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光る君へ(17)さわセリフ改変の理由と女たちについて考えてみた・大河ドラマで学ぶ脚本テクニック

割引あり

大河ドラマ「光る君へ」が面白い。ということで、「「光る君へ」で学ぶ脚本テクニック」と題した動画を作っていくことにしました。動画といっても内容はスライドとテキストなので、noteにも載せていきます。今回は第17回の学びポイントです。
歴史の知識や「源氏物語」については一切触れませんので、予めご了承ください。


今回の学び

今回は、まひろ以外の女性の登場人物たちがじっくりと描かれた回でした。

これまで「男と男のドラマ」の背後に隠れていた「女と女のドラマ」が、これからいよいよ盛り上がるのではないか。そんな期待が膨らみます。

詳しく振り返っていきましょう。

女と女のドラマ

はじめてのファン・さわ

まずはさわです。
実はこれまで、このさわというキャラクターの役割が私にはよく分からなかったのですが、今回のエピソードで「なるほど!」と膝を打ちました。

さわはまひろの「初めてのファン」なんですね。

まひろに会うのを拒んでいた間、さわはまひろから来た手紙をすべて書き写していました。その理由を、さわはこう言います。

「まひろ様の文を写すことで まひろ様に追いつきたいと思っておりました」

印刷技術のない平安時代の「作家」は、書き写されることで作品が世に広まるわけですよね。

ですからさわは、紫式部の読者1号であり、はじめてのファンと言っていいと思います。

今後さわはまひろの書いた作品を一番先に読み、感想を言ったり批評したりするようになるのかもしれません。

さわセリフ改変の理由

ところで、前々回の第十五回で、さわのセリフが改変されていることに気づいた方も多いのではないでしょうか。

石山寺からの帰り、さわはまひろにこう言います。

「私には才気もなく 殿御を引き付けるほどの魅力もなく 家と低場所もなく… もう死んでしまいたい!」

この場面をよく見ると「魅力」のところが、役者さんの口の動きと合っていません。
口の動きからすると、そこは「見た目」と言っているように見えます。

つまり、撮影のときは「見た目」と言っていた演技を、アフレコで「魅力」に改変した可能性が高いと思います。

大河ドラマですから、役者さんの言い間違いに気づかなかったということは考えられません。
言葉遣いとしても、「才気」ときたら普通は「見た目」のほうがしっくり来ます。

ということは、元の脚本では「見た目」だったセリフを、編集段階で「魅力」に変えた、ということです。

私はこれを見たとき、いわゆる「ポリティカル・コレクトネス」が改変の理由かなと思っていました。

しかし、今回のさわを見て、さわのキャラにより統一感を出すための改変だったのではないかと、考えを改めました。

「才気」なら、文を書き写すことで少しは近づけるかもしれません。
しかし、「見た目」がコンプレックスでは そんなことをしても無駄です。

役者さんの口の動きにセリフの音声を合わせることを「リップシンク」と言いますが、それを無視してまで言葉を差し替えたのは、こういう理由があったのではないかと、今回のさわを見て考えました。

生き方のライバル・ききょう

さて、話は変わって、次はききょうです。
このセリフ、本当に面白いですよね。

「深い仲になったからといって 自分の女みたいに言わないで」

まるで一昔前のトレンディドラマのようなセリフをあえて言わせています。
でもこれ、脚本的にはまひろへの当てつけというか、まひろの生き方に対する強力なカウンターパンチですよね。

第14回の動画でまとめたように、ききょうの生き方はまひろと正反対です。

二人がスパークしたときには、きっととんでもないことが起こるハズですが、でもれは、まだ先のことでしょう。
それまでに、ききょうのライバルパワーがどれだけチャージされていくのか、本当に楽しみです。

嫁姑バトル

それから、一条帝の妻・定子と、母・詮子の「嫁姑バトル」も注目ですよね。

これまで詮子から一方的に「不機嫌攻撃」を受けていた定子が、今回はじめて反撃に出ました。
定子は兄・伊周に入れ知恵してこう言います。

「あの女院様から我が身を守り 帝をお守りしているうちに強くなりました」

一方兄道兼を推す詮子は、定子への嫌悪を隠しません。

「内裏に行くのは嫌 定子に首根っこつかまれているような帝 見たくないもの」

平安の嫁姑バトルがどう描かれていくのか注目です。

“心”バトル

そして何と言っても目が離せないのは、道長の二人の妻ですよね。

道長の心を巡るバトルは 勝者はまひろと決まっています。
それを知ったとき、二人の妻はどうするでしょうか。今回そのヒントが出されました。

「私は殿を信じております」

道長の秘密に気づいていながらこう言う倫子は、道長が家庭を守る限り、”心の中の女”は不問に付す、という様子ですね。

一方、怖いのは明子です。

「すっかりを持っていかれておるな」

明子は兄にそう言われますが、わざわざ「心」という言葉を使っていることに注目です。

心にこだわるとき、そこにドラマが生まれます。
明子はなんといっても、道長の父・兼家を「呪い殺した」女です。それどころか、そのせいで道長の子を流産してもいます。

恐ろしい想像しか浮かんでこないので、今後を予想するのはやめておきたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。

背景画像:
From The New York Public Library https://digitalcollections.nypl.org/items/510d47e3-fe62-a3d9-e040-e00a18064a99

動画

蛇足メモ

道隆の死に方について

「光る君へ」は、死ぬ場面の描写が実に見事だと思います。
兼家と道隆を比べると、次の3点の対比がキャラの違いを際立たせていました。

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