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ホワイトデーのお返し

最後のクラスの日、レッスンが終了しみんなで別れを惜しみながら談笑していた。

私がトイレに行って戻ると
彼と仲良しの男性Sさんがお菓子を配りに来てくれていた。
「あ!ありがとうございます」と受け取る。

すると彼が来て、バレンタインのお返しを渡してくれた。

ーーービックリした。


(お返しがあったらいいな…)
くらいにしか思っていなかったからだ。

私は彼に何度かお菓子をあげたこともあるし
バレンタインにはキャラクターのチョコレートと
彼が好きなアイドルのキーチェーンをあげた。

毎回「おいしかったです!!」とか「ありがとうございました!!」とか
心のこもった感謝の言葉は貰えるが、
彼の方から私に何かをくれたりしたことは一度もなかったのだ。

だからホワイトデーのプレゼントをわざわざ買ってくれたりするんだろうかと疑問だったし
そもそもお返し自体忘れているかも知れないとまで思っていた。

私が拍子抜けして動揺していると、
「貰ったキーホルダーつけてます!」と言って
カバンを見せてきた。

新しそうなカバンに私があげたキーホルダーが付いている。

プレゼントしてから1カ月、カバンに付けてくれたらいいなと思ってはいたが一度も見かけなかったので
「嬉しくなかったかな?」とか
「彼女か好きな子でもいるのかな?」とか

がっかりした気持ちが少しあった。


それが急に付けてますよアピールをされたので
それはそれは心が飛び跳ねるような気持ちだった。

更にうらめしそうな顔をしながら

「SさんとLINEで僕をいじってましたよね・・・!」

と言う彼。

かわいい。

私は一時期彼と1カ月近く他愛無いLINEを続けていて
色んな話をしたい放題していたが、
好きなあまり気を遣い過ぎるからしんどくなりーーー

SさんとどうでもいいLINEをすることが増えていたのだ。

そう言った彼は少し嬉しそうではあったが
やはり嫉妬も含まれているようだった。

その後久々にいろいろ話していると
彼のスマホのロック画面が
私が先月待ち受けにしていた某アイドルの全く同じ画像だったことに気付くーーー

お互い好きなのは知っていたが、
数多ある写真の中で全く同じものをチョイスするとはさすがにツイン過ぎる。

そしてまたSさんが来て
いちごの丸いお菓子を配りに来た。
私がお礼を言って1枚取ると、
「遠慮せず2枚貰ってくださいよ!みんな貰ってるんで!!」と言って
無理に2枚くれた。

ーーーまた丸いお菓子が2枚。
彼と出会った日に貰ったえびせん2枚。
差し入れでもらったまん丸巨大クッキー2枚。
いちごの丸いお菓子2枚。

キーパーソンたちが、どうしても丸いものを2枚くれるのだ。

ーーー私たちは二つの丸なのだろうか。

そしてレッスン室を出て、また1階で談笑していると
彼が後から降りてきた。

一瞬私の隣に立ったがすぐに向かい側に移動した。
やはり隣に立つと違和感があるらしい。

「おつかれさまでした!!」と言って
彼は先に去っていった。

いつものように、最後までこちらをみて
しつこいくらい手を振っていた。

彼と別れる時は毎回そうするのだ。

そして私は絶対に手を振り返さない。

なぜか手を振ってはいけないような気がするからーーー



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