【随想】消費生活センター条例化の課題#10−消費生活課と消費生活センターの関係(10/10)

 神奈川県は、今回の条例化にあたって、県の消費生活センターの体制ないし組織をこれまでと変わらず、消費生活課を消費者安全法上の「消費生活センター」とし、名称もこれまでどおり「かながわ中央消費生活センター」とする方針である。
 ここで問題となるのが、本庁機関である消費生活課と「かながわ中央消費生活センター」の関係である。もともと複数あった県の消費生活センターが、いわゆる「神奈川方式」を経て、最終的に「横浜消費生活センター」(当時)のみが残り、これが消費生活課の横浜駐在事務所として本庁機関と位置づけられて以降、消費生活課と消費生活センターは、行政組織上、一つの組織である。
 県は今回の条例化にあたっては、これまでどおり「消費生活課全体を消費者安全法上の消費生活センターとし」、組織としての名称は「消費生活課」をそのまま使用して行くとしている。つまり、同一の組織について、県の行政組織規則上の名称(消費生活課)と消費者安全法の名称(消費生活センター)の両方が付されるということである。
 消費者安全法は、消費生活センターの機能のうち、明示的な規定を持つのは消費生活相談のみであり、商品テストは消費者事故等の消費安全性と関連して示唆されるにすぎない。消費者教育については、消費者教育推進法にもとづき、教育委員会等とともに地域における消費者教育の推進機関の一つとして位置づけられている。しかし、消費生活センターが、これら以外の機能を有していたことは、すでに明らかにしてきたところである。他方、消費生活課の固有の事務として、①消費者行政の総合的企画および調整に関すること、②県庁内外での他機関との調整機能、③審議会や被害救済委員会の企画・運営、④消費生活条例に基づく事業者指導など等々は、消費生活センターの機能・役割とは区別して指摘しうるものである。
 今回の条例化の狙いは、消費生活センターの設置を都道府県に義務づけ、その上で、当該消費生活センターの名称、住所、消費生活相談・あっせんを行う日時を地域の一般消費者への公示を通じて周知させることにある。この趣旨を踏まえると、消費生活相談業務以外の機能を当然に予想している地方公共団体の消費生活センターにあって、殊に、これまでの経緯から消費生活課と消費生活センターとを一体化するに至った神奈川県にあっては、少なくとも「消費生活センター」の業務について、消費生活課の機能とは別に、地域の住民が分かるよう、条例それ自体に具体的に書き込むことが必要なのではないかとかんがえられる(2016年6月5日記)。

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