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東南アジア調査レポートで注目すべきは日本への信頼だ「The State of Southeast Asia 2024 Survey Report」

●ASEANは中国支持というわけではない


ASEAN Studies Centre at ISEASが公開した「The State of Southeast Asia 2024 Survey Report」https://www.iseas.edu.sg/centres/asean-studies-centre/state-of-southeast-asia-survey/the-state-of-southeast-asia-2024-survey-report/ )の一部の結果が日本のメディアでけっこう取り上げられていた。
ほとんどのアメリカよりと中国のどちらかを選ぶなら中国と答えたことに注目していた。注目すべきことではあるが、その差はわずかだ(アメリカ49.5%、中国50.5%)。1年前の結果はアメリカ61.1%、中国38.9%だったからだいぶ中国支持が伸びたように思える。

「The State of Southeast Asia 2024 Survey Report」( https://www.iseas.edu.sg/centres/asean-studies-centre/state-of-southeast-asia-survey/the-state-of-southeast-asia-2024-survey-report/ )

中国支持に過剰に注目すると、ASEAN諸国の本音が見えにくくなる。他の項目で米中二国間対立への対応を訊ねており、そちらではASEANは2大国からの2大国の圧力をかわせるようにレジリエンスと団結を強めるべきという選択肢をおよそ半数(46.8%)が選んでいる。時点は29.1%のASEANはどちらの側にも経たない立場を継続すべきだったので、米中のどちからを支持する意向はすごく少数派なのだ。この傾向は以前から言われおり、多くのグローバルサウスの国々はどちらかを選びたくない。明確にどちらかの支持を明示している国の方が世界的にも少数だと思う。

  「The State of Southeast Asia 2024 Survey Report」( https://www.iseas.edu.sg/centres/asean-studies-centre/state-of-southeast-asia-survey/the-state-of-southeast-asia-2024-survey-report/ )

ただし、民主主義国陣営はことあるごとに団結を誇示したがるので、本質的ではない回答に注目して、問題意識を煽っているような気がする。

●注目すべきは日本の存在感

正直、日本の存在感はもっとがっくり下がるかもしれないと思っていたが、相変わらず信頼度トップで経済的な面でも米中には及ばないが存在感を示している。

「The State of Southeast Asia 2024 Survey Report」( https://www.iseas.edu.sg/centres/asean-studies-centre/state-of-southeast-asia-survey/the-state-of-southeast-asia-2024-survey-report/ )

国際平和、安全、繁栄、ガバナンスのために日本が正しいことをすると考える人の割合は、米中、EU、インドよりも多かった。住んだり、働いたりしたりしたい国でもASEAN諸国以外ではトップだ。

「The State of Southeast Asia 2024 Survey Report」( https://www.iseas.edu.sg/centres/asean-studies-centre/state-of-southeast-asia-survey/the-state-of-southeast-asia-2024-survey-report/ )
「The State of Southeast Asia 2024 Survey Report」( https://www.iseas.edu.sg/centres/asean-studies-centre/state-of-southeast-asia-survey/the-state-of-southeast-asia-2024-survey-report/ )

過剰に「日本すごい!」というのも、過剰に自虐的になるもの嫌いだが、こうした結果は素直に受け止めて、日本の可能性を考える参考にすべきだと思った。

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