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ロビンソンの飼い犬

 芽衣子がマニキュアを塗っているとき、ぼくは決まって彼女にくだらない話をする。ヤスリで丁寧に整えた指先に神経を集中する芽衣子の左の手指は、すでに薄いピンク色に染まっている。右の手指は一本目を塗り始めたところで、まだ爪の色がまだらに白い。ぼくは母親の腕を引っ張る子供みたいに芽衣子に喋りかける。
「夢でしか行けない場所ってない?」
 一瞬彼女の動きが止まったように見えたけれど、返事はない。ぼくは構わずに続ける。
「現実にはそんな場所見たこともないはずなんだけど、あれこの場所知ってるなって思ったら前にも行ってるんだ、夢で。なるほどここがぼくの深層心理か、なんて考えてると次に出てくるのが博物館なんだ。
 それもかなり小さくて、一戸建てくらいの大きさしかない。中に入ってもせいぜい十二、三畳くらいの広さだし、そのうえ所狭しとガラスケースが並んでいるから、動けるのは実質半分くらいのスペースなのかな。大抵は両手に収まるくらいの小さなケースだけど、目を凝らすと人の顔くらいの大きさのものとか、奥には天井に届くくらい大きいものもある。中身は、そうだな、名指しできるほどまとまったものには見えなかった。本当に雑多なんだよ、割れやすそうなティーカップの隣にボロボロの野球帽があったり、ともすれば古そうなゲーム機、子供のおもちゃみたいな指輪、新品らしいパソコン。ぼくにはどういうつながりで集められたものなのかわからなかった。
 部屋の隅には古い作業台みたいな机と、同じくらい古い椅子があって、そこには髭面の男が座ってる。おとぎ話に出てくるような優しい感じのおじいさんじゃなくて、もっと普通の定年退職して髭剃らなくなったような感じのやつ。
 おじさんはこっちが喋らなくても勝手に話し始める。
 ここは夢の骨格標本を集めた博物館だ、って。
 そこでようやくぼくがおじさんの手の中の小さなガラスケースに気づいて尋ねると、おじさんは嬉しそうに
『これはおれの標本だ。昔、海洋生物学者になりたかったんだ。でも俺の家には金がなくて、いつまでも勉強ばかりしているような余裕はなかった。大した仕事につけなくても働く以外に選択肢はなかった。三十くらいまでは弟と妹の面倒見て、嫁さんもらってからは家族を養うために、子供ができてからは子供たちを大学まで出してやるために。気がついたらこんな歳だ。可哀想だろ』
 そう言いながらおじさんは手の中のものを見せてくれた。白いコツコツした感じの小さな塊だった。ぼくがそれを不思議そうに眺めていると、おじさんは『幻の鯨だ』と言って笑った。なんでもニュージーランド周辺で一度だけしか目撃されていない謎の多い鯨の骨らしかった。どうしてそんなものをおじさんが持ってるのか、っていう疑問は不思議とその場では浮かばないんだよな、夢だからかな」
 話し終えて彼女の右手を見ると、爪先はすっかり均一に染まっていた。表面がつやつやして、天井から降る光を何倍にも増幅しているみたいだった。
「それからどうなるの」
 マニキュアの蓋をくるくると閉める芽衣子の指先は器用に空気以外を触れさせない。実家にいるときふたつ下の妹がマニキュアを塗るとすぐによれさせて騒いでいた記憶があるけれど、芽衣子の指先はいつも完璧だった。
「ないよ。大体いつもここで終わり」
「落ちはないの?」
「夢なんだから」
「えーつまんないね」
 芽衣子が口をへの字に曲げて、僕が眉毛でハの字を作る。芽衣子のほうが先に表情を崩し、ふたりで途切れるまで笑う。
 薄茶色のクッションにもたれかかると、芽衣子はまるで犬が服従を示すみたいに両手を軽く挙げたまま身体を投げ出した。まだぬかるんだ薄桃色が透明に光っている。
「どのくらいで乾くものなの」
「まだしばらくかかるよ」
「綺麗な色だね」
「そうかな」
 返事をする芽衣子のまぶたが半分閉じかけていて、つられてぼくも彼女の横に寝そべる。芽衣子は静かに左手をぼくの腹の上に置きながら
「あーあ、明日も仕事だ」
とひとりごちた。

 佐藤さんは独立してどれくらいなんですか、と聞かれて咄嗟に正確な年数が出てこなかった。二年くらい、と答えてから本当は三年をとっくに過ぎていたことを思い出したけれど、訂正するような隙もなくてそのまま別れた。
 在宅仕事になってから三年と少しが経つ。会社勤めをしていた頃に比べて預金は減ったけれど、毎月の報酬は一年ほど前に以前の収入を上回った。苦労も多いが、満員電車での通勤や継続的に人と関わることが苦痛な自分にとってこれ以上の贅沢はなかった。
 打ち合わせから帰ってくると、芽衣子はまだいなかった。一度帰ってきてでかけたような気配もない。先週末に休日出勤した分、今日半休が取れるかもと言っていたが、この様子では無理だったのだろう。
 テレビをつけると球場が映し出された。アルプススタンドいっぱいに立ち並ぶ白い制服と、鮮やかな黄色いメガホン。吹奏楽の賑やかな音がスピーカーから溢れ出す。そのままパソコンを立ち上げ、氷をたっぷり入れて作ったアイスコーヒーをテーブルに置く。
『仙台育英勝ってるよ』
 仕事を始める前に芽衣子にメッセージを送った。プロ野球にも高校野球にも明るくないぼくでも仙台育英高校の名前くらいは知っている。芽衣子も野球に対する熱意はぼくと大して変わらないけれど、仙台育英のプレーが流れているときだけは絶対にテレビを消さなかったし、今日の決勝戦の時間も調べていることも知っていた。仙台は芽衣子の生まれ故郷なのだ。
 故郷とは言っても、彼女は三歳くらいまでしか住んでいないと言った。母親が亡くなって、父親の仕事の関係で別の地方で二人暮らしをしていたらしい。仙台にいた母方のおばあちゃんが時々様子を見に来てくれるのが、少し気まずかったけど嬉しかった、と芽衣子は少し笑った。
 しばらく仕事に集中したあと、スマホを見ると芽衣子から返信が入っていた。
「今日こそは帰ったら扇風機の掃除をしよう」
 彼女からの返信にはいつも脈絡がなくて、ぼくと芽衣子のそれぞれが個々に要件を送り合っている、という形になる。余計なことは言わないけれど、余計な話は積極的にするべき、というのが彼女の信条のようだった。
 扇風機の掃除だって、一緒に住み始めた頃にした冗談みたいな口約束だ。冬に引っ越してそんなことすっかり失念していた一年目の夏、ぼくはピカピカに磨いて風切り音の静かになった扇風機の前で芽衣子に怒られていた。仕事が忙しい芽衣子を喜ばせたくてやったことだったのに、どうしてひとりでやっちゃうの、と言われてはぼくだって気がささくれ立つ。それが同棲して最初の喧嘩だった。
 扇風機、夏になる前に掃除しなくちゃね。ぼくが羽を拭くよ。じゃああたしが、なんてあんな口約束、律儀に守らなくてもいいのに。言い出しっぺのぼくはなんだか申し訳なくなって、変な顔をした猫のスタンプを芽衣子に送った。

 思えば彼女と住み始めにした約束事は多い。家事の分担やお金の管理など居住に関することはもちろん、そのうち犬を飼おう、というのもそのひとつだ。
 僕も芽衣子も、犬を飼ったことがない。芽衣子に関しては祭りで取った金魚や、小学生のとき近所の男の子に取ってもらったクワガタくらいしか世話をしたことがないという。かくいう僕だって生き物は妹が誕生日にねだって買ってもらったハムスターくらいだ。心配は色々あったけれど、ふたりとも「生涯に一度くらいは」と思っていたところで一致した。
 引っ越しの荷ほどきもそこそこに犬の飼い方に関する本を買って読んだ。ぼくも芽衣子も知識が漠然としすぎて使い物にならず、ネットの海で学ぶには意見が多種多様すぎた。それなら本を一冊読んでしまったほうがいいという結論だった。子犬が社会に馴染めるかどうかは生後半年ほどで決まることも、人間と同じように目も耳も老いてゆくことにも、戦々恐々としながらも飼うはよそうとは互いに言わなかった。
 飼育用具の下見をし、家に迎え入れられるように整えるまでにそれほど時間はかからなかったが、肝心の犬探しが難航した。それまでに彼女の繁忙期が三度終わった。そのうちに犬を飼うなんて話すらなくなるのではないかと思ったが、芽衣子は忘れなかった。
 しかし彼女の仕事が忙しいのも確かだった。外資系の商社に勤めていて、残業も多ければ出張は月に平均二回ほど。その出張も予定通りに終わらないことがザラで、金曜日には帰れるはずだったのが日曜日の朝起きてみると隣で芽衣子が泥のように眠っていたことが何度もある。賢明な人だからひとり暮らしなら絶対に生き物なんて飼わなかっただろうが、その点は在宅仕事のぼくがカバーするということで話がまとまった。芽衣子は「本当に大丈夫なの」と半信半疑ながら嬉しそうだった。
 いつになるかは分からなくても、いずれはきっと飼う。それがぼくたちのささやかな約束だ。

 夕方、仕事が一段落して気分転換にベランダに出ると、ちょうど隣の家のおばさんが顔を出した。ぼくが軽く会釈をすると、彼女は突然なにかを心得たような顔になる。
「奥さん、今日も遅いんでしょう?」
「そうみたいですね」
「駄目よ、そういうことはちゃんと言わなきゃ。女は仕事ばかりしてないで夫の世話くらいしろって」
 おばさんはそれだけ言うと満足そうに表の通りの勝手口から出ていく。右腕に提げた買い物袋は最近よく見かけるナイロン製のものではなく、おそらく何年も前に手作りしたような布製のパッチワーク。芽衣子がそれをぶら下げて買い物に行く姿を想像してちょっとだけ気分が晴れる。そもそもぼくたちはまだ結婚していない。
 たとえ結婚していたとしてもぼくたちの関係なんて、ぼくたちさえわかっていればいいのだ。あとは犬。これから迎え入れる彼、もしくは彼女さえわかってくれていれば。
 先日の台風で排水溝にこびりついた泥をほうきで軽く掃き出してから、ふたり分の夕食の準備を始めた。

 ぼくが独立しようと思ったのは父親の影響だった。父は大手建機メーカーのエリアマネージャーをしていた。大手の傘下とはいえ、規模が大きくなれば自然と売上にも運営方針にもバラつきが出てくる。混成的になりがちな枝葉を調整するのがマネージャーの役目で、父はそれができる人だった。小学生の頃、父の部下だという人がたびたび家に遊びに来て『お父さんはすごい人なんだよ』とぼくの頭を撫でた。そういうことが幾度もあったのだから、決してお世辞ばかりということでもなかったのだろう。
 しかしその一方で父について思い出すことといえば、真夜中に起き出したときに聞こえてくるすすり泣く声だ。トイレに行こうと二階の子供部屋を出ると、それは聞こえてくる。同時に母の励ますような声も。むせぶような呼吸の音は、なにを訴えているのかはわかりもしない癖に苦痛だけは切々と伝えた。
 そもそも父は自分に自信のない人だった。謙遜しているのではなく、自己を肯定するという機能が根本的に備わっていない。どれほど仕事ができても、部下に慕われようと、エリアの売上が安定しようと、自己を肯定しない者にとってはどれも価値は低い。まだ中学に上がったばかりのぼくに「こんなこと、おれにはできっこないんだ」と愚痴をこぼすようになったとき、それまで感じていた違和感のようなものがさらさらと溶けてなくなった。この人はもともとこういう人で、その父に似たぼくも同じなのだと。
 それがわかっても日々が楽になるまでにはそれなりに時間がかかった。学校とは他人からの期待、羨望、嫉妬を寄せ集めた塊のようなものだ。ただ呼吸しているだけでも、ほんの小さなことをきっかけにクラスメイトの噂の的になり、鬱憤のはけ口になり、時には憐れまれたりする。特に勉強や運動はできてもできなくても駄目だ。一度勇気を出してなにも書かずにテストの答案用紙を提出したら見事に騒ぎになった。隣のクラスのやつがすれ違いざまに「かまってちゃんじゃん」と肩をぶつけてくる。その足でもう二度としない、と当時の教科担任に言いに行った。小言も形だけの心配も耳には入らなかったけれど、そのときの先生のほっとした顔だけは覚えている。
 やがて就職し、あのときの感覚が間違いではなかったことを悟り、ぼくはひとりで仕事をするようになった。もちろん仕事を選べるような立場ではなかったが、ただの取引先なのに上司のような顔をし始める担当者とは意識的に距離を置いた。彼らは自分たちさえ仕事を切ればぼくたちが路頭に迷うと思っているけれど、はじめからそういう会社からもらう対価など当てにはしていない。個人事業主の強みは自由に仕事ができることだけではないのだ。
 ぼくが家でPCに向かっていると、芽衣子が帰ってきた。ただいま、という声はいつも通りでも、目の周りがうっすら浅黒くなっている。一回も化粧直ししないとパンダになるんだよ、両手の親指と人差指で作った丸を目の縁に当てながら教えてくれたのはいつだっただろうか。今夜の彼女にそんな余裕はありそうになかった。
「今日は夕飯まだなんだ」
 ぼくが言うと芽衣子は責めるでも、おどけて一緒に作ろうと言うのでもなく、返事にならない返事をした。なにかを言いあぐねているのがわかった。相談なんだけど、とようやく口を開く。嫌な予感がする。
「ごめん、来週末の予定ってずらせないかな」
「週末ってうちの実家に来るってやつだよね」
 芽衣子が小さくうなずく。そのままうつむいたまつげにいつもなら絆されるのに、その日に限ってぼくにもそんな余裕はありそうになかった。
 納品まで終わったはずの会社と突然連絡が取れなくなった。直近まで連絡を取っていた担当者のメールアドレスはもちろん、会社の代表メールも、電話もすべて空振り。大きな会社ではなかったが何度か取引していて不安に思うようなこともなかったから油断していた。
 焦ったぼくは同業の知り合いや、事情を知っていそうな人に片っ端から連絡を取った。段々と詳細がわかりはじめたが、予想した通り最悪の結果でしかなくて調べるのを辞めた。代わりに先日送った請求書をPCから引っ張り出して見る。ここ二ヶ月間かかりきりだっただけに額が大きい。なにも言葉が出なかった。
 ソファの横に置いた芽衣子の鞄が倒れる。彼女は「ごめん」と小さく謝ってそれを起こした。
「もう二回も日付変えてるよね」
「うん」
「また仕事の予定?」
「うん」
「休日出勤?」
「…前日に出張が入っちゃって」
「泊まりの予定なの」
「日帰りだけど、念のため宿も取ってるから、たぶん」
 そこで言い淀んだ芽衣子に思わずため息が漏れた。無意識だったが、心の余裕がなければこんなものだ。
 もともとぼくの実家に行く予定が土曜日だった。ということは金曜日から出張。今までの様子からして土曜日の昼からの時間にはとても間に合わないだろう。芽衣子もそれを悟って相談を持ちかけてきたのだ。
 立ったままの芽衣子を見ると、髪と肌が薄っすら濡れていた。夜中から雨予報だったのが予定よりも早く降り出したらしい。芽衣子の肌は透き通るように白く、首筋にかかる湿った髪の毛が嫌に艶っぽい。彼女のそういう部分をぼくは久しぶりに見た気がした。
「最近帰りも遅いし、出張も休日まで長引くことが多いよね」
「うん、だからごめん」
 謝られるとそれ以上なにも言わないでくれと拒まれているような気持ちになった。もうしばらくの間芽衣子と一緒にご飯はおろか、同じ時間に寝付くことすらない。当然触れることもない。むしろ芽衣子自身がそれを避けているのではないかという気さえしてくる。
 芽衣子はもう一度謝ってから「極力早く帰れるようにはする」と言って部屋を出ていった。脱衣所のほうで物音がする。
 僕は以前取引のあったところに何件かメールを出し、最後には半ば諦めた気持ちでPCの電源を落とした。薄いカーペットの上に寝転がると、目が疲れていたのか動くはずのない白い天井の模様がうじゃうじゃと波打って見えた。ぼくが悪かったのだろうか。考えても思考は極端なほうへしか傾かず、遠くで聞こえるシャワーの音で時々我に返る。
 芽衣子はまだ出てこない。彼女にとって入浴は日々の憩いらしく、毎日一時間くらいは平気でこもる。ぼくもそれを知っているから極力浴室周りには近づかないようにしていた。どんなに親密な仲であっても踏み込むべきでない場所というのはあるし、かくいうぼくも同じようなタイプの人間だった。他人と長時間一緒にいることができない。疲れる、とか気詰まりだ、というよりは不可能というニュアンスに近い。
 ぼくは胡座をかいていた足を伸ばし、ゆっくりと立ち上がった。意図せず芽衣子が入浴中の廊下を歩くような静かな動作になる。そういう仕草が身体に染み付いている。きっと彼女もそうだろう。ぼくが彼女を気遣って近づかないと思っている。信頼ゆえの無防備が頭の中でささくれ立つ。
 膝やふくらはぎを丁寧に伸ばしてから、足音を立てないように進む。マメな性格の芽衣子のお陰でリビング以外の電気はきちんと消えており、廊下は薄暗く玄関は闇に黒ずんでいた。擦るような足音のあとをぼんやりとした影がついてくる。なぜか誰かに追いかけられているような気になったが、ぼくは構わずに進んだ。シャワーの水流がタイルを叩く音が反響している。
 仕事が忙しいせいもあるのだろうが、芽衣子は基本的にスマホを手放さない。リビングで寛いでいるときや寝室で休む際もきちんと置き場所を決めている。そこにないと気づくとすぐに探し始める。もちろん入浴中も持ち込んでいるが、シャワーのときはさすがに浴室においておくわけにはいかない。
 ぼくは静かにスライドドアのへこみに手をかけた。ここを開ければその先にはぼくの知らない芽衣子がいる。まだシャワーの音は鳴り止まない。チャンスは今しかない。段々と暗さに慣れてきた目で想像する。芽衣子の細い腰にくっきりとついた跡。あまり声を上げない彼女の目の端には涙がにじむ。唇に触ると無意識に食いしばっていた強張りがほどける。ぼくの知っている芽衣子。それが本当の彼女なのかどうか。
 脱衣所の光が細く廊下を割く。眩しさは感じないが代わりに刺さるような違和感があった。本当の彼女って、なんだよ。
 ぼくは慌ててわずかに開いた扉から手を離した。少ししか開いていなかったからかほとんど音も立てずに光は消えた。それよりも少し遅いかというタイミングでシャワーの音が止んだ。信じる、という言葉は便利だ。釘打ちにも紙面のない契約書にもなる。裏切っても死なないが、どこしらはきっと腐り落ちるだろう。
 リビングに戻ると、部屋の隅に段ボール箱が積んである。片付け魔なところのある芽衣子から唯一そこに置くことを許されたのは、すべてまだ飼ってもいない犬のための飼育道具だ。ぼくは途端になにを信じたらいいのかわからなくなる。こんなことははじめてだった。はじめて。いや、本当にそうだろうか。
 芽衣子と付き合ってから、今年の春で五年を迎えたはずだった。薄情だと言われることも多いが、ぼくらの間には記念日というものがない。わざわざ特定の日を特別視する必要もないだろうというのがぼくと芽衣子の総意だった。平坦な日常の中でそれなりにぶつかったこともあったけれど、こんな風に相手を巧妙に避けるような距離感ははじめてのはずだ。
 なのに彼女のあの顔を、あの冷めた目元の暗さに覚えがあった。あれはいつのことだったのだろうか。
 そのうち廊下のほうからガラガラと音がした。磨りガラスの向こうにモザイクがかった芽衣子の姿が浮かぶ。ぼくはリビングの真ん中に突っ立ったままそれを眺めた。彼女はなかなか入ってこない。それどころかモザイクは段々と不鮮明になって闇が滲んでいく。まさか出て行こうとしているんじゃないだろうか。あのときも彼女はそうやって消えたんじゃなかっただろうか。
 ひどく動悸がするのに手が冷たい。これは普通のことなのだろうか。
 ふと我に帰った頃、遠くのほうで目眩のような音が聞こえた。

 来週までの納期の仕事が一段落して振り返ると、芽衣子がソファの肘掛けにもたれるように座っていた。一見リラックスして見えるけど身体の節々が縮こまっていて窮屈そうだった。なにか心配事でもあるのかもしれないな、と思いながらぼくも床に座ったままソファにもたれた。
「常同障害って聞いたことある?」
「なあに、それ」
 つけっぱなしのテレビからサイレンの音が聞こえる。目を遣ると広いグラウンドと青とオレンジにグレーをまぶしたような空が映し出されていた。仙台育英、と書かれた背中がとても小さかった。もうすぐ夏が終わる、と唐突に思う。
 まどろんだような芽衣子の声はやはりどこか緊張しているように感じた。彼女の性格上、気にかかることがあると休日であっても芯から落ち着くのは難しいのかもしれない。土曜日と日曜日のたった二日間しかない休みくらいゆっくりすればいいのに、と思うけれど口には出さなかった。
「犬とか猫がなるやつで、人間で言うところの強迫性障害みたいなものなんだって。まったく無意味な行動を繰り返して、最終的には日常生活に支障をきたすらしい」
「猫がグルーミングしすぎて禿げちゃうみたいなのとか?」
「うん、あとは子犬とかがよくやる尻尾追いかけるやつ。あれも行き過ぎると尻尾の毛をぶちぶち抜いてしまったり、酷いと噛みちぎっちゃったりするんだって」
「それは怖いね。でもペット動画とかでよく見かけるよね」
「そうなんだよね。子犬の間はある程度は仕方がないこともあるし、人間だってたとえ無意味でもやると落ち着く行動ってあるでしょ。髪を触ったり腕を組んだり。犬も同じで身体のどこかを舐めると緊張がほぐれることもあるんだって。これを転位行動という」
「ふむ、それじゃあ厳密に見分けるのって難しいんじゃない」
「獣医でも判断に困る場合があるらしいよ。結局その犬にとって本当に必要なことがなんなのか、わかるのはずっと一緒にいる飼い主だけなのかもしれない」
 コーヒー飲む、と聞くと芽衣子は首を振った。ひとり分のために湯を沸かすのが億劫になって、ぼくは床に座り込んだまま手元のスマホを見た。今日は金曜日だ、近所のスーパーで卵が安い。
「買い物にでも行く?」
「行かない」
 芽衣子はどこか空を睨んだまま言った。そういえばさっきから彼女と目が合っていない気がする。
「じゃあぼく行ってくるよ」
「いいよ。一日くらい食べなくたって死なないんだし」
「そんな横暴なこと」
 冗談かと思ったが彼女は少しも笑っていない。芽衣子に神妙な顔をされるとつられてぼくも黙る。今日はなにかあっただろうか、と朝からの彼女との会話を思い出そうとしたが、少しも思い出せなかった。ほんの、少しも。
「ねえ、芽衣子」
「なあに」
「今日は有給でもとったの」
「どうして」
「だって今日は金曜日だ」
 出張は、と聞くとようやく彼女の目がぼくに向いた。芽衣子の目は茶色味がかった色素の薄い色をしているはずだったのに、今日はやけに黒々として見えた。まるで子供が黒色のクレヨンでぐるぐると掻き回したみたいだ。ぼくがソファから背中を離すと、彼女はわかっていたみたいに先に顔を背けていた。
「出張って嘘だったの」
「嘘じゃない」
 彼女の言わんとしていることがわからない。普段はこんな持って回った言い方や遠回しな指摘を好むひとではないのに、と思っていると芽衣子はソファからだらりと垂らしていた両足を抱え込み、その間に顔を埋めた。泣いているみたいな仕草にぼくのほうが戸惑ってしまう。
「どうしたの、教えてよ」
 ぼくが体重をかけるとソファがたわみ、その歪みに彼女の身体がぐらりと傾く。まるで体重が十分の一くらいになってしまったみたいにいとも簡単に横たわった顔についている眼はやはり黒く重かった。
「ねえ、なにもおかしいと思わないの」
 表情を取り繕わない芽衣子の顔は目の下のクマが目立つ。落ち窪んだ青い眼下がより一層彼女から正気らしい物を奪っていた。
 そもそも、これは本当に芽衣子なのだろうか。
 彼女は浅黒くくすんだ顔に赤い舌をちらつかせながら喋る。
「仕事の予定がそんなに頻繁に伸びるわけないじゃん。もうわかってるんでしょ。優しさで知らないふりしてくれてるの、それとも私に興味なくなったの」
「そんなわけないよ」
 そんなわけはないけれど、彼女の言葉に抑制されたなにかがあることもまたわかっていた。しかしそれがぼくに対してなのか、自分自身にか、それともまったく別の、鋭利な留め金のようなものに対してなのかはわからない。
 黙って芽衣子を見つめていると不意に目を逸らしたくなる。自分がわからない振りをしているだけのような気さえしてくる。
 「ねえ」と突然芽衣子が甘えた声を出した。
「『新幹線が止まって帰れなくなった』って言った私に、あなたはなんて言った?」
「『台風が来てるわけでもないのに運休になるの』」
 するりと出てきた言葉に自分で驚く。芽衣子が一瞬だけニンマリと笑ったように見えた。暴かれる、というよりは再生に近い感覚。
「『ごめん、上司に言われてどうしても断れなくて』」
「『頼まれてってなに、本当に仕事なの』」
「『仕事だよ』」
「『上司と寝るのが仕事ってどんな慈善事業?』」
 テレビからサイレンが聞こえてくる。舐めるように上下する音が夏の終わりを告げ、そして永遠に鳴り止まない。
 ぼくはぼくの口から出た言葉に戦慄した。なにを言っているんだ、ぼくは。いや、知っているはずだ、彼女と彼女の上司のあいだで交わされた行為も、会話も。すべて見たはずだった。彼女がどんなことを強要され、それに応えてきたのかも。相手の男が芽衣子のスマホのカメラロールに自分との情事の写真を何百枚と入れさせて興奮しているようなやつだってことも。すべて芽衣子のスマホの中で見たのだから。
「わかったでしょ。もう二回目だもんね」
 なぜか頭の中で隣の家のおばさんの台詞が繰り返される。「奥さん、今日も遅いの」「奥さん、休みの日も仕事なの」「奥さん、男でもいるんじゃないの」。ぼくは拳を握ってにこやかにベランダの窓を閉める。
 芽衣子がシャワーを浴びたあと、部屋を出て行ったのはぼくのほうだ。暗い階段を降りて出た夜は途方もなく澱んでいた。ふらふらとおぼつかない足元。歩道と車道の間を迷惑に歩く。後方からのフラッシュ。クラクションの音は最後までしなかったと思うけれど、本当のところを知る術がもうぼくにはない。
「ここはどこなの」
「わかんない。でもあなたがいた」
 芽衣子が両手で顔を覆う。
「幸せだと思ったのに」
 偽物は、ぼくかもしれなかった。

 芽衣子のおばあさんに二度会ったことがある。
 一度目は彼女の帰省についてこないかと誘われて遊びに行った時のことだ。芽衣子はおばあさんのことを「さゆりさん」と名前で呼んでいた。どうしてかと聞いてみると、小さい頃からそうだから、と困ったような顔をした。
 さゆりさんは東京から新幹線で二時間くらいのところにひとりで住んでいた。まだ芽衣子が生まれる前に夫を亡くし、もう何十年もひとり暮らしだという。それだけ聞くと寂しそうな印象を受けるが、実際さゆりさんは古いけれど丁寧に手入れされた洋風の家に住んでいた。二階のアールヌーボー様式のバルコニーが自慢で、昼食はそこにテーブルとクロスを引いてご馳走になったくらいだった。他にもこじんまりとした庭には季節の花が咲く花壇があり、リビングのチェストの上には小さな置物や写真が置いてあるのに埃一つない。大切にしていることがひしひしと伝わってくるような家だった。
 穏やかで風通しのいい空気ははじめて尋ねてきたぼくでさえ居心地が良かったが、芽衣子はさらにリラックスして機嫌よく見えた。ぼくがさゆりさんと話をしているうちにいつの間にかいなくなった彼女を探しに二階に上がると、芽衣子はバルコニーにつながる部屋の隅に置かれたロッキングチェアに座っていた。ゆらゆらと揺れる身体にまぶたは閉じ、まるで夢見心地というようなうっとりとした表情に日差しがさす。半分開けられたままの窓からは時々風が吹き込んだ。
 行儀が悪いことを承知でぼくは椅子の下に敷かれたカーペットに寝そべり、芽衣子を見上げた。派手でも機能的でもないチェアの肌触りはところどころささくれているけれど、そんなことは気にならないくらいに纏う空気が美しかった。ぼくはなんだか犬になったような気分で天井とバルコニーと芽衣子を見つめたまま眠った。
 ふと目を開けると、部屋の輪郭が常夜灯のあかりでふんわりと照らし出された。あたりは暗く、空気が暖かいなと思ったらバルコニーの窓が閉じられていた。ロッキングチェアで眠っていた芽衣子も今はいない。腰のあたりに掛けられていたブランケットが自分の体温で温かい。
 ぼくはブランケットを折り畳んで小脇に抱え、一階へ降りた。キッチンにいたさゆりさんが「よく眠っていたわね」と身体を半分だけ振り返って言う。芽衣子は、と聞くとお使いに出たところらしかった。何か手伝いますか、と訊ねても座っていてちょうだいとしか言われず、ぼくは手持ち無沙汰にダイニングについた。
「私はね、芽衣子ちゃんと一緒に住むのが夢だったの」
 背中を向けたまま彼女が言った。その一言にぼくは「はい」とだけ答えて、それ以上はなにも言わなかった。なにも言えなかった。
 芽衣子の父親は、おそらく良い父親ではなかった。犯罪を犯しているだとか、職についていないだとかそういうことではなく、むしろ大手企業で要職につくほどの優秀で人望も厚い人だったと芽衣子は言った。お陰で中高とエスカレーター式の私立校に通い、大学も希望するところへ入るために予備校にも通わせてもらったという彼女の学歴は、確かにぼくなど足元にも及ばない。
 でも可愛がられていたのとは違う。そう言った芽衣子の目が泳いでいた。ぼくはそれからしばらく彼女の身体に触れることができなかった。ぼくが男で、それだけのことが彼女にとって負担になる。
「他人を所有するのってそんなに楽しいのかな。自分勝手に人を弄んで、言うこと聞かせて。でもいつもは普通の人なの。普通の顔してるの。それが私は怖かった」
 芽衣子が大学進学で家を出て二年目の春、父親は再婚した。一度だけ顔合わせのために食事をして、それきり最低限の連絡しかとっていなかったという。時々お金の話や就職の話の合間に生活や身体の心配をされると死にたくなった、という彼女と出会った二十三の歳、もう芽衣子は父親とは絶縁状態だった。母方の祖母であるさゆりさんだけが唯一心を許せる親族だった。
 さゆりさんと二度目に会ったとき、彼女は病室のベッドにいた。呼吸はあるけれどもう意識がなかった。芽衣子はぼろぼろと涙を流したまま部屋の隅に佇んで動かない。顔を見てあげて、と見も知らぬ遠縁の親族が言っても彼女は立ち上がらない。
 ぼくはさゆりさんの側に寄って身をかがめた。彼女を上から見下ろすのがなぜかとても嫌だった。人工呼吸器を付けられたさゆりさんの顔は穏やかで、瞼にもどこかハリがあった。ただ眠っているだけのようで、それがかえって現実を受け入れられなくしている気さえした。
 どうしてさゆりさんははじめて会ったぼくに、あんな大事なことを教えてくれたんだろうと思っていた。大事な孫娘を守るための牽制かとも考えたけれど、それはきっと違っていた。
 ずっと耐えてきた芽衣子にぼくが渡せるもの。今も耐えている芽衣子にぼくが渡せるもの。
 目を閉じると、夢の骨格標本の男が映った。お前の夢も標本にしてここに並べてやろうか。いじわるな笑い方だった。
「でも本当のところ、ここではなんだって実現できる。捨てたものも、無くしものも、手に入らなかったものでもな」
 ぼくが首を横に振ると、おじさんは標本の海の中に消えていった。

 部屋の隅に彼女が座り込んでいる。それはちょうど足の爪を塗るような体勢だった。ぼくはソファから上半身だけを起こし、芽衣子に尋ねる。
「犬種はなにがいい」
 彼女は答えない。ぼくだけが勝手に話す。
「ポメラニアンとかシュナウザーとか小さい子も可愛いし、ゴールデンとかは足がしっかりしてて安心するよね。どんな犬種だっていいけど、できれば毛の長い子がいいな。ふわふわして暖かくて、君、冷え性だから添い寝したらきっとよく眠れるよ。あとはお留守番が得意な方がいいね。ひとりにしちゃうことも多いだろうし、こっちの心配なんてどこ吹く風で元気でいられるような賢い子。でも君にはよく甘える子、なんて欲張りかな」
 部屋の隅に重ねられたダンボール箱は薄く埃を被っていたけれど、ぼくも芽衣子も移動しようとは言わなかった。ぼくはこの暮らしのそういうところが好きだった。
「でも、君が気に入ったならどんな子でもいいよ」
 芽衣子が顔を上げた。目が充血して黒い。
「私ひとりじゃ無理だよ」
「無理じゃないよ。ひとり暮らしで犬を飼っている人なんてたくさんいる」
「無理だって、できないよ。今だってどうしたらいいかわからないの」
「きっとわかるようになるときが来るよ」
「そんなの来なくていい」
 芽衣子の声が段々と小さくなる。
「ふたりじゃなくちゃ意味がいない」
 部屋の中に夕暮れの光が差した。つけっぱなしのテレビからサイレンの音がなる。夏が来る予感はあんなにも心躍るのに、なぜか終わりのほうが何十倍も鮮やかだ。
 ぼくは立ち上がって芽衣子の隣に座った。柔らかい髪を梳くと、それは消えそうなほど儚くこぼれていった。指先の感覚がぼんやりしてきていた。
「いつもはじまりならいいの」
 芽衣子が言った。終わりがないならはじまりだってないよ、と屁理屈を言うと彼女がほんの少しだけ笑った。
「でもはじまりばっかりにするなら、ぼくは海のそばに住んでみたいし、ハワイでグリーンフラッシュってやつを見てみたいな」
「あなたらしいね。私はどこでも良いけど、どうせなら関西に住みたいな。その土地の方言の中にいたら自分もそうなれるのか試してみたいし、スピッツのライブにも行ってみたい。それで空も飛べるはずを聞くの」
「いいね、行こうよ」
 そう言うと彼女が鼻をすすりながらうなずいた。ティッシュは探しても見つからなくて、ぼくが服の裾を差し出すと芽衣子は一瞬迷って断った。
「いい、大丈夫」
 芽衣子がぼくの目を見た。どこかでひぐらしが鳴いていた。

 私が大きな段ボールをクローゼットにしまうのを見て、友人が怪訝そうな顔をした。
「それ、取っておくつもり?」
 彼女の綺麗な顔に皺が寄って、私は思わず笑ってしまった。家電ひとつで彼女にこんな表情をさせられると思わなかったのだ。私が知る限り彼女ほど聡明で美しく、断捨離が上手な女性はいない。これを機にすべて片付けてしまいたい、と言った私に彼女は快く力を貸してくれた。
 部屋を見渡すと、いらなくなったもののほとんどを玄関先にまとめたせいか酷くガランとしていた。部屋としての彩りや愛想がなくなって、代わりに実用性に似た無機質さが充満していた。
 手を貸してくれた彼女に礼を言うと、こちらに遠慮をさせないような華やかな笑顔で
「手伝ってほしいって言ってた割に物なんて全然なくて、むしろ拍子抜けよ。まさか人が来るからって片付けたわけじゃないよね」
「それならはじめから頼まないよ。でも自分ひとりじゃここまでできなかったと思う」
「そう? それならよかったけど」
 彼女が後ろでひとつにまとめていた髪を解くと、ふわりと金木犀のような匂いがした。
「どうせなら全部一辺に捨ててしまったほうが楽だからね。何度も悲しい思いをする必要はないわ。芽衣子のことだから仕事辞めたって当面暮らせるくらいの貯金はあるんでしょう」
「多少はね」
「謙遜しなくていいわよ。無職で犬飼おうなんて最高じゃない」
「ありがとう。お迎えしたらまた遊びに来て」
 部屋の隅にはほんの少し前まですべて段ボールに入れっぱなしになっていたものたちが綺麗に並べられていた。新たに買い足したものも多く、もとからリビングにあった家具の大部分を処分した。
「ところで、それはやっぱり捨てないの」
 彼女が指さしたのは開けっ放しになっていたクローゼットだった。段ボール箱から扇風機の頭の部分が数センチ飛び出し、購入したときに付属でついてきた不織布のカバーが掛けてあった。掛けなくたって、もうこれを動かすことはないのだけど。
「新しいの買ったんでしょ。そんな場所とるもの取って置かなくても」
「いいの。これは」
 友人が首を傾げる。丁寧に埃が除かれ、磨かれた羽の部分はプラスチックのツヤが光る。私は笑いながらクローゼットの扉を静かに閉めた。


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