夢介千両みやげ/Sensational!@雪組東京宝塚劇場

このストーリーを魅せられる雪組はすごいなと思いました。
良い話です。すごく良い話なんですが、劇中起こるほぼ全ての出来事を金の力でゴリ押しで解決していくので、いまいち響かなかったりワンパターンさを感じたり難しいお芝居だなあというのが本公演より先に配信の新人公演を流し見たときの印象でした。

やっと本公演を観劇して、ぶっ刺さるタイプの話ではないけれど、登場人物たちの生き生きとした姿、その中にある人情や温かみが眩しいほどに鮮やかに伝わってきて、自然と心がほぐれて浮き立つような気分になりました。
しかも絶妙に当て書きっぽさがあり、このジェンヌさんのこういう役良いよね!見たいよね!似合うよね!みたいなツボを的確についてくるのも楽しいです。
そして役が多いは絶対的正義。キャラクターがはっきりしていて個性的な人が舞台に溢れているとそれだけでウキウキします。上級生から下級生まで見どころがあって忙しいくらいでした。

◆夢介 彩風咲奈さん
咲ちゃんの演技力の高さはもちろんあると思うんですが、それを超えた咲ちゃんのお人柄や人間力のようなものを見せつけられたような心地です。
夢介さんがとにかく格好いい。
言葉は訛ってるし作中で牛みたいとまで言われるわかりやすい二枚目というわけでもない夢さんが、咲ちゃんが演じることによってめちゃくちゃ格好よく魅力的になります。
THE良い人で割りと受け身で巻き込まれ型な夢さんですが、決めるところは決める、懐の深さを見せつける、抜けてるような面白さ可愛さも垣間見せる、なんだかんだちゃんとお銀に一途、とただ良い人属性がてんこ盛りなだけでは終わらない、どうしようもなく好きになってしまうような求心力がありました。
男女関係なく出会った人が皆夢さんに惚れていくことへの納得感がありすぎます。私も混ざって「日本一のお人好し」って掛け声やりたい。
着物の着こなしもたまらなく格好良かったです。着物でもわかるスタイルの良さ。立ち姿から素敵。

◆お銀 朝月希和さん
姉御肌な押しかけ女房きわちゃん、可愛すぎか。
押しの強さで押しかけ女房に収まってからの嫉妬心や意地っぱりな面も含めた夢さんへの全力の一途さが本当に可愛くて、だからこそ夢さんとお銀を見てるとやきもきします。笑。
朴訥な咲ちゃん×玄人女きわちゃん、良いです。甲斐甲斐しく夢さんの世話をしてところどころ妄想に浸っているお銀さんの幸せそうなお顔と言ったらもう。愛の深さが伝わってきます。
夢さんのために自分を変えようと努力する健気さや周囲に対する優しさ、思いやりに真っ直ぐな心根がにじみ出ていたのが素敵でした。

◆総太郎 朝美絢さん
何から何まであーさであることによる説得力が突き抜けてました。
器量よしも女性からモテモテなのも、あーさが言うと自称に収まらなくて、うんそうだよねと当然のこととしてすっと入ってきます。最初の銀橋の歌とか似合いすぎてて思わず笑ってしまった。
軽妙なお芝居がうまくて、軽薄さも情けなさも愛嬌となって憎めないキャラクターがあーさにすごく合っていたように思いました。イケメンで可愛くて心くすぐられます。
最後の改心したあとの誠実さまで見せてくれるのが良いですね。一気に顔つきが大人っぽく落ち着いた雰囲気をまとって、これがまた素敵でした。

◆三太 和希そらさん
今回が組替後初めての公演とは思えないくらい雪組に馴染んでるのに、登場するとどこにいても存在感を放っていて視線を奪っていく不思議な力があるお人です、ソラカズキさん。
スリの少年で悪びれずあれこれやっているところも、子分二人の兄貴分として世話を焼いているところも、悪戯っぽい言動をしている中で時々妙に大人びて見えるのも、全部が魅力的で目が離せません。
ソラカズキさんのお芝居が立て板に水という感じで咲ちゃんやきわちゃんとも息の合ったテンポのいい掛け合いになっているのが気持ちいいくらい楽しかったです。
あと個人的に大注目だったのがお糸ちゃんとの恋愛模様。スリから始まり付かず離れずっぽいもどかしさも感じつつ2人の相思相愛になったところまで見届けました。眼福です。一つ目一家の襲撃シーンとかしっかり子分とお糸ちゃんを背中にかばってる三太が良いです。お糸ちゃん縄抜け後に拍手して喜びあったり、お師匠さんとハイタッチしたくてわちゃわちゃやってたりしたのが可愛かったです。
ショーでも思いましたが、夢白あやちゃんとの並びがすごくしっくりきていて、次回の心中恋の大和路もますます楽しみになりました。

◆お糸 夢白あやさん
華やかな美人さんで目立ちます。個人的に気になっている方でもあるので出てこられると観てしまいます。
これだけは書き残しておきたいんですが、まだ三太と微妙に付かず離れずな距離感を感じさせる後半の場面で舞台からはける際、先を歩く三太をてとてと追いかけながら舞台袖の近くに迫ったところでお糸ちゃんが自分から三太さんの手を繋ぎに行く瞬間があってもう色々吹っ飛びました。あっちこっち観たい方々がいっぱいいらっしゃる中でなりふり構わず三太さん&お糸ちゃんをオペラグラスで追いかけていた自分を褒めたい。良いもの見ました。好き。

他にも活躍されている娘役さんが多かったのが嬉しかったです。芸者衆や春駒座と言った日本物ならではの華やかさが味わえました。

続いて中村B先生のショーSensational!です。

綾凰華くん辞めるの止めて。
まるでサヨナラショーかと思うような当て書きの歌もあり、咲ちゃんとの黒燕尾の絡みもあり、雪組での存在の大きさを改めて感じるとともに、あやなさんが愛されていることがこれでもかと伝わってきてすごく良いショーでした。一場面一場面とても清々しく熱く踊り歌われていて本当にうっとりします。星組の時から端正でノーブルな雰囲気のある美しい男役さんで、雪組でさらにご活躍されていたので本当に惜しいです。

中村Bのショーは安心安定の楽しさでした。上級生から下級生まで見せ場があって、特に場面ごとに色が違うダンスが見応えがあってあっという間の時間でした。今回は全体的にアップテンポで激しめなトーンがすごく好みで、雪組の現メンバーにも合っているように感じました。見どころが多く目が足りないと途中思うくらいで、何回観ても楽しめそうなショーでした。

お芝居とは打って変わった咲きわの熱い絡みが良いです。このお二方、ショーで組むとぐっと大人っぽい色気を纏って魅せてくれるのが素敵です。中村B先生のショーはオーソドックスだからこそトップコンビの絡みをしっかり作ってくれるのがトップコンビ推しの私としては好きなポイントだったりします。
そして両脇を締めるあーさ&ソラカズキの2人がギラギラしていているのが素晴らしいです。2人とも全身全霊で自分の魅力を押し出してくる上にそのアピール力が揃ってずば抜けて高いので愉快ですね。もう癖になりそうだし、雪組でどんどんショーをやってほしいです(次一本物ですが)。

お芝居、ショーともに終演後に良いものを観たとしみじみ感じられる作品でした。
ソラカズキさんのあまりの眩しさにあてられてフォトブック買おうかと帰り際に新キャトルをのぞいたらあまりの列の長さに諦めてしまったのが心残りです。買えないほど欲しくなります。次こそは。