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PMFとは何か

PMFとは、事業開発の市場調査と仮説検証を支えるフレームワークです。事業開発の肝である仮説検証を抜けもれなく、最短で回すためのフレームワークとして有用です。

PMFとは?

PMF(Product Market Fit)は、プロダクトがマーケットにフィットするかを検証する手法です。

新規事業のアイデアに対するフィードバックを実際の市場から得ることで、事業アイデアの仮説を検証します。それにより、事業アイデアの実現可能性を検証します。

PMFは、事業アイデアの仮説検証のフレームワーク(手法)になります。

PMFのプロセスと検証項目

PMFは、4つの仮説検証プロセスで構成されます。

フィット検証

1.「ユーザー×問題」の仮説検証(User × Problem Fit)

1つ目の検証項目は、
・ユーザーが本当に自分たちが想定するような問題を抱えているのか?

つまり、「本当に市場ニーズがあるのか?」の確認です。

最も多いスタートアップの失敗理由は、「実は市場ニーズがなかった」であるとは有名な話です。これは、実際に事業開発を行なっている身として、肌感でも確かにそうだと感じるものです。

新しい事業を作っていくためには、見えない未来を強く信じて、突き進むしかありません。ただ、そうしていると、取り組んでいる内にどうしても視野が狭くなってしまうのです。

膨大な努力の果てに「実はニーズがありませんでした」は悲しすぎる結末です。そうならないために、自分たちが想定する「ユーザー」と「ユーザーが抱える問題(ニーズ)」が本当に存在するのか?を、まずユーザーにヒアリングして確認する必要があります。

「まず顧客に聞いてみる」

これが本当に大切。これができると、できないとでは、事業開発の成功率が大きく変わってきます。

これは意外と、(大企業では特に)当たり前になっていないと感じます。研究開発部門など、マーケットから遠い部門にいる人ほど顕著です。

まずは、当たり前をアップデートすることから始める必要があるかもしれません。

2.「問題×ソリューション」の検証(Problem × Solution Fit)

2つ目の検証項目は、
・「ユーザーが抱えている問題」に対してのソリューションがあっているか?

つまり、「そのソリューションで本当に問題が解決できるのか?」の確認です。

上記で課題を持つユーザーがいることまでは確かめられています。

その「課題」に対して、自分たちのソリューションが顧客に刺さるか(自分たちの提案を顧客が良いと思うのか)を確認することが重要です。

意外と他のソリューションがあって、そっちの方がよかったりします。また、自分達が考えるソリューションでは、もしかすると顧客の課題を解決できないかもしれません。

ヒアリングを通じて、ユーザーにソリューションが刺さるかどうかを確かめます。ソリューションが顧客に刺さるかどうか、はそのままプロポジションに繫がるため、非常に重要なチェック項目です。

よくある失敗例として、顧客へのインパクトの小ささがあります。

コストダウン提案の失敗例:競合製品比20%コストダウンの自社製品を提案。でも自社製品は、顧客製品のコスト構成比率の1%未満なので、インパクトが極めて小さい。その割に変更コストはかかる。だから、採用されない。
性能UP提案の失敗例:競合製品比20%性能UPの自社製品を提案。でもその性能を20%UPしたところで顧客製品にとって意味がない(顧客の製品のプロポジションにつながらない)。だから、採用されない。

実務上は、この検証項目での脱落率が非常に高くなります。問題とそのソリューションは、何度も何度も考え直して、仮説検証を繰り返すことになるので、非常にストレスが溜まります。しかし、この仮説検証を乗り越えるアイデアを見つけ出すことこそが、事業開発(ビジネスR&D)の価値であり、役割です。良いアイデアに辿り着くまで、気合いで粘り強く探し続けるしかありません。

ここを突破できれば、売れそうな光が、少しずつ見えてきます。

3.「ソリューション×プロダクト」の検証(Solution × Product Fit)

3つ目の検証項目は、「ソリューションを実現するプロダクトが作れるか?」の確認です。最低限のプロトタイプを用意し、プロダクトがソリューションを実現できることを確認します。

ソリューションの構想やアイデアは良いけれど、実際のプロダクトが最悪であれば、結局、ソリューションは成り立ちません。例えば、ソリューションとしてAmazonより早く届くECサイトを作ろうとして、1週間後にしか荷物が届かないオペレーションしか出来なければ、結局、思い描いたソリューションは実現できません。

ここでは、自社の技術力やビジネス領域がボトルネックになることが多いです。こんなのあったら良いな、と思ってもプロダクトが作れないのでは意味がありません。自社で(もしくはパートナーとの提携も含め)実現可能なのかを検証します。

最も重要なことは、プロダクトがソリューションを実現できることを検証するために、プロトタイプを作成することです。プロトタイプ作成とその検証にはそれなりの工数が必要になることが多いので、順番的には後述する「プロダクト×市場」を先に済ませてしまいます。

4.「プロダクト×市場」の検証(Product × Market Fit)

4つ目の検証項目は「プロダクトに市場性があること」の確認です。つまり、プロダクトが実現できた場合、「売れるかどうか」そして「どれだけ売れるのか」の確認です。見方によっては、「プロダクトが市場に受け入れられるか」の確認と捉えることもできます。

私は「③ソリューション×プロダクト」のフィット検証でプロトタイプ作成に取り掛かる前に、市場性を確認するようにしています。周辺マーケットの統計情報や成長分野か否か、などを総合的に判断して、この段階でプロトタイプを作って仮説検証する価値があるかどうか、を判断するためです。

この段階で精緻なマーケット予想値は不要。「市場性があるのか、ないのか。それはなぜか」というロジックを作れるか否かが重要になります。実務上は「市場性がある(将来的にその市場が大きく成長する)」と仮定してその未来に賭ける、という選択もあり得ます。

要は、仮説検証に工数を投入する価値を説明できるか、という観点から、まず先に市場性を確認します。大企業では、将来的に大きな事業になる絵を描けるのか、大きな事業へのきっかけになる得るのか、という"Vision"が、投資を得るために非常に重要になってくるので、ここでは、そうした要求も念頭に「市場性」について考えておきます。

実務でPMFを使いこなすためのコツ

PMFの4つの検証項目は、どれも事業アイデアの仮説検証には不可欠かつクリティカルな検証項目であるため、この4項目に沿って検証を進めていくことは、非常に有益です。

これらは大企業で社内説明するために、必ず聞かれる重要ポイントを押さえてあるため、自身のアイデアの防衛に大いに役立ちます。

①「ユーザー×問題」
②「問題×ソリューション」
③「ソリューション×プロダクト」
④「プロダクト×市場」

実際のフィット検証を行ってみると、①と②でグルグル回ってしまって、抜け出せなくなることが多くあります。

特に②の突破が非常に難しいと感じます。イライラが最高潮に達しますが、見えない暗闇の中でもがくのは避けて通れない道なので、ぜひ最高のアイデアに辿り着くまで頑張ってください。

ポイントとしては、あまり「競合」の存在を意識しすぎないことです。

「もう誰かが同じようなサービスをやっているから」という理由でアイデアを諦めがちなのですが、できればそれはしない方が良いです。

それよりも「顧客ニーズ」が存在することを確認することの方が遥かに大切で、ニーズさえ存在すれば何とかなることが多いです。

あとは、その市場に今後伸びる余地があるか、です。

ただし、あまりにも競争が激しい市場や、既に飽和仕切っていて参入余地が限られる市場は、特に大企業で提案するのであればお勧めしません。夢を描けない提案は、既存事業との比較で投資効果が小さいと判断されるため、社内で通らないからです。

検証項目は、必ずしも上から順番に潰していくのが良いとは思っていません。

①、②、④は、単独で市場調査と仮説検証が可能ですが、③は技術開発要素を含むため、社内の他部署を巻き込んでいく必要があります。

そのため、

・まず①と②でニーズの強さにあたりを付ける(売れそうか?の肌感を掴む)

・④でマーケットの成長性をざっくりと掴む(成長のVISIONが描けないアイデアはここで却下する)

・①、②、④の調査結果を元に周囲を巻き込み、③の検証のためのプロトタイプを作り、市場で検証する。

という流れが、実際の企業での実務では、使えると思います。

参考文献

スタートアップで起業する際のPMFとプレゼン項目について、この本で大半を学びました。実務に即した内容であるため、応用できる実務理論が多くある印象です。

ふとした時に見かえすために、手元に置いておきたい一冊です。


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