映画レポ|『哀れなるものたち』心に残る不協和音
こんにちは。
映画大好きまにしです。
第80回、金獅子賞受賞作。
ゴールデングローブ賞、アカデミー賞も有力と言われる今注目の作品「哀れなるものたち」を観てきました。
監督は「女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス。ずっと名前だけ知ってたものの、実は作品を観るのははじめて…。
胸を高鳴らせ、映画館へと1人向かう夜。
今晩、私のなかの何かが変わるかもしれない。
◾️あらすじ
◾️不協和音からなぜかときおり美しい音がきこえた
今作を一言で表すなら、私はこれだと感じた。
序盤はとにかく気味が悪い。
不気味な顔の博士に、切り刻まれた死体。胴体と頭の異なる動物、赤ん坊のような動きをする成人女性…。
観ているうちに、「不思議の国のアリス」を題材に不気味な世界観で表現したヤン・シュヴァンクマイエル「アリス」や「ファンタスティックプラネット」なんかを思い出した。
そんな強烈なビジュアルと主人公のベラ演じるエマ・ストーンの美しい衣装に、開始10分でとんでもなく惹きつけられる。
これは普通じゃないな、と久しぶりに身震いする。一体どんな展開を迎えるのか、恐怖よりも好奇心が止まらなくなっていた。
◾️だんだんと成長していくベラ
このまま気味悪く進むかと思いきや、だんだんと哲学や愛を知っていくベラ。
これが、単純に感情のないロボットが人の心を持つようになるありきたりな感覚じゃない。
例えるなら、粘土みたいな舌触り…ぐにょっとしてて苦くて飲み込めない、そんなものを取り込んで、大きくなる怪物を見ているような感覚。
世界観を観ているだけで飽きない時間だった。
◾️想像と違ったラスト
ここからはネタバレを含む感想になるため、まだ観ていない方はお気をつけくださいませ。
まず、飛び降りの要因まで物語として紐解かれるのが想定外だったな。
元夫が出てきた瞬間頭をよぎったのは、〈冷酷な元夫に囚われ、また飛び降りるベラ→物語は繰り返す〉…の胸糞エンド。
気味の悪い映画ほど、ラストにインパクトを残したがる。だからこそ、この物語をよくぞハッピーエンドへ持っていったなと思った。
ゴッドが亡くなる前に家へと帰ったベラ。
そこで自分の生まれに対する真相を知る。
「生を創ること自体は素晴らしいもの
その後の人生を創ったのは自分
憎いのは嘘をつかれたから」
限り無く第三者視点に近い純な目線からの出た言葉。とても印象に残ったシーンだった。
◾️まとめ
さすが金獅子賞受賞作の実力・個性派作品。
そこには誰もが体感したことのない、唯一無二の世界観が映し出されていた。
現実だけ生きていると絶対に出会えない世界との交わり。それこそが映画の醍醐味だと改めて感じる。
いやあ、エマ・ストーンの演技は凄かった。
帰りは雨に降られたが、なんだか不思議に浮いた心で帰路についた。
そんな奇妙な一日だった。
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