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【プロット】第18話 点滴、落ちないでよ

映画『リバー、流れないでよ』が面白かったので、病院が舞台でもできないかなと思い、お酒飲みながら勝手にプロット書きました。しょーもなくてすみません。

【登場人物】

夢野枕子 看護師5年目、自身のキャリアや人生について悩んでおり、職場を辞めようかと思っている。周りからの仕事への評価はそこそこ高いのだが、自己肯定感が低い。

初台慎太郎 初期研修医2年目。内科ローテート中。点滴留置が苦手。

山岡恵美 枕子の後輩。看護師3年目。文句が多い。ライブ好き。

廣中綾 病棟看護主任。優しい。

段田仁 内科医長。初台の指導医。実力はあるが決断力に欠ける。

江下智樹 病棟薬剤師。お調子者だが意外に冷静。

処置室の患者 初台に点滴留置を失敗される。

301号の松井さん 持病の糖尿病が悪化して治療を受けている。

302号室の小野さん 蜂窩織炎で治療を受けている。

308号室の田代さん 肺炎で入院。家族の見守る中、息を引き取る。

田代さんの長男 しっかりしている。

田代さんの長女 ややヒステリック。

又吉さん 面会者

長谷川 枕子の婚約者

【リープ前 15時40分ごろから47分】

内科の混合病棟。ナースステーションでは看護師の夢野枕子と後輩の山岡、病棟薬剤師の江下が点滴や薬の準備をしている。忙しさを愚痴る山岡を看護主任の廣中がたしなめる。

301号室で枕子は松井さんの点滴交換に向かう。山岡は302号室で小野さんの点滴交換に向かう。

処置室では研修医の初台が患者に点滴ルートを取ろうとしている。経験が浅く、緊張しているのを患者に見透かされている。

308号室では肺炎の田代さんが急変し、家族と主治医の段田が見守っている。モニターでは今にも心拍が止まりそうである。

点滴交換を終えた枕子が病室を出ると、山岡が同じく隣室から出てきて鉢合わせる。山岡は小野さんのセクハラ発言に憤っていた。突然、枕子のスマホが振動し、宛先を見ると彼氏の長谷川からであった。山岡から逃げるように去り、看護控え室へ走る。

長谷川は先日のプロポーズの返事が聞きたいようだったが、仕事中だからと言って枕子は電話を切る。ポケットに忍ばせた退職願を見つめる。ふと、控え室に古びた懐中時計を見つける。誰のだろうと思いつつも、やり残した業務を思い出し、控え室を出る。

ナースステーションに戻ろうとする際、枕子は老人に声をかけられるが、急いでいたので窓口に声をかけるように言う。

枕子がナースステーションに戻ると、山岡がどこへ行ってたのかと枕子に詰問する。はぐらかしながら残りの点滴薬剤を作る。

処置室では初台がルート留置を失敗し、患者が大声で痛がっている。

ナースステーションの遠隔モニターのアラームが鳴る。308号のモニターが心停止を示している。廣中が田代さんのところね、と言い、枕子に向かうように指示する。

枕子が308号室に入ると、田代さんのモニターが心停止となり、段田が死亡確認、死亡時刻(15時46分)を告げる。家族が泣いて田代さんにのもとへ詰め寄る。そんな家族たちを枕子が複雑な表情で眺めている。

ある病室の点滴がポタポタと落ちるシーンで舞台は暗転する。

【タイムリープ1回目】

枕子は看護控え室にいる。事態が飲み込めない枕子は控え室を出ると、ナースステーションに向かう。途中で老人に声をかけられるが、気づかない。

ナースステーションでは同じように戸惑う山岡や廣中がいる。廣中が冷静に各病室を見て回るように伝える。枕子は301号室から順に患者を確認する。

301号室では松井さんがテレビを見ている。なんだかこのシーン、さっき見たような気がすると言っている。

302号室の小野さんはベッドで眠っている。

処置室の前を通るとルート留置を失敗された患者が大声で痛がっている。

処置室に入ろうとするとナースステーションでアラームが鳴る。308号室の田代さんのものだった。308号室のドアを開けると、事態が飲み込めない段田と家族がいる。段田が死亡時刻を宣告すると、田代さんの孫が、おじいちゃん、また死んじゃったの?と言う。

ある病室の点滴がポタポタと落ちるシーンで舞台は暗転する。

【タイムリープ2回目】

看護控え室を出た枕子はナースステーションへ向かう。老人の声掛けには気づかない。薬剤師の江下が、どうやらタイムリープしているらしいことを皆に告げる。半信半疑の中、皆が顔を見合わせていると処置室から叫び声が聞こえる。

枕子と廣中が処置室に行くと、点滴留置に(3回も)失敗された患者が初台に食ってかかっている。枕子は患者をなだめながらタイムリープが起こっていることを説明する。どうせ時間が戻るんならいま点滴をとる意味がないじゃないかと憤る患者を前に、初台が土下座してもういちどチャレンジさせて欲しい旨を伝える。私からもお願いしますとなぜか廣中も頭を下げるので、納得いかない様子の患者。ナースステーションのアラームが鳴ったので枕子は処置室を出て308号室へ向かう。

308号室の前では江下と段田が廊下で話し込んでいる。江下がタイムリープしていることを段田に伝えている。段田はこれから何度俺は死亡宣告をしなければならないのかと嘆いている。病室の中でおとうさーんと叫び泣いている田代さんの長女の声が聞こえる。

ある病室の点滴がポタポタと落ちるシーンで舞台は暗転する。

【タイムリープ3回目】

看護控え室からでた枕子はナースステーションへ向かう。老人の声掛けには気づかない。

ナースステーションでは、廣中が、枕子と山岡に患者全員に今の事態を伝えて安心させるようにと指示する。

枕子は301号室から順に患者を訪ねる。松井さんはテレビを見ている。302号室の小野さんは眠っている。303号室で将棋をしている二人組は、時間が戻るせいで勝負にならないと嘆いている。

廊下から処置室の叫び声が聞こえる。初台がまた失敗したと気づいて枕子はうんざりする。

308号室に入ると、憔悴した段田と田代さんの家族がいる。田代さんの長男が、いま、親父は生きてるんですかね?死んでるんですかね?と質問する。段田は、今は‥生きてますが‥と答えた瞬間にモニターのアラームが鳴り、あ、今、お亡くなりになりました、と伝える。長男がやり場のない怒りをぶつけるべく、段田の胸ぐらを掴む。それを抑えようとする家族と枕子。

ある病室の点滴がポタポタと落ちるシーンで舞台は暗転する。

【タイムリープ4回目】

控え室を出た枕子はナースステーションへ向かう。老人の声掛けには気づかない。処置室で患者の叫び声が聞こえ、もう一度だけチャンスをと叫ぶ初台の声が聞こえる。ちょっと疲れてきた枕子はナースステーションの椅子に腰を下ろす。江下が、このタイムリープには何か意味があるんだろうか、と呟く。もしかしたら、初台の点滴が成功すれば時が動くのではないか、と枕子は思いつき、廣中に伝える。308号室のアラームが鳴る。

ある病室の点滴がポタポタと落ちるシーンで舞台は暗転する。

【タイムリープ5回目】

枕子はナースステーションへ向かう。老人の声掛けには気づかない。

ナースステーションの廣中と江下に声をかけ、処置室へ向かう。処置室にはまさに穿刺しようとしている初台がいる。それを止めて、まず、血管を潤わせるために患者に500mlの水を一気飲みさせる(医学的にはたぶん意味ありません)。そして、点滴留置のプロである廣中が患者の血管を吟味し、マジックで印をつける。枕子と江下と患者が応援する中、初台がついに点滴留置を決める。喜んで抱き合うスタッフたち。

ある病室の点滴がポタポタと落ちるシーンで舞台は暗転する。

【タイムリープ6回目】

タイムリープし、控え室の枕子は仮説が間違えていたことに絶句する。ナースステーションへ向かう。老人に声をかけられるが、生返事をして無視してしまう。

ナースステーションでは同じように戸惑う廣中や江下がいる。処置室から、「やった!ひとりでもできたぞ!」と叫ぶ初台の声と「やればできるじゃねえか、兄ちゃん」という患者の声が聞こえる。

308号室の様子を見に行こうと枕子が廊下に出ると、田代さんの長男が立っていた。声をかけると、少し息抜きをしたいから出てきたと。父親は大往生だったと思うが、最後に親友の又吉さんに合わせてやりたかった、連絡したがどうも面会に間に合わなかったようだ、と言う。それを聞いて、枕子は声をかけてきた老人について思い出す。

ある病室の点滴がポタポタと落ちるシーンで舞台は暗転する。

【タイムリープ7回目】

枕子は控え室を出ると、そばにいた老人に声をかける。又吉さんですか?と聞くと、そうだ、と答える。又吉老人は危篤状態の親友の田代さんに会うために病棟へ来たが、誰にも声をかけられずにタイムリープして困っているのだった。

枕子は又吉の腕を掴むと308号室へ向かう。途中、処置室から「二連続成功!ついに点滴留置の極意を掴んだ!」と叫ぶ初台の声が聞こえる。

308号室に入る枕子と又吉。家族が又吉の登場に驚いている。又吉はベッドに伏せる田代さんに声をかける。その瞬間、田代さんは目を開け、又吉さんの方を確かに見たのだった。涙を流す田代さんの長男。その直後、田代さんは目を閉じ、アラームが心停止を告げた。

ある病室の点滴がポタポタと落ちるシーンで舞台は暗転する。

【タイムリープ8回目】

控え室を出た枕子は又吉に308号室にです!と叫ぶ。又吉は308号室へ駆けていく。その背中を追いながら、枕子は処置室に向かう。

処置室では余裕の初台が患者と談笑している。次はどの血管にしますか?などと話している。あきれた枕子は処置室を出る。

ナースステーションにもどった枕子は江下に声をかける。もうこの2分間でやることがなくなったので、手持ち無沙汰だと言う江下。ふと、処置台の上に、15時に投与したはずの小野さんの抗生剤が置かれていることに江下が気づく。枕子が隣にいる山岡に確認すると、確かに15時に小野さんに点滴を繋いだと言う。妙な胸騒ぎがした枕子は302号室の小野さんのもとへ向かう。308号室の田代さんの死を告げるアラームが鳴る。

302号室の小野さんは眠っていた。点滴につながっていた薬材のラベルをみて枕子は驚愕する。そして小野さんを揺り起こそうとするが小野さんは目を覚さない。混乱する枕子。

小野さんにつながっている点滴がポタポタと落ちるシーンで舞台は暗転する。

【タイムリープ9回目】

控え室を出た枕子は処置室にいる初台を強引に外へ出し、ナースステーションから点滴カートとブドウ糖を探し出すと、初台を引っ張って302号室へ向かった。訳がわからない廣中たちが後を追い、事態を尋ねると、枕子が走りながら説明する。小野さんの点滴につながっているのは、抗生剤ではなく、松井さんにつなげられるはずだったインスリンなのだった(山岡が誤ってつなげてしまった)。

小野さんのベッドに到着し、枕子が小野さんを揺り起こすが意識がない。山岡に点滴を抜去するように声をかけ、青ざめた山岡が点滴を抜く。廣中が血糖を測定すると感度以下の低血糖を示していた。続いて初台に、ブドウ糖を静注するための点滴を今すぐ取るように指示する。初台は少し戸惑うも、自信をつけたその腕で迅速に点滴ルートを確保する。枕子がそこからブドウ糖を静注する。308号室のアラームが鳴る。

しばらくすると、小野さんがゆっくりと目を覚まし、何かあったのか?と皆に聞く。皆が一様に安堵する。枕子はその場でへたりこんだ。

小野さんの抜去されたインスリンの点滴はもう滴下していない。

【エピローグ】

廊下で枕子、廣中、段田が話している。小野さんは対応が早かったので低血糖の後遺症が出る可能性が低いであろうこと、それにしても医療安全委員会が動き出す大きな事故であること。そして段田は迅速な対応をした枕子に感謝の意を述べた。

枕子は控え室に戻ると、婚約者の長谷川へメールをした。今度、きちんと返事をする、と。そしてポケットに入れていた退職願を破ると、ゴミ箱に捨てた。ゴミ箱には、表面のガラスが割れた、先ほどの懐中時計が捨ててあった。

(了)


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