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SESに事業を切り替えたら社員が辞めた話

10年以上システム開発を生業とする会社を経営してきましたが、新型コロナウィルスの影響もあり、2020年の年末くらいから、事業を大きく変える決断をしました。
システム開発の受託開発事業を廃止し、SES(システムエンジニアリングサービス)という事業に大きく舵を切りました。それによって社員が数名辞めてしまうこともありましたが、今は事業が安定してきました。
エンジニアの方の中には、SESについて悪いイメージをお持ちの方も多いと思います。私も元エンジニアですので、悪いイメージがあり、この事業を始めることへのためらいがありましたが、今は考えが大きく変わりました。

SESとは?

システムエンジニアリングサービスの略で、SES(エスイーエス)と呼ばれます。システムの受託開発は、開発したシステム(納品物)を提供するのに対して、SESは、システムエンジニアのリソースを提供するサービスになります。毎月決められた時間分システムエンジニアのリソースをクライアントに提供します。

受託開発業務では、納品するシステムの仕様がすべて決まった段階で、それを作るためには何人のエンジニアで何ヶ月かかりますという見積もりを出します。そしてクライアントと契約したら、エンジニアが設計、開発、テストなどを行って、最終的に成果物を納品して、クライアントがそれを検収し、お金をお支払い頂いてプロジェクトが終了します。

一方、プロジェクトとして終わりのない仕事というのがあります。たとえば、Webサービスの保守や追加開発など、ずっと仕事は続きますし、納品物のようなものもありません。ここで必要なのは、これらの業務を行ってくれるエンジニアのリソースそのものです。そういった仕事を行うのがSESになります。

簡単に言うと、受託開発は、成果物の完成を目的とし、SESは、エンジニア業務の遂行を目的としています。

事業が変わったことで社員が辞める

当社では、社員の9割が子育て中のママエンジニアです。
「子育てする人のキャリアをつなぐ支援をする」ミッション
に、元々はシステム開発事業を行ってきました。キャリアがあっても、子育てを理由に働くことができない方を採用し、完全在宅、時短勤務でお仕事をして頂くことで、子育て期のママエンジニアがキャリアを諦めずに続けることを目的にやっていました

しかし、受託開発事業には、仕事にかなり波があり、期末の3月に1年の売上の半分以上を売り上げることもあります。
そんな厳しい仕事環境で、子育てしながら働くのは難しいのでは?と思う方も多いと思いますが、子育てしている方は時間に制約があるのですが、精神的にはタフな方が多く、納期がある中でシステムを開発することは精神的にとても大変な仕事ですが、それを乗り切る力を持っていました
彼女たちは、子育てと仕事さえ両立することができれば、どんな厳しい仕事でも頑張る力がありました。
ただコロナの影響もあり、経営上不安定になる受託開発事業を続けることがとても難しくなり、ストック型の収益があるSESに事業を切り替えることで、経営を安定化させることを目指しました。

納期がある仕事ではなくなることで、より安定した仕事ができることになるため、社員たちにとっても良い決断になるのではと思ったのですが、反発はそれなりにありました。

受託開発業務をやるつもりで入社したのに、事業が変わってしまったということで、辞めてしまった方も数名出てしまいました。辞める理由としては当然だと思います。「子育てを理由に働くことができない方」を採用していた当社としては、他の会社に転職できたことは喜ばしいことだと思いました。少なくても当社での経験が転職にはプラスに働いたと退職した方が言ってくれました。(もちろん、社員が辞めるということは寂しい気持ちになります)

イメージの悪いSES

一般的なSESは、クライアントの職場に出向いて開発業務などを行いますが、当社では、完全に在宅で行います。
また、子育てを優先する働き方ができるクライアントとしか取引しないと決めています。基本的には時短で働く方が多く、1日4~6時間くらいの稼働の方が多いです。
SESというと、過酷な労働環境と、ピンハネ、搾取みたいなイメージを持つ方が多いようですが、当社の仕事環境に関しは、とても働きやすい環境(クライアント先)ばかりで、とてもびっくりさせられます。
(※当社のSESは、リモートサービスという名前で提供しています。)

SES会社は芸能事務所のような存在

会社の事業を大きくSESに舵を切ったことで、私自身の仕事の内容もガラリと変わりました。まるで芸能事務所のマネージャーがテレビ局にタレントを売り込むような仕事をしています。
実際はタレントではなくエンジニアです。
芸能事務所がタレントを売り込んだり、育てたりするように、我々はエンジニアをそのように扱っています。
一人ひとりの良さや適正を見つけて、その方が子育てしながら安心して働けるように、仕事を探したり、サポートしています。
AKB48のようなアイドルグループと同じように、いずれは卒業(他社にキャリアアップや独立)していくメンバーも出てきて良いと考えています。
ずっと社員を会社に閉じ込めておく気持ちはありません。我々の役割は「子育てする人のキャリアをつなぐ支援をする」ことにあるからです。

1年が経って

ほぼ完全に受託開発からSESに切り替わりました。
リモートサービスとして働いている社員からは「よく眠れるようになった」という声も聞こえました。皆さん子供がいるだけあってタフに見えていましたが、やはり大変だったんだなと思います。
事業を切り替えて良かったと思います。
特に女性の多くは、出産や育児をきっかけに、社会から孤立したような感覚を持ちます。仕事に復帰しようと考えても、ブランクや子育ての時間によってエンジニアとしての復帰を諦める方がいます。当社の社員も多くがそうでした。
この事業ならさらに多くの子育てを理由に働くことができない人のキャリアをつなぐお手伝いができると期待しています。

株式会社シンプルメーカー
https://www.simplemaker.com/


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