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同じ道を約半年にわたって歩いていると
分かってくることがある

季節はもちろんだが
時間によって道の様子が変わる

いつも夕方に歩く
夕陽が地を照らし
あたたかな空気が広がる
静かで穏やかな
秋の雰囲気

一度、朝に歩いたことがある

夕方の薄明かりの陽の光では
見えなかったものが
見えてくる

虹色にひかる雲の巣
こんなにも頭上に広がっていた
もう少しでかかるような低さに
あるのに、気がつかなかった

朝はのんびりしていると思っていたが
植物は生き生きしているように見える
森は早起きなのだ
もしかすると夕方の森はもう
眠ろうとしていたのかもしれない

柔らかな風が吹いていて
通ったことのなかった道へ流れていく
すぐそこにあるのだが
いつも降りなかった階段
その先にはオレンジの花と
薄紫色の花
花々は庭を埋め尽くしていて
そばにお堂がある
小さくて家のよう
入り口には一つ、岩が埋められている
きちんと正面玄関から入り
庭を見てみると、美しい蝶が花にとまっていた
黒の羽の真ん中は光沢のある青や緑

庭中にキンモクセイの匂いが漂っている
玄関に一本だけ生えていたキンモクセイ

小学生の頃、トイレ掃除で使う洗剤には
キンモクセイと書かれていた
それがはたしてキンモクセイの香りだったのか
思い出せない

いつもの道に戻り、また歩き出す

ずいぶん風通しが良くなってきた

ここ数日、何かに当てられてか
心が窮屈だった

私は悪いものを取り込んでしまっていたのだろうか
いつもなら受け流せたような
それを悪いものと言うこともなかったであろう
そういうものを
消化しきれずにいて、
ぐるぐる回り
電車を途中で降りようかと思う日もあった
代わり映えのない毎日や
強制的に変化の中に置かれる状況に
疲れていたのかもしれない
いやになっていた



流れていく
忘れていく

そうして思い返す
その中にあった大切なもの
感じたこと
私はその中で、何を大切に思うのか

帰ったら窓を開けよう



そういえば
小学校の運動会、法被の一文字でなぜか
風を選んだ
左利きには筆で書くのが難しかった

風をあおいだ
ほんの少し冬の香りがした

人通りが増えてくると
木々たちは声をひそめ
木や森になっていた

通行人を眺めながら

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