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【書評】営業 野村証券伝説の営業マンの「仮説思考」とノウハウのすべて(冨田和成)

仮説思考系の営業スタイルの本です。

仮説思考の営業スタイルには共感するところが多く、トップセールスの本質はココにあり、と思わざるを得ませんでした。

また、飛び込み営業の受付突破のテクニックについては、プロダクトや技術で勝負できない(人でしか差別化できない)ビジネスでは、ここまでやるんだと感心しました。

売れる営業の本質に近いと思われる、本書の4つのキーワードについて解説します。

仮説思考の営業(仮説思考力)

対面での営業が始まる前の準備段階でほぼ勝負はついているという話です。

情報収集とニーズの仮説構築が重要です。

対面での商談前に、顧客に関する情報収集からニーズ仮説を作ることが重要。商談ではニーズ仮説をぶつけることで、一気に深い話ができる(ビジネスにつながる)。

特に共感したのは、ニーズ仮説を事前に立てるメリットの話でした。

ニーズの仮説を事前に立てるメリットは、
・「こいつ、わかっているな」と信用されやすくなる
・ヒアリングの手間が軽減でき、課題にいち早く到達できる”

「こいつ、わかっているな」と思われることは、営業をしていると、話が進むか進まないかの分岐点であることが痛いほどわかります。

日本の方は優しい方が多いので、何となくでも話を聞いてもらえることが多いですが、それだけでは、それ以上、話が進む確率は低くなります。

最初にこちらから相手のメリットを提案すること(プロポジジョンの提示)、それが相手に刺さるのかどうかをヒアリングすること(仮説検証)のステップは、ビジネスR&Dそのものであると感じました。

営業プロセスの因数分解(因数分解力)

常に見込み顧客を開拓し続けるマーケティング的業務も重要だという話です。

面談やプレゼン、など目に見えて成果になる活動に注目しがちですが、リスト作成や見込み顧客の発掘などのマーケティング業務が、その成功率を高めると、主張されていました。

さらに、情報収集とニーズの仮説構築、見込み顧客管理、紹介、などの一見プロセスには入っていない業務も重要だと述べられています。

”確率の世界にすぎない営業は、こういった当たり前のことを当たり前にやり続けるだけでトップセールスになれる(もちろん、「やり続ければ」だが)。”

ベタベタな「営業」をプロセス分解し、確率論でコントロールしようというスタンスは非常に面白いと思いました。

確率論を超える「個性」が発揮できるのも、営業の面白いところではありますが、結果のためには確率論でコントロールするのが最も効率的です。

営業の因数分解

影響要因を数字で把握する(確率論的思考力)

KPIの設定の話です。

「営業は確率の世界だ」というのが筆者の主張です。そのために、各プロセスを量と質に分解し、KPI化して数字で把握し、分析するが重要とのことです。

特に、インサイドセールスに関する筆者のスタンスは非常に面白いものを感じました。

”インサイドセールスは情報収集や顧客管理といった補助的な仕事だけではなく、営業プロセスのどこに課題があって、どのように改善していけばいいか数字ベースで分析を行い、営業戦略を練っていくブレーンのような存在だ。”

生命保険会社プルデンシャルの営業は、こうしたサポートを本社から受けていると聞いたことがあります。

インサイドセールスを単なるマーケティングとセールスの橋渡し的存在だけにしてしまうのではなく、営業を分析サポートするような存在に位置付けることで、改善のプロセスをより効果的に回していける可能性を感じました。

KPI作成に役立つ各プロセスの量と質

確率を高め続けるトライ&エラー(PDCAを回し続ける力)

ボトルネックを探し出す作業を怠らないことが大切だという話です。

最も重要で最も難しいのは、PDCAを継続すること。改善し続けることです。

これは本当に共感できます。プロジェクト的に改善を行うことは、比較的容易にできる。だが、常に地道な改善を続けられる人は本当に少ない。営業のプロセスを一つずつ地道に改善していくことが、最強への唯一の道ということでしょう。

”ステップ1:ゴールを定量化する(KGIの設定)
ステップ2:現状とのギャップを洗い出す
ステップ3:ギャップを埋める課題を考える
ステップ4:課題を優先度づけして3つに絞る
ステップ5:各課題をKPI化する
ステップ6:KPIを達成する解決策を考える
ステップ7:解決策を優先度つけする”

KPI設定の前の準備段階として、最終的なゴール(KGI)を設定することで、全体感を持ってKPI設定に取り組めそうです。

感想

意外と言うのは失礼な話ですが、証券会社の営業で、精神論だけでなく、ここまで科学的に営業を考えて実行している方がいるのだと、強い感銘を受けました。

営業プロセスの分解、分析と改善、仮説構築と検証、など事業開発に通ずるものも多くあると感じました。また、プロセスを必要に応じて更に分解することの有用性を感じました。

本書では、さらにマーケティングプロセス、セールスプロセス内での具体的な思考テクニックとその改善事例について記載されています。

BtoBにも十分応用できる本質的な内容だと思いました。

参考書籍


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