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仙台(その3)

 仙台旅行記ですが、今回で無事最終回(その3)です。お忙しいみなさまへ、ご安心ください。私と"Oさん"と"Tさん"という私の仲良しの3人組で仙台を巡っているだけで、伏線等々全くありません。もしよければ、「仙台」「仙台(その2)」も読んでいただけたら嬉しいです。前回までで2日目朝まで述べております。では、続きです。

いちご狩りが教えてくれたこと

 2日目の朝,ホテルを後にした私たちが向かったのは、荒浜。この地は東日本大震災の被害をダイレクトに受けた場所。今では東日本大震災の遺構として残されている「荒浜小学校」に足を運んだ。この話はまた別の機会にゆっくりとするつもりなので、今回はその近くにあった「JRフルーツパーク仙台あらはま」での話だけ。
 ここで行うのはいちご狩り体験だ。男性3名で事前予約をしていたという時点で私が店員だったら戸惑うが,店員さんはそんな素振りを一切見せなかった。宮城県の人の良さを感じる。間も無く、いちご狩りをするビニールハウスに移動する。そこで、ご夫婦,カップル、男女混合キラキラ組と一緒になる。やはり、華が一切ない男3人が全会一致で行くようなスポットではないのか…と心配をしつつも、イチゴを収穫し始めた。
 このハウスでは4種類の品種を味わうことができた。甘味や酸味の強弱だけでなく,食感や食べた時のフィーリングで、どのイチゴも確かに特徴があることを痛感する。私も速いペースで食べていたが、おふたりは私の4倍の量をも食べていた。なるほど,今日のために「いちご禁欲生活」を行っていたのか!?と思いながら、満遍なく4種類のいちごを摘んでは食べ,時に練乳をつけて、味を変えながら食べ楽しむ。基本的に一人で伸び伸びいちごを収穫していた私に、おふたりが収穫したものを私に持ってきて、「利きいちご」をしてくれた。そのいちごを食し,ゆっくり考え、ちょっと顔から専門家の雰囲気を溢れさせ、「これこれこうだから、AとBはないんよなぁ」とインテリぶって語ったりしていた。
 とここで話を終わらせたかったが、直後、答えはBと告げられる。つくづく私の舌バカさには唖然とした、格付けチェックなんかに出たら、最速「写す価値なし」の枠に入れられるのだろう。GACKTとペアになったら確実に土下座しなければならない。グルメな男に憧れた過去もあったのだが、甘いいちごが酸っぱい現実を教えてくれた(やかましいわ)。

いちご狩り,また行きたいなぁ。

老後の楽しみを謳歌する。

 旅の最後の目的地は仙台から少し西へと向かったところに位置する松島。松島の海は本当に美しかった。さすがは日本三景…思わず絶景に声が漏れる。この地では、松尾芭蕉が「奥の細道」で記した瑞巌寺もあり、そちらにも参詣してきた。金屏風がこの時代まできちんと残されていることに感動する。美術の成績が内申点の平均をぐっと下げていた私にもわかるくらい荘厳かつ圧倒的なお寺だったので、是非おすすめしたい。そこから車で少し移動して、松島全体を見つめることができるスポットに移動する。ギリギリ日が暮れる直前、いわゆるマジックアワーであった。「写真を撮ろう」と言い出せない不器用な男3人は、これまで溜まっていた欲を発散するかのように、何度も記念写真を撮影する。途中から、日本三景をバッグに「ラヴィットポーズ」「蛙亭イワクラのピース」「最近JKの間で流行っているらしいほっぺポーズ」など各々不統一のポーズ大喜利大会が開催された。まったく日本三景の前で一体何をやっているんだ。けど、どれも見返したくなる写真ばかりである。

松島四大観のひとつ、多聞山からの眺め

 大学1年の夏を思い出す。このメンバーで天橋立へ向かった。京都に住む2人にも大阪市内の私にとっても絶妙に旅行と言える距離だったから選出された(時間の潰し方を間違え、2日目の午後から現地のガストに籠るという愚行を犯したことには触れないでおく)。それから1年半、この旅の最後に松島に行くとは予想もしていなかった。これは仙台の近くにあったからという結果論的理由であるが、なんと20歳にして日本三景のうち2つを制覇してしまったことになる。普通ならば、老後の年金で行くスポットを大学生のバイト代で行っている。貴重な老後の楽しみの一つを謳歌してしまった。しかも、絶景の良さなんて大して分かっていないのに。想像がつく人もいるかもしれないが、一応みなさまにもお伝えしておく。このズッコケ3人組の次回の旅先は「宮島」である。

たびのおわり

 あっという間に帰りの飛行機を迎える。旅が終わってしまう寂しさ、そして翌朝1限からテストが控えているという憤りでおそらくどこかの細胞がダメージを受けていたに違いない。空港でダウンロードしたお笑い芸人のポッドキャストを聴きながら、レジュメをひたすら反復する。皮肉にも「ツーリズム文化論」という講義のもので、テストまでが旅行だよ!と教授の声が聴こえてきた。そのせいで、旅の終わりに、ある発見をする。

飛行機は、最も集中できる環境である。

 高校時代から、学校の教室だけだなく廊下、図書館、塾の自習室、ファミレス、田舎の誰も利用していないフードコート、時には、布団の中などあらゆる場所で勉強を積み、最も集中できる場所を探し求めていた。受験期の俺に伝えたい、飛行機に乗れ。センター試験も飛行機で受けていれば、もっと点数は高かったに違いない。閉鎖されている空間、ほどよい騒音、そして、たまに窓を観ると広がる何にも代え難い壮大な夜景。飛行機は最高の勉強環境だ。TOEICを受ける前日は東北に行こう。いや、あえて、東北会場で受験しよう。そんなことを考えていたら、着陸していた。旅は間も無く終わりを告げようとしていた。

飛行機からの夜景。山梨上空かな。

 私と”Oさん"と"Tさん"の関係性は極めて特殊である。常に3人組ではなく、個々の繋がりが深く、年2.3くらいで3人の大きめのイベントがある。年末の「アメトーーク!」に明石家さんまが出るみたいな感じ。この3人組のイベントは私の人生の大きな楽しみの一つである。1秒1秒が濃密なのだ。全3回にわたって旅行記を書いてみたが、先程少し触れた荒浜小学校の話だけでなく、「フライト体験で墜落以上の失敗を起こすの巻」「日本一敷地がでかいデンタルクリニックの巻」「真夏の汗をかいた男が特急に乗車するの巻」など、結局語りきれていない。冒頭で今回が最終回と言ったくせに、である。それくらい濃密で楽しい旅だったと締めくくっておく。
 2日目の朝、「いやぁ、このふたりやったら何しても許される気がするし、安心できるわー1番素でいられるわ」と伝えた。すると瞬間的に「なるほど、俺らを誰よりもナメているってことでしょ」と返された。あながち間違っていない気がする。ただ、嬉しいのは、"Oさん"も"Tさん"も私のことを誰よりもナメている。これからもこのふたりを積極的にナメていく。そして、ナメられていく。

おしまい

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