千と千尋の神隠し@帝国劇場

『千と千尋の神隠し』がとても忠実に再現されていると同時に、アトラクションを体感したような面白さがあるスケールの大きな作品でした。
舞台化によるファンタジーとリアリティのバランスがしっかり取られていて、原作アニメが描くファンタジーは舞台上でもしっかりファンタジーとして存在し、しかもそれが舞台ならではの方法で表現されていたことがとても印象的です。
ストーリー展開は覚えている限りでは舞台化によるオリジナリティはほぼなくアニメ通りだったこともあって(忠実すぎて次の展開どうなるんだっけ?と思い出す方に途中気が向いたりもしましたが)、『千と千尋の神隠し』という作品をどう舞台化したかという表現に意識が集中して、"舞台"そのものを味わっているような気分になりました。
音楽はアニメ版の曲も要所で使われていて、耳に残っている曲が生演奏で聞こえるとぐっと引き込まれます。
オープニングとエンディングのアニメーションはスタジオジブリが作成したそうですが、アニメーションもどれも素敵でした。個人的には銭婆のところへ向かう電車のシーンの空と乗客の影が美しくて好きでした。

以下、気になったキャストの方々についてです。

千尋役の上白石萌音さんは、千尋が現実にいたらこんな子だろうと思うくらいに千尋そのものというお芝居でした。幼く心許なげな雰囲気で、千尋の心細さや寂しさ、頼りなさが手にとるように感じられる一幕と、芯の強さやどこか達観したような落ち着きが感じられるようになる二幕で、千尋の成長や思いが見える萌音さんの演技が素敵でした。

湯婆婆&銭婆役の夏木マリさんは、なんかもうずるいくらいにキャラクターそのもので、声の力を感じます。ただ声だけでなく、お芝居も存在感もとても迫力があり、立ってるだけで湯婆婆でした。

リン役の咲妃みゆさんと釜爺の橋本さとしさんも素敵でした。
リンは口は悪くてもしっかり千尋のことを気にかけて面倒を見ている姉御肌なところがかっこよかったです。勢いのある澄んだ声が綺麗で、いつまでも聞いていたくなるような心地よさでした。
釜爺も千尋やハクへの思いやりが見えて、温かさを感じる芝居が良かったです。あと、間と言うのでしょうか、テンポが絶妙で面白かったです。開演&幕間&終焉アナウンスも大活躍で、やっぱり上手いなあと実感しました。

ミュージカルではなかったんですがいくつかの場面で歌があり、中でもリンや千尋たちの寝る部屋で湯女が2人で歌う歌がとても綺麗でした。

今回、どのキャストの方も皆さん作品から抜け出てきたようで、しかも生き生きとされていらっしゃって、それが一層千と千尋の世界観を盛り上げていたのが素晴らしかったです。