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ヨアキム・トリアー わたしは最悪。

久しぶりにインパクトのあるタイトルとビジュアルに惹かれ気づけば新宿の映画館にいた。中身は置いといて万引き家族と同様にネーミングセンスで売上はだいぶ変わる。

どんな境遇でもここではないどこかへと常に物足りなさを感じている主人公。キラキラとリアリズムが入り混じったロマンティックコメディと人間の揺れ動く心模様を丁寧に描いたヒューマンドラマがたっぷりと詰まった2時間だった。

時間が一時停止し目の前にいる彼氏を差し置いて気になる男性に会いに行く中盤のシーンは映画ならではの魔法がかかっていた。濱口竜介監督の偶然と想像にも通じる人と街と光の美しさに見惚れてしまう。

ラストは幾つもの悲しみや葛藤を経て一から写真家として歩み出す主人公の佇まいが凛々しく印象的だった。共感はなくとも1人の女性の人生を時間をかけてじっくり味わうことができて良かった。時には明るく時には暗く彼女の心情に寄り添う音楽も見逃せない。

最悪だって人生は続く。