の採用はまさにそのためのものであり、それゆえ、消費生活センターには、消費者の立場にたち、消費者の問題提起に可能な限り対応する試験・研究設備が置かれ(商品テスト室等)、また消費者の自主的学習の用に供されてきたのである(展示室やセミナールームやミーティングルーム)。
 現在、消費者安全法にもあるように、「消費生活センター」の名称は、一般的な用語として法令上も使われているようであるが、「センター」には単なる「窓口」以上の意味を本来含んでいる。消費生活センターの在り方を議論するとき、このことを想起する必要があるのではないか(2016年4月5日記)。

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