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貝塚伊吹のベストソング2022「寝言がいつも韓国語だったあなたへ」

不眠症のわたしだけど君の寝息を聞くとなぜかすぐ眠れた。ただ、君の寝言がいつも韓国語だったので、わたしのほうが先に死ぬに絶対決まってるけど、もしあなたが先に死ぬようなことがあったとして、最後の言葉が韓国語だったらどうしようって本気で思ってた。

「일부터 열까지
何から何まで

네 과거들까지
あんたの過去まで

빠삭하게 다 아는 내가
全部詳しく知ってる私が

대체 뭔 바람에 이러는지
一体どういう風の吹き回しで こんなことになってるのかしら」

Heize - And July (Feat. DEAN, DJ Friz)

2022年
2月6日
職場である新宿三丁目の飲み屋にて。
職場も一緒だし演劇の専門学校も同期だったWさんがわたしはよく知らない常連さんと少し言い合いになっていた。
どうやら恋バナをしてるみたいだけどWさんは「アレコレ条件を言ってるから君は男と付き合えないんだよ!」とか言っていて常連さんは少しムッとしてた。常連さん、、というかあなたはボンベイサファイアのボトルを入れてわたしたち従業員にもたくさん振る舞ってくれたね。

みんなでベロベロになってなんやかんやでWさんが「とりあえずこいつ(わたし)とデートでも行ってみろ!」と言い出した。正直わたしはこの時から「よく知らない人だけど顔がめちゃくちゃかわいいなぁ」と思いながら連絡先を交換して「飲みに行きましょう」ということになった。

2022年2月10日の夜、丸の内線新宿三丁目駅を出てすぐのピーチジョンの前で待ち合わせたけどなぜかその日は大雪が降ってて新宿が真っ白になっていた。
KID FRESINO「Coincidence」かよと思った。

何百回も通った道が真っ白になってて、「なんでこんな日に雪降るねん」と思ったけど「あぁなんかいつもと違ってちょっといいなぁ」とも思った。
たまに行く焼き鳥屋で自己紹介的な話は済ませてわたしの職場でも結構飲んで、もう終電近くなっり「もう帰らないとまずいですよね?」と聞くと「もうちょっと飲みたいかなぁ」と君は言ったのでわたしがゴールデン街で知ってる店に全部行き、朝まで飲んだ。

申し訳ないことにわたしは飲み過ぎでほぼずっと寝てしまい「あ、これはやっちまった」と思ったけど「来週また遊ぼう」と君は言ってくれた。
朝まで飲んだ日の2日後。2月14日にあなたもわたしも熱が出てきて「もしや」と思いPCR検査を受けたら2人して陽性だった。

チョコレートはわたしからラインギフトであげた。ゴディバをあげようと思ったけどなんかドキドキしてしまってスタバのスウィーツ券に抑えた。それから2週間2人して自宅待機になったけど途切れることなく隙あればずっとラインでやりとりしていた。わりとイチャイチャした内容でこの時からもう君のことしか考えてなかったと思う。


3月

久しぶりに遊ぼうということになったけど普通に飲みに行くだけじゃつまんないなぁと思って小田原にある写真家杉本博司が作った公園「江之浦測候所」に行った。どこに行っても杉本氏が撮った写真のようなものが撮れるアートスポットである。

めちゃ杉本博司っぽい写真


ここでライブやファッションショーなどやるらしい

絶景だし周りに人が絶妙に集まる場所で「ここで告白しようかな」と思っていたけど、想像以上に人がいて無理だった。
「なんだかマッチングアプリのプロフィール写真が撮れそうだね」とめちゃつまんないことを言ってスベッたのを今でも覚えている。

高所無理なので告白どころではなく結構こわかった

駅まで向かう帰りのバスの中カップルしかいなくてやけに静かだった。
「せっかくだから熱海に行きましょう(ここは小田原なので熱海まですぐなのです)」or「都内に戻って飲み行きますか」どっちを言おうかと頭の中で何百回も反芻していた。

勇気を振り絞って「せっかくだかあらあ!熱海で温泉入って泊まっちゃいますかぁ!!」と言った。思ったよりもでかい声を出してしまって自意識過剰ではなくあの場にいた全員に聞こえていたと思う。
あなたの返事は

「いいね!今日は日帰りじゃなくてお泊まりにしちゃおう〜ヤッホ〜」だった。

今すぐ行ける旅館をトリバゴで選んでチェックインした。近くにあったスーパーでたんまり酒とつまみを買って帰りにふと見かけた居酒屋で一杯飲んで部屋に戻った。シングルの布団が2つびっちりとくっつけられていた。きまづ〜。ここまできて結構酔っていたにせよ「今日は離れて寝た方がよいのでは」とドギマギしていたけど、マツコの番組を見ながら「チャミスル」を死ぬほど飲んで普通に寝落ちした。「韓国ではチャミスルをこうやって飲むんだよー」とチャミスルのふたをひねってクルクルして当たった方が一気飲みするヤツをやった。「寝言が韓国語だった」という表題の通りあなたは韓国の音楽や映画が大好きで韓国語がペラペラなうえに寝言いつも韓国語だった。

「Stay in the middle 
このままの関係はいや

Like you a little
君のことなんだか好きみたい

Don't want no riddle
曖昧にしないで

말해줘 say it back
言って 言い返してよ

Oh say it ditto
同じ気持ちだって言ってよ

아침은 너무 멀어
朝までなんて待てない

So say it ditto
同じ気持ちだって言ってほしい」

NewJeans-Ditto

次の日の朝告白した。

不安で仕方なかったけどすぐOKしてもらった。
その日わたしは仕事があって二人で一緒に同伴出勤した。友人夫妻YさんNさんがたまたまいて祝福してもらった。
「今日がたぶん人生のピークで明日死んでもいいなぁ。というかこのまま死んでしまいたい」とさえ思った。


職場で爆音で何度もSHISHAMO「僕に彼女ができたんだ」を流した。同僚で同期で一緒にバンドをやっていたKさんに「もうわかったって!」とツッこまれるほどだった。

「僕に彼女ができたんだ それはそれは可愛いんだ
 今すぐ誰かに自慢したいよ」

4月

あなたと休みがあまり合わないのとわたしは家の更新のタイミングだったので思い切って「あんまり会えないのは寂しいので同棲しちゃいますか?」と提案してみたら案外すぐ許してもらえた。好きだった街西荻窪にさよならして君の住んでいる品川のワンルームに引っ越した。


「家で一人でいる時間なくなっちゃうけど大丈夫?」と聞いたら
「今はあなたといたいからそんな時間全然いらないの」と言われてキュンキュンした。
あなたが作る手料理は今まで食べたどの食べ物よりも美味しかった。これは気のせいとか比喩ではなく本当に。

こんなの家で作れるんだと感動した
和食もめちゃうまい

キネカ大森で「ちょっと思い出しただけ」を見ることになって
「なんか花束みたいな失恋映画っぽいけど大丈夫かなぁ〜」と思ったけど
本当に「ちょっと思い出しただけ」の映画だったので気まずくもならなかった。


5月

「2人でフェスに行きたいね」ということになって秩父の「ラブシュプリーム」というジャズフェスに行った。レジャーシートをもらって陣地取りができるタイプのフェスで二人でワインを飲みながらゆらゆら踊った。

家族づれも多くてピースだった


大トリはロバートグラスパー。なかなか日本に来ないしわたしが一番見たかったアーティスト。ドラマーとしてはクリスデイヴの生演奏が見られるのもたまらなかった。

演奏の途中で「帰りのバスがぎゅーぎゅーでヤバそうだからもう帰ろう」と言われて正直イラっとしたけど、確かに時間的にギリギリかもと思い泣く泣く帰った。

バスの中で「あ、スマホなくした」と君に言われてわたしの中の何かが壊れてしまって大喧嘩になり2人して泣いてしまった。
結局スマホはポケットの中にあった。帰る家は一緒なのに途中から別々に帰った。
このときダチョウ倶楽部の上島氏が亡くなった直後で、センシティブなニュースを見るとすぐ泣いてしまう豆腐メンタルのわたしはずっと情緒不安定だった。

1人で帰りながら有吉のラジオを聞いていると上島氏を追悼をしていて信じられないくらい泣いた。
「上島さんがゲストで来る回はいつもつまんねーけどあなたがいない今日はもっとつまんないよ」

同じくラブシュプリーム帰りだった知らない人に「大丈夫?」とティッシュを渡されて余計泣いた。こんなに悲しい時になんで隣にあの人がいないんだろうって思った。勝手だよね。

6月
21日
わたしの誕生日に職場も一緒で専門学校が同期のKさんとのバンドのライブをやった。

あなたにはいつもベロベロのダメダメで帰ってくるわたししか見せたことなかったけどライブが終わった後「やっぱあんたかっこいいわぁ〜」と言われて嬉しかった。
ライブ中も打ち上げでも死ぬほど飲んでしまって酔いに酔ってあなたとは初めて、、というかこれが最初で最後になるけどラブホに行った。本当に一刻も早く寝たかったので死んだように眠っただけだけど。


わたしとあなたは誕生日が近いので「九州に旅行に行こう」ということになった。
福岡でひたすらうまいもん食って飲んだり、鹿児島の指宿で砂風呂に入ったりず〜っと行きたかった「霧島アートの森」に行ったりした。

八幡大地獄


霧島


ミシュランに載った廻らない鮨屋に行ったけど緊張しすぎて飲もうとしたビールを全てカウンターにぶっこぼしてしまい笑っちゃいけないけど爆笑してしまった。

福岡鮨くま


幸せすぎて生きた心地がしないってことがあるんだなと初めて思った。

7月

「夏だから海に行こう」ということになってわたしは早く出発して海に入りたいと思っていたのにあなたはいつまでも起きてくれなくて喧嘩になった。
「海に行くなら明るいうちに行かないと!」というわたしと
「葉山のライブハウスで夕方から始まるパーテイーを見たい」というあなたで全く噛み合ってなく行きの電車の途中「もう帰ろか」となってしまうくらい喧嘩になった。行きしなでフジロックの中継を1人スマホで見ながらずっと首を振ってるのも気にくわなかったらしい。らしいってかそりゃそうだよね。ごめん。

「海に行くなら泳ぎまくらなきゃ損だろ!」と小学生並の知能だったわたしだったけど実際ライブを見たらめちゃくちゃよくて感動した。
地元の怖い兄ちゃんたちにしか見えなかったけどよく見たら元ソイルの元晴と竹内朋康のバンドでビックリした。金なさすぎてフジロックに行けなくて悲しかったけどほぼフジロックに来てるようなもんだと思った。



8月


9月
ワンルームは狭いし、そもそも1人の名義で借りている家にいつまでも2人で住んでちゃダメだよね。ということで新中野にある寝室つきの広めの家に引っ越した。
新中野はわたしが通っていた専門学校が近くてどの通りに何があるのか良くも悪くも知りすぎていて個人的にはちょっと嫌だったけど、物件も家賃もめちゃいいので住むことになった。近くにスーパーが何軒かあるし好きな家系ラーメン「武蔵家」があるし(のちに「たいせい」もできる)猫がいつもいる喫煙所があって住んでしまえば最高だった。

毎日話しかけたら徐々に懐いてくれた


床を全部張り替えようということになりあなたの妹さんにも手伝ってもらった。

張り替えが終わり疲れ切った状態で飲みまくったらめちゃくちゃ寝たし起きたと思ったら飲み屋で踊りまくってて無茶苦茶怒られた。楽しい時間のはずだったのに本当にごめんなさい。

10月
わたしはいつも終電で帰っていたのにあなたはいつもわたしに合わせて遅くまで起きててくれたね。たいてい料理を作ってくれていたし酔っているのに寝る前にさらにもう一杯飲もうとしていたわたしを怒ることなく「今日は忙しかった?」と迎えいれてくれてありがとう。感謝しても感謝しきれないです。あなたの方が朝早いのに毎日一緒に寝られて幸せだった。
不眠症のわたしだけど君の寝息を聞くとなぜかすぐ眠れた。ただ、君の寝言がいつも韓国語だったので、わたしのほうが先に死ぬに絶対決まってるけど、もしあなたが先に死ぬようなことがあったとして、最後の言葉が韓国語だったらどうしようって本気で思ってた。

「No, I can never let him go
お願い わたしから絶対に離れないで

너만 생각나 24
一日中あなただけを想い続けてる

난 행운아야 정말로 I know, I know
わたしは幸せ者だ 身に染みて感じるよ

널 알기 전까지는 나 의미 없었어 전부 다
あなたと出会うまで わたしの人生は空白で満ちていた

내 맘이 끝이 없는 걸 I know, I know
こんなこと考え始めたらキリがなくなるってわかってる

He's the one that's living in my system, baby, baby
でももう あなたなしで生きるなんて考えられないよ」

NewJeans-OMG


23日
職場にあなたが来てくれた時たまたまSTUTS氏が来てくれた。大豆田ももちろん好きだけどNYでストリートライブをしている時から追っかけていたわたしは大興奮した。バレたら怒られそうだけど店の壁にサインまでしてもらった。

物腰柔らかなかただった
バレたら怒られそ〜



11月
東京国立近代美術館で行われた大竹伸朗展にあなたと行った。

わたしは岡山に住んでいる時よく「直島」に行っていたので大竹伸朗が好きだ。
皇居の前に「宇和島駅」を爆誕させたのヤバイし、どの作品も初めて見るものなのに何故かノスタルジーを感じた。本人が「もうこの規模でやることはないかな」って言ってしまうくらいのボリュームで大満足。
あまりにもよかったので後日1人でもう1回見に行ったが大竹氏が突然現れてライブをはじめたのでビックリした。



大竹伸朗はノイズバンド「19」をやっていたがノイズにしては聞きやすくて作業用BGMになる。

12月
わたしは出勤、あなたは調子が悪くなって寝たきりの時
「ポカリスエットがほしいです」
「ヘパリーゼもほしいです」
「ほんとは婚約指輪が一番ほしいです」
と言われた。こういった坂本裕二みたいなジャブプロポーズは生活の中で何度も言われたし、言ったしこの人と結婚するもんだと思ってた。

まだ君のワンルームで暮らしている時
大嫌いな母方の墓には絶対入りたくないし、父は好きだけど父方の家族はほぼ全滅していて無理だし、もしわたしが死んだらロマンチックなアレとかじゃなくて瀬戸内海に撒いておいてください。」と言ったら君は
「んじゃ〜死んだらうちの墓きなよ!一緒にはいろ」と言ってくれた。惚れ直したしそうしようと本気で思った。
わたしは母が浮気をして父が自殺をして家の中ぐっちゃぐちゃの中育ってきたのでいつも薄く死にたかった。
今ではいつも狂ったように飲んでチャラチャラしているように見えるが心底暗いし1人では息苦しくて朝になっても眠れない。

気難しくて暗いわたしの心をいつも明るくしてくれてありがとう。

「わかんないけど
君のこと絶対守りたい
絶好調でも BAD モードでも
君に会いたい
I can't let you go (let you go)
I just want you more in my life
絶好調でも BAD モードでも
好き度変わらない」

宇多田ヒカル BADモード

あなたとの初めてのクリスマスをわたしは金がなさすぎて治験に行くことになっていた。脳卒中とかを予防するための血液をサラサラにする薬の治験。本を読むか映画を見るか寝ているだけでお金をもらえるなんてめちゃくちゃ楽だっけど1日30回以上注射するのは痛いし辛かった。酒もタバコも禁止されるのは全然平気だったけど、君に会えないのが1番辛かった。
1人じゃ朝まで寝れない男が22時に強制的に寝なきゃいけないって無理な話で、こっそりオールナイトニッポンをずっと聴いてた。夜中トイレに行ったら違う治験者に「あなたもしかしてラジオとか聴いてます?」と聞かれて「あ、音漏れしちゃってます?すんません」と言うと「いやぁ全然。寝れないですよねえ」と言われた。一週間近く治験をしたが他者との会話は看護師との「チクッとします〜」以外これだけだった。
M-1は「ウエストランド」が有馬記念は「イクイノックス」が勝った。どちらもわたしの予想は外れていた。

治験中「silent」を一気見したがめっちゃ泣いた。




毎年「貝塚伊吹のベストソング」と題してランキング形式で音楽を紹介しながらちょこちょこ元恋人の話を挟んだ記事を書いてきたが

わたしの音楽の解説なんて関ジャム以下だと思うしコード進行とかリズムがどうとかなんて今やチャットGPTに聞いたら即答してくれる。ランキング形式はやめてわたしの記憶の栞になった曲とそのエピソードを書いたらこのような記事になってしまった。

「난 "몰라 몰라" 하면서
「知らない」って否定してるうちに

두 번의 계절이 너와
二つ目の季節があんたと

나의 곁을 지나갔구나
私のそばを通り過ぎてった

지금 이 순간도 난
今この瞬間も私は

네가 보고싶구 막
あんたにすっごく会いたいの

확실하게 해야겠어
ハッキリしなきゃね

이제 그만
もうそろそろ」

Heize - And July (Feat. DEAN, DJ Friz)









これは歌詞じゃなくて寝言がいつも韓国語だったあなたへ

「너와는 최악의 이별을 했는데 나는 언제든지 만나고 싶은데 아직도 당신이 꿈에 나올 수 있다면 당신의 한국어의 잠언을 들으면서 자고 싶습니다. 그런 일은 있을 수 없다고 알고 있습니다. 정말 미안해. 지금까지 감사합니다.」


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