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短編映画「私のいない世界」製作ノート

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「私のいない世界」製作ノート4

ひとり芝居をやったのより、さらに前の話。

私は自分の映画シナリオのト書きに、「間」と書いたことがありました。チェーホフの戯曲か何かで見かけて、なんとなく使ってみたのです。

それを読んだ有名な映画脚本家に、「映画のシナリオには『間』なんて書かねえんだよ」と言われました。

まったく仰るとおりで、普通なら「✕✕✕」で区切るか、動作の描写を入れるべきです。私もそれ以来、使っていません。

ただ、その

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「私のいない世界」製作ノート3

20年前(!)ひとり芝居の舞台を演出したのですが、そのとき気づいたことがあります。

当初考えていたより「間」が必要だということです。

そのときのひとり芝居は、見えない相手役を想定して演技するシーンが多いものでした。

そういう芝居では、相手の動作やセリフを受ける「間」をとらないと、観客はすぐに置き去りにされます。

ひとり芝居が「ひとり相撲」になるワケです。

わかってはいたのですが、いざやっ

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「私のいない世界」製作ノート2

もうひとつ考えたのは、「編集」のマジックを、改めて試してみたいということ。

以前から実感していたことがあります。

ごく平凡なインタビュー映像でも、インタビュアーの質問をカットすると、妙なおもしろさが出るということ。

もちろん、普通はやりません。説明不足になりますから。尺の問題などでそうするときは、質問内容をテロップで補います。

しかし、「説明」など気にせず、インタビュイーの受け答えだけつな

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「私のいない世界」製作ノート1

昔見たジャン・コクトーの短編「冷淡な美男子」に着想を得ました。

「冷淡な美男子」は、愛を乞う女と、それに一切反応せず、まるで彼女が存在しないかのように振る舞う「冷淡な美男子」の映画です。

ふたりはひとつの部屋、同じ画面に存在しながら、一切コミュニケーションをとらないので、見ようによってはふたつの「ひとり芝居」が重ね合わされているようにも見える映画です。

「私のいない世界」にも、はじめは一切し

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短編映画「私のいない世界」撮影台本

『私のいない世界』Ⅰ 撮影台本 2014年4月10日

※この短編映画は、「ある女のインタビュー映像」という体裁をとっています。

 「インタビュアー」の姿やセリフは、編集で一切カットされているという設定です。

 ですから、画面には女しか登場しません。カギカッコで示されるのは、すべて女のセリフです。

 「どうして女はインタビューを受けているのか」「インタビュアーは誰なのか」については謎です。

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短編映画「私のいない世界」

【出演】黒川鮎美 湯舟すぴか 小松杏 十川治美
【監督】一尾直樹