見出し画像

ステージが変わったアメリカのデジタル影響工作 主役は中露イランではなく国内アクター?

●概要

アメリカのデジタル影響工作が変化している。予想された当然の変化だが、ここまで無策だったことに驚く。下記の記事によると、アメリカで匿名のX利用者がヘイトや偽情報を発言するとイーロン・マスクやトランプなどウルトラ・インフルエンサーが拡散するようになっている。イーロン・マスクが閲覧数に応じた報酬を与えるようにしたため、それを狙う利用者はイーロン・マスクやトランプなどのウルトラ・インフルエンサーが好むヘイト、偽情報、陰謀論を投稿を増やす。こうしたエコシステムが出来ている

Anonymous users are dominating right-wing discussions online. They also spread false information
https://apnews.com/article/misinformation-anonymous-accounts-social-media-2024-election-8a6b0f8d727734200902d96a59b84bf7

●感想

このエコシステムができた背景にはアメリカ当局のこれまでの対応の誤りがあるような気がする。防御側であるアメリカ当局の認識では、下記のような変遷をたどっている。

1.ロシアによるデジタル影響工作で国内に混乱と分断が起きた。ファクトチェックやリテラシーが対策として重要。
2.国内の分断が広がり、中露イランはそこを狙って煽るようになった。ファクトチェックやリテラシーが対策と加えてプラットフォームやメディアの協力も必要。
3.中露イラン以上に国内アクターによる混乱と分断が深刻化した。国内アクターと国内プラットフォームをなんとかしなければならないが、まずはプラットフォーム。前提として海外のプラットフォームは排除。しかし、分断が広がっているため、政府の介入が憲法違反という訴訟が起きている。

一方、実際にロシアが行ってきたのは下記と考えられる。あくまでの私の憶測なのであまり信用しない方がいいかも。

1.最初からアメリカ国内の問題や不可視化された層を狙って作戦を実施。
2.コロナ禍で悪化したアメリカの国内問題と不可視化された層を煽り、陰謀論、極右、反ワクチンと連携するようになる。
3.中露イランがなにもしなくても勝手にアメリカ国内で混乱を生む情報が拡散するエコシステムができている。中露イランが行うべきことはアメリカ当局を攪乱させるためのデジタル影響工作であり、それは実効性よりもわかりやすく当局が対応しやすいものが優先させる。

関連記事

影響工作の終焉 プーチンがライターを貸すとアメリカが燃える
https://note.com/ichi_twnovel/n/n70dfc3cc4577

『新しい階級闘争』の感想もしくは世界の格差について 分断と混乱を起こすのではなく、悪化させ、可視化することがデジタル影響工作の効果
https://note.com/ichi_twnovel/n/n4986a2da6c7b

陰謀論とロシアの世論操作を育てた欧米民主主義国の格差
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2023/05/post-46.php

ツイッター社が3月29日にロシア、中国、イランのプロパガンダメディア規制を緩和し、フォロワーとエンゲージメントが急増
https://note.com/ichi_twnovel/n/naa355bceaf24



好評発売中!
ネット世論操作とデジタル影響工作:「見えざる手」を可視化する
『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)
『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。



本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。