見出し画像

花と音符のプチペンダント

【旅する飾り屋の話 ―花と音符―】

ある晴れた日に飾り屋とトランクが次の街を目指して歩いていると綺麗な花が満ちた場所にでた。
『これは見事な花畑だ。飾りにはするならピッタリ!』
と相棒が上機嫌に言うので飾り屋は花をいくつか摘んでみた。
色の似た物を組み合わせると飾り屋はトランクから黒い瓶を取り出して透明な液体を一滴垂らした。
するとその透明な雫の中に花がすっぽり入っていった。
『良い感じ、良い感じ。あとは固まるのを待つだけだね。』
液体が固まるまで少し時間がかかるので飾り屋とトランクはそこで休息をとることにした。

その日はあんまりにも天気が良くて、心地よい風が花の香りを届けてくれる。
『こんないい日は歌でも歌いたい感じ。』
トランクがそんなことを言いながら歌い始めたので確かに、と飾り屋もつられて一緒に歌を口ずさみ始めた。
飾り屋とトランクの歌は音符になって花の香りと共に風と共に遠くへ飛んでいく。


飾り屋達が上機嫌に歌っていると音符の1個がポロンと音を立てて雫の中に零れ落ちた。
『あっ!』
飾り屋も驚いて音符を拾おうとしたけれど雫の中に落ちたそれは花と一緒に固まってもう取れなくなっていた。
あらら、と飾り屋が苦笑いしていたが
『花と音符で春の陽気な飾りになって良い塩梅だね。』
とトランクが言うので確かに、と笑って花と音符の雫をトランクにしまいこんだ。

そして飾り屋とトランクは大好きな歌を口ずさみながら
またてくてくと歩き出した。

そんな旅する飾り屋と相棒のトランクの話。



minne

Creema


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?