Never Say Goodbey@宙組東京宝塚劇場

初演観劇当時からどの曲も好きすぎて、10年以上前の作品の再演なのに全曲歌えそうな勢いで耳に残っていて、ほぼ全部内容を覚えていました。
フランク・ワイルドホーン氏の音楽の偉大さと、ミュージカルにおける音楽の重さを改めて思い知らされます。

宝塚において再演は珍しくないですが、Never Say Goodbyeは発表された時は驚きました。当時タカハナコンビが大好きで、この2人の退団のために描かれる小池先生の一本物のミュージカルとはどんな作品だろうと期待して劇場に行って色々な意味で衝撃を受けたことを覚えています。
音楽の素晴らしさと力強さは言わずもがなです。
ある意味でそれ以上に、誰もが認めるゴールデンコンビであったタカハナのクライマックスが、和央ようかという男役のために作られた、タカコさんを究極に格好良く見せることを突き詰めた作品であったことも衝撃でした。
当て書きの退団公演作品の再演というだけでもハードルが高く、しかも個人的に思い入れもある好きな作品ということで、今回は結構身構えて観に行って来ました。

昔話が長くなりました。
宙組ネバセイ再演、作品の迫力はそのままに現宙組らしさもあり、改めて見応えがあるいい作品だなと思いました。
この作品の見どころであるコーラスの一体感、重厚感がさすがです。作品に占める歌の割合がすごく大きいので、宙組の迫力あるコーラスはぐっと観ている人を引き込んでいく力がありました。
歌が上手い人は学年・番手関わりなくスポットが当たるのもネバセイの良さで、今回もたくさんの歌うまさんが活躍されていたのも楽しかったです。

今の宙組らしさを感じたのは、主要人物のキャラクターの違いです。
初演はタカコさんの圧倒的な存在感とそれを際立たせる演出が相まって、孤高の人のようなジョルジュという一人の人間を描く物語という印象が強かったです。
今回の再演も根本的には同じ路線ですが、キャサリンとヴィセント(特にキャサリン)の押し出しがより強くなって、ジョルジュを巡る人間関係がよりフォーカスされたように感じました。ただ、キャサリンの存在感が増したことによる作品への効果が、ジョルジュとキャサリンの恋愛色が強くなるというよりは、ジョルジュと肩を並べるキャサリンの、もう一人の主人公とも言うべき生き様の物語が加わったように見えたのは、現トップコンビの面白さな気がします。
キャストや演出プランの違いによって初演も再演もそれぞれ好きなポイントが出来て、再演の楽しさを味わえました。あと、初演時と今で私の宙組理解度が違うこと&思い出補正によるところが大きい気がしますが、改めて初演時のメンバーの凄さを再認識したりもしました。

あと演出面で大きく変わったのは映像の利用でした。小池先生お得意の技ですね。舞台上での映像の投影ってケースバイケースで印象が変わりますが、この作品において舞台の奥に街並みが見えるようになったというのは、日常から地続きであったことの想起や街並みの美しさの表現としてプラスに働いていたと感じました。

以下、気になったキャストの方々です。

ジョルジュ・マルロー@真風涼帆さん
真風さんの魅力はあれだけのかっこよさ、ナチュラルな男役感の中に、ふと手を差し伸べたくなるような寂しさや心もとなさを感じさせるところだと思っているんですが、自分のことをデラシネと表現する、なんとなく掴みどころのない大人の男性ジョルジュは真風さんの個性が生きていてかっこよかったです。
真風さんのジョルジュは、カメラマンというある種の傍観者/第三者から、自分の居場所を見つけて、最後には仲間として戦うことを選ぶまでの道のりとその感情の動きに、観客として自然と心を寄り添わせたくなるような魅力がありました。
ところで、二幕でキャサリンをアギラールから救出する場面、舞台の一番端で自然にお姫様抱っこしているの何なんでしょうか。かっこよすぎです。あのさり気なさが最高に良いんですが、あまりにさり気なさすぎて危うく見逃すところでしたもったいない。。

キャサリン・マクレガー@潤花さん
もうめちゃくちゃ良かったです。アイリーン・アドラーの時も思いましたが、潤花さんは観る度に好きになる、目が離せない魅力があります。舞台度胸と表現力がとても素晴らしくて、観ていてとてもわくわくする方です。
何よりも、強い。とても強い。少し無鉄砲に思えるほど意志が強く真っ直ぐなキャサリンは、ヒロインでありかつもう一人の主役とも言えるくらい強烈に存在感を放っていました。ジョルジュの目に他の女性とは違う人だと、自分と同じものを見てくれる女性だと映るのも納得感しかないです。
自分が何も知らないことを知っているからこそ真実を知りたい、そしてジョルジュの隣で自分もできることをしたいと望む潤花さんのキャサリンは、健気でもあるけれど非力ではなく、炎とか獣とかそういうものを内に秘めていそうなとてつもなく格好良くて清々しい女性で、本当に素敵でした。
今回の歌のキーも初演よりは全体的に低めで、それも強さを色濃く感じた一因でした。力強い歌声がすごく好みです。
のびのびと演じる潤花さんを受け止める真風さんの大きさ、落ち着き、懐の深さが一層際立って見えるのも、トップコンビの相乗効果が見られて楽しかったです。

ヴィセント・ロメロ@芹香斗亜さん
ヴィセントに新曲がありました(初演の記憶にないので多分新曲)。
2番手なのにがっつりジョルジュとヴィセントの友情を描くシーンがないのがもったいなく、これがヴィセントという役の難しさだと思うんですが、この曲でヴィセントの思いが語られることよってキャラクターが見えやすくなったのは良かったです。
闘牛シーンは何度観てもたまらないですね、かっこよかったです。

エレン・パーカー@天彩峰里さん
じゅりちゃんはお芝居がうますぎて、舞台を観る度に感情の表現に現実感がありすぎるという感想を抱いているような気がします。いや、現実感というのは語弊があるかもしれません。宝塚の娘役としてデフォルメされた枠組みは決して踏み越えていないのに、お芝居の中に(時にぞっとするほどの)生々しさ、リアルさを感じさせて、自然と観たくなるような抗えない魅力があります。好きですじゅりちゃん。
何が言いたいかというと、エレンさんあの可愛くて華やかなビジュアルで嫉妬心がリアルすぎるしキャサリンに対して凄みがあるし、最高でした。

アギラール@桜木みなとさん
難しい役です。ずんちゃんはお芝居も歌も説得力があって悪役らしい存在感・大物感があるんですが、いかんせん二幕のアギラールの行動が女を薬で弱らせて自分のものにしようした挙げ句身内に殺される(しかもその身内の方がベテラン悪役)というどうしようもない小物なので、どうしてもちぐはぐに感じられていまいち腑に落ちません。ただ、主人公に立ちふさがる悪役としてのずんちゃんは存分に強さを発揮していたと思います。
初演時はソルさんが好きでコマロフにはしゃいでいた人間なので特にアギラールを撃つ一連のシーンなんかはコマロフに全部持っていかれていたんですが、フラットに見ると色々気の毒ですよね、アギラール。

パオロ・カレラス@松風輝さん
フィナーレのまっぷーのあまりのかっこよさに恋してしまいそうでした。いやもう恋に落ちたかもしれない。激しくキメッキメなダンスが上手くてはちゃめちゃにカッコいいのに、笑うとやんちゃな少年みたいな笑顔を娘役さんや客席に向けていて、撃ち抜かれました。そして何度でも言うけどダンスが上手い。ずっと観ていたかったし、フィナーレのためにあと5回くらいチケット取れば良かったとちょっと後悔してます。まっぷーに会いたい。
フィナーレの話を先にしてしまいましたが、お芝居もめちゃくちゃ素敵でした。ダンディーで飄々としたラテンなオジサマで、一筋縄ではいかなそうな感じがたまらなく良かったです。計算高そうな雰囲気もありつつ、ジョルジュたちのことを思って協力してくれる人の良さや大胆さがあるまっぷーのお芝居が素敵でした。
ここ最近ずっと願っているんですが次こそはまっぷーの悪役が観たいです。わかりますよ、まっぷーの立っているだけでにじみ出る隠しきれない温かい良い人オーラが本物すぎて、そういうキャラクターを当てたくなると言うのは理解します。良い人を演じるまっぷーももちろん好きです。でもそんなまっぷーが悪い人を演じると底知れなさと深みを併せ持つ悪役になって本当に格好良くて魅力的なんですよ。いっそすっしーさんと2人で悪役No.1&No.2とかやってほしい。主人公が真風さんと潤花ちゃんならちゃんと最後は正義が勝てるから、観たい。

瀬戸花まりさんのアニータ、留依蒔世くんのラ・パッショナリアはどちらも初演から大好きな役で、今回も歌が聴きごたえがありました。アニータのお芝居が温かみがあって良かったです。あと歌といえば、市長の若翔りつくんも良かったです。
春瀬央季くんのピーターも、飄々としているけど軽すぎず、彼なりのキャサリンへの真剣な思いも感じられてかっこよかったです。春瀬央季くんと言えばSANCTUARYのアンジュー公がすごく素敵で今も覚えてます。
水音志保さんはきりっとしたお顔立ちか好きで結構観てしまいました。フラメンコの時の身体のラインが美しくて、もっと踊っているところが観たかったです。

小池先生の一本物フィナーレは安心安全の定型ですが特に群舞がスタイリッシュなので結構好きです。しかも今回の群舞すごく良くて目が全然足りない。
上に書きましたがまっぷー!!!素敵ー!!!と心のなかで叫びながらじゅりちゃんもルイマキセさまも春瀬央季くんも水音志保ちゃんも観たいしでオペラグラスであっちこっち追うのが忙しかったです。最近こんな忙しかったことないのに。フィナーレだけでもあと10回観たかったです。