元禄バロックロック@花組東京宝塚劇場

花組はちゃめちゃに楽しいな!!?ってなりました元禄バロックロック&The Fascination!
運良く東京公演を観られてドハマリし、公演後長らく元禄バロックロックロスに陥ってましたが、先日やっとBlue-rayが発売されたことで観たときのあれこれが蘇ってきたので遅ればせながらまとめてみたいと思います。

初めての谷貴矢先生作品でした。これは刺さる先生がまた増えた予感がします。
元禄バロックロックは悪い人が1人もいない、おとぎ話のような綺麗すぎるファンタジーです。そんな世界で描かれるストーリーのあらゆるきっかけがそれぞれのキャラクターの感情に起因していて、その感情がはっきりがっつり描かれてとにかく人間味あふれる作品に仕上がっているというのがすごくツボでした。
ストーリーだけでなく、ファンタジーを突き詰める舞台全体の美しさも目を引いて、キャラクタービジュアルも衣装もセットもこれでもかというくらい華やかで個性的で、宝塚が存分に発揮されていてめちゃくちゃ楽しいです。見た目から個性が出るので下級生までビジュアルを作り込み甲斐がありそうなのもポイント高いです。
画面やストーリーのファンタジーと人間の生き生きした感情のバランスがとても心地よい作品でした。
これまでの作品の傾向的に(まだ全然見られていないのですが)SFとかスチームパンク系のオタクなんでしょうか谷先生。このあたりを攻める先生ってこれまでいなかったので、今後の作品にも期待です。

気になった方々についてです。
今回ここに書ききれないほどどのキャラクターも魅力的でした。個性が全面に出ているお芝居の楽しさを心の底から感じました。

◆クロノスケ 柚香光さん
もうカッコよすぎてずるい。惚れるしかない。
れいくんと言えばクールな超絶美形という印象が真っ先に浮かぶのですが、宝塚で時々いらっしゃる相手役がいらないタイプのトップ様かと思えばむしろ真逆で、ヒロインがいる時の魅力が突き抜けていて、何ならヒロインに押されたりまいったりしているような人間らしさにどうしようもなく心くすぐられるかっこよさがあるというのが素敵すぎます。今更気づいたのかという感じですが、あのビジュアルでこのキャラクターでこの持ち味はハマったらまずいやつです。
れいくんのクロノスケは真面目さと甘さの匙加減が絶妙です。真っ直ぐでかつ押さえるべきところが押さえられているのでどこを切り取っても格好良く、その上たまに見せる隙がクロノスケの人間らしさを深めて一層魅力が増します。柚香光という人はこんなに熱く人間味に溢れたハートフルなお芝居をされる方なのかとびっくりしました。
まどかちゃんとのお芝居も良くて、キラに振り回されたり手の平の上で転がされたりしながらも肝心なところではしっかりリードし包容力も見せつけるというのがたまらないです。誰に対しても真っ直ぐに向き合いますが、キラが相手の時だけ明らかに表情も視線も優しげで声色まで柔らかくて、クロノスケのキラへの思いが伝わってきます。たまに挟まれるちょっと気の抜けたシーンも、間が上手くて自然と笑ってしまいました。
余談ですが、公演を観た時は全然気にならなかったんですが、Blue-rayだと舞台の暗さと前髪の影で花火の銀橋でのキラとの会話で一部表情が見えにくくなってしまったのが惜しかったです。クロノスケのビジュアル、れいくんしか出来なさそうな感じが大好きなんですけどね。

◆キラ 星風まどかさん
圧倒的ヒロイン力。
ヒロインでかつ、まどかさんの持つ主人公属性が存分に発揮されていて大好きです、キラ。
宙組娘役トップとして培ってきたキャリアに裏付けられる堂々とした実力と、新生花組トップコンビとしてれいくんとともに見せる初々しさが、アンバランスさを抱えるキラというキャラクターにぴったりハマっていました。
演じるまどかさんのお芝居がとにかく雄弁で感情が溢れていて、余すところなくキラの想いを伝えてくれるのが本当に気持ちいいほど素晴らしいです。
キラの魅力はあの何とも言えないアンバランスさだと思います。
ずっと狭い部屋に閉じ込められて本でしか世界を知らなかった幼さといきなり1人きりで外に出されて長い時間をかけて何度も同じ時を繰り返し積み重ねた結果の成熟した雰囲気。クロノスケに見せる少女のような純粋さとクロノスケを引き止めるための計算高さ。クロノスケを転がす余裕と彼を死なせないためのがむしゃらな必死さ。キラを形作る全ての想いがただひたすらクロノスケへの恋につながっていて、一途さや執着、強がり、努力などを浮き彫りにしているのが見事でもうたまりませんでした。キラに感情移入して観るたびに泣きます。
れいくんとのお芝居も素敵で、可愛らしいはしゃいだやりとりがあると思えばはっと息を飲むような大人っぽい美しい絡みもあり、最初から最後まで2人から目が離せませんでした。今回、衣装もビジュアルも華やかでお似合いで、特にメインビジュアルの赤い着物姿がすごく好きです。
れいまどコンビのクロノスケとキラが見られてただただ幸せです。もっと生で観たかった。

◆コウズケノスケ 水美舞斗さん
クロノスケとは違ったベクトルでカッコいいお方です。
悪役の権化みたいな顔をして国を奪う野望まで抱えて、その動機が過去に別れた恋人にまつわる後悔の清算(国を大きくしてやるという野望もありますが)というごくごく個人的な事情というのが良い味を出してます。
元禄バロックロックは感情が溢れすぎているが故に作品に箱庭感があって、表現によってはスケールの小ささを感じそうなところを、終始一貫して渋くて迫力ある悪役として存在し続けたのはさすがマイティーです。
ところでツバキに膝枕されながらその膝撫で回すシーンが色っぽすぎました。本当にがっつり膝撫で回してるのでガン見していいか心配になるほどだったんですが、あれがどうしようもなく格好良く見える現象なんなんでしょうか。

◆ツナヨシ 音くり寿さん
何者ですかおとくりさん。
音くり寿さんという上手い娘役さんがいらっしゃるということは認識していたのですが、なんかもう上手い通り越してすごかったです。ツナヨシ様が喋りだすと場の空気が変わります。見た目は可愛くて幼いのに、底知れない気迫が漂っていて圧巻でした。純粋さを集めて固めたようなツナヨシ様なので、国や周囲の人々への真摯さも果てしなければスイッチが入った時の威圧感ヤバいしで、色々振り切ったキャラクターに夢中になりました。配役発表の時は娘役がツナヨシ?男役?くらいに思っていたのが、ツナヨシ様の登場シーン見た直後からくりすさんがこの役でなければいけない理由を十二分に思い知ります。
こんなお芝居をされる方がいらっしゃるのかと度肝を抜かれました。しかもお芝居に加えて声もとても滑らかで美しくて、緩急ある歌も自在に歌いこなしていらっしゃって、完全に心を奪われました。この衝撃が上手く文章に書けないのがもどかしいです。だいぶ出遅れて今更な感もありますが、今からくりすさんのご活躍を追いかけます。絶対楽しい。

クラノスケの永久輝せあさんもビジュアルからお芝居まで文句なしのかっこよさです。正義一色ではなく、手段を選ばないところや自覚的な黒さがあるのがまた良いんですよね。
タクミノカミの聖乃あすかさんは語り部的な役割を担う難しそうな役でしたが存在感がありました。観劇したときは目が足りないせいでなかなか掴めなかったのですが、Blu-ray見返したら言葉は少なくてもお芝居が細やかで見応えがありました。
ヨシヤスの優波慧さんは退団が惜しいです。ヨシヤスも悪役のように見えて実は、というキャラでツナヨシ様に語りかける言葉の温かさがとても心に残りました。

リクの華雅りりかさんは間の上手さがさすがで、クラノスケの家のシーンはリクさんの圧が全部持っていってました。ただの恐妻じゃなくて、クラノスケへの愛もしっかり感じられて、討ち入り前の覚悟が決まったクラノスケに全てわかっているように何も言わずに従う姿が素敵でした。
ツバキの星空美咲さんは下級生とは思えない大人っぽい魅力で、そんなツバキがコウズケノスケを助けるために必死に動くというのがドラマチックで良かったです。
ケイショウインの美風舞良さんはやはりお芝居が上手いですし場が締まります。ツナヨシに対してもコウズケノスケに対しても細やかな思いが見えるのが印象的でした。


Blu-rayを1回見始めたらもう止まらなくて繰り返し見てしまいます。しばらくこんな日が続きそうです。
刺さる作品に出会えて、花組さんと谷先生に感謝です。