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『わが投資術 市場は誰に微笑むか』清原達郎

『わが投資術 市場は誰に微笑むか』清原達郎、講談社

 2005年に発表された「最後の長者番付」で1位となった伝説のサラリーマン投資家・清原達郎さんが、咽頭がんで声帯を失い、引退を決め「私には後継者がいない」ということで株式投資のノウハウと、バブル期以降の市場の動きを公開したのが本書。無類の面白さでした。

 「はじめに」だけでも迫力が違います。若い頃は会社四季報を3日で読んだとか、引退するのはショートで貪欲に儲けていく情熱を失ったからだとか(日本M&Aとレーザーテックの空売りで100億儲けられたのに10億ももうけられなかった」)とか、日本人の運用する日本株のヘッジファンドのハンドルレートは0%で甘すぎるから、引退時に顧客に紹介できるファンドはなかったとか、日本一のファンドマネジャーの株式指南本は迫力ありすぎです。

 最初に就職した野村證券についても、今は立派な会社になっているが、当時は「準詐欺組織」だったと歯に衣着せぬ物言いは「恐い物なし」でさすが。

 第二章「ヘッジファンドへの長い道のり」について、著者は具体的な株式投資の手法を読みたいなら飛ばして三章を読めと書いていますが、とんでもない面白さでした。これは読んだもん勝ちなんじゃないですかね…いつも読んだ本はnoteにまとめているんですが、ここはあえて書きません。本当に勉強したい方は買って読んでください。

 そんな中でもひとつだけ…ジョージ・ソロスからの投資の誘いを断った話し。《ユダヤ人というのは「オプション」が大好きなのですね。何千年の歴史の中で「よからぬことが起きた時のために別のオプションを用意しておく」のが生活習慣になったんでしょうねえ。この点では日本人は真逆です》p.91というはなるほどな、と。

 ベイズの定理を使って
1)1000社の割安株グループの中から
2)100億円のファンドが
3)成長株に投資して利潤が高くなるのは

a)50社の株価を2億円ずつ買うか
b)200社を5000万円ずつ買うか
のどちらが良いのかを説明するあたりは「さすが理系の人だな」と思って読んでいたんですが(p.167-)、ベイジアンになったのは新型コロナの時の、おそらくPCR検査の有効性について勉強したから、と書いてあって、ホッとしましたw

 小泉内閣の上げ相場の時と、リーマンショック後の急回復の時、よく「退職金で、配当利回りが二桁あったREITを買ったら、億った」みたいな人の話を日経なんかで読んだけど、清原さんは、落ちるナイフを2度も素手で掴んで大儲けしたんだな、と感心。ヤな予感しかせず、ダ・ヴィンチの倒産などがトラウマになっていた自分はアホだったな、と改めて思いしらされますw

 白眉は6章?HSIは持っていたのですが、わけわからないTOB劇に嫌気がさして売って全てを忘れていました。今回のことで、モンゴル最大のハーン銀行が外国人(日本企業であるHSI)に支配されることを嫌ったとモンゴル中銀がトンデモない言いがかりをつけてきたことがわかりました。

 また、オリンパスの粉飾決算はダダ漏れで有名だったというのに驚きます。UTグループは買ったろかwプレサンスの社長さんは可哀想すぎる…。

 親の遺言で信用はやらないので、ましてや空売りは絶対しないのですが、プロは素人向けに證券会社が特定テーマの投信がつくったら、そこが株価のピークとみて空売るのかと感心。

 あと、一度もイオンモールに行ったことないので知らなかったんですが、イオンは個人株主が優待を目当てに株が安くなったら虎視眈々と買いまくるという「顧客が出資者の生協」みたいな会社なのか、と驚きました。今年中に、どこかのイオンモール行ってみよw

 最後にESGをぶっ叩いて終わるのも小気味いい。そんなにCO2を削減したけりゃ人口減らせ、とw少子化対策もCO2削減も意味ない、みたいな。人口減れば、一人当たりの所得は増えるし、と。

 とにかく、月曜日のマーケットが始まる前に読み切るという目標を果たせて満足です。付けた付箋と折ったドッグイヤーはこれからの財産。ネットキャッシュ比率など、勉強し直す必要もあり、これからも何回も読み直すことになると思います。

 いまの金利を前提にすれば、日本株は倍になってもおかしくない(p.261)と書いているほか、清原さんは「日本株はショーテッジ(需要過多)になる」と2回書いていて(解説の伊藤博敏さんも含めると3回)、個人的にも、持ってる株は先高観しかないので、短期で考えてるもの以外は、しばらく持ってようと思うのですが、循環物色に小型株入れてみようかな、とか考えはじめてる自分を笑いましたw

 それにしても『経済評論家の父から息子への手紙』の山崎さんにしても、清原さんにしても、ガンを患いましたが、結果を求められる仕事をしてきた方はストレスがきつかったのかな……

 すぐに小型株をやるつもりはないけど、いちよし証券のHPはブックマークに加えてておくかなとか思いました。また、p.102で紹介されている「ネットキャッシュ比率」は、北尾さんのところあたりでEV/Evitdat倍率とともにスクリーニングできるようなサービスをさっそくはじめそうだと思ったら、すでに以下のサイトで簡単にスクリーニング可能でした。

https://tdnet-search.appspot.com/analyze


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