見出し画像

【エッセイ】未完成のもの

こんばんは、一葉です。すっかり秋ですが、冬っていつからなんでしょう。(暦とかそういう観点ではなく雰囲気で)ハロウィンは秋ですかね?マフラーと手袋使用率が街に7割くらい存在しはじめてからですかね?今年は冬を感じる時を探してみたいと思います。

さて今日は、書き留めた冒頭文(台詞)…というよりも続きが書けなかった文章を8つ紹介します。終わりが見えなかったり、書き続けるのが苦しくなりそうになったら、パツッと終わらせるタイプでして。(恋愛もそうしたいところですけど、そこはいつまでも歯切れの悪い一葉です。)

-----

①フルートグラスから絶えず立ちのぼる気泡は上層で儚くはじけていく。表面に形成される泡の連なりはコルドン。フランス語で「ひも」を意味し、最高級のシャンパーニュにおいて用いられる。首元に揺れるTASAKIのネックレスに触れて、君の首飾りの様だと男は言った。その泡を見つめうっとりしている女の横で。

②不埒なシーンを目の当たりにすると、会いたい気持ちは薄れていく。もし、あの男が、私を振ったあの男だったらと想像すると可笑しくて笑ってしまう。あんなに会いたくて、会えない時間はあなたを思う時間で埋め尽くされていたのに。

③彼の記憶に濃く残っているのは、きっと寝言で言っていた「ナツ」のことで、もう冬だよって泣いた夜があった。手が触れて唇が重なり身体の一部が組み合わさったあの瞬間でさえ、彼の脳裏にはナツがいたなんて考えると、上書きが可能かどうか確かめられている検証実験のようで量産されたサンプル品のひとつみたいな気がした。

④知らない人から届いた最低と言う文字を飲み込むと喉の奥のところが乾ききって息ができなくなった。真実を知っていれば、偽りを鵜呑みにしていなければ、そんな言葉など浴びずにすんだのだろうか。

⑤別れるからと、信じた言葉が憎たらしい。新緑のきれいな季節に、家族で愉しそうにキャンプをする写真がネット上に散在した。彼によく似たその子に罪はない。幸せを蝕んでいるのは私の方だった。それでも私はすがってしまう、あなたの言葉に。言葉以外に何を信じたらいいのだろう。

⑥もらうなら、金平糖のような可愛らしさ。分けるならミルクピッチャーのような寄り添う気持ち。あげるなら、黒い七宝焼きのような安心感。

⑦待つと決めたら、探らない。そういう強い自分でいたいのに、弱いところばっかりが浮き彫りになった週末に辿り着いたのは、知りたくもないものばっかりで、余計に弱くなった自分に陽気なサザエさんが励ます形になった。ルルルと口ずさんでみたけれど。みたけれど。

⑧昔ここに来たことがあったなんて話はあまり聞きたくないの。きっとその当時、愛していた人と来ていたのでしょう?だからね、私はあなたのはじめての場所に行きたいの。だからもしね、来たことがあっても言わないでほしいの、はじめてのような顔、あなたにはできるかしら。

-----

文字数にすると100~150字程度。
一葉の描きたかった世界がどんなものなのか想像を巡ってもらえるだけでも嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?