松田悠士郎

アマチュア小説家。クローン病(特定疾患)患者。

松田悠士郎

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最近の記事

「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#6

 同僚のウェイトレスによれば、MOMOちゃんはここ一ヶ月程の間、いたずら電話やつきまとい等の被害に遭っているとこぼしていたらしい。一度事務所に相談するとも言っていた様だが、あのジャーマネからはそんな事はひと言も聞いていない。相談してないのか、はたまた面倒を嫌ったのか、そもそも相談してないのか?  考えを巡らせながら、ワタシは美味くないコーヒーを飲んで更に質問した。 「ここに来てた客で、桃子ちゃんを贔屓にしてた人とか居た?」 「そりゃ居ましたよ、でもお客様の事いちいち詮索しちゃ

    • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#5

       ワタシはまず、MOMOちゃんがアルバイトをしていると言うカフェへ向かった。藤村から送られたファックスによれば、淡谷の中心街から少し離れた場所に在るらしい。ワタシは取り敢えず、コインパーキングにバンデン・プラを停め、記載された住所を頼りにカフェを探した。  目当てのカフェ『Cafe Peaberry』は、有名百貨店から徒歩数分の所に在った。外装は薄いピンク色で統一されていたので、ワタシは少々場違いな感じを覚えつつ木製の扉を引いた。すると、扉の内側に取り付けられたパイプ式のドア

      • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#4

         藤村がひと口しか飲まなかったコーヒーを、ワタシは断腸の思いで給湯室へ運び、神妙な面持ちで流しへ送り込んだ。迷わず成仏してください、アーメン。  カップを簡単に洗って給湯室を出たワタシは、自分のカップを取り上げて二杯目のコーヒーをじっくり堪能しつつ、壁に掛けた時計を見上げた。午前十一時過ぎか。起き抜けに藤村の襲撃を食らったので忘れていたが、目を覚ましてからコーヒーしか腹に入れていなかった事を思い出して急に空腹に見舞われた。ワタシは二杯目のコーヒーを飲み干してカップを片付け、デ

        • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#3

           一瞬、冗談抜きに果物の桃かと思ったが、芸能プロダクションの社員が『ウチのモモ』なんて言うくらいだから、まぁ間違いなく人間だろうと思い直し、ワタシは軽く咳払いしてから質問した。 「そのモモっちゅうのは、お宅の所のタレントか何か?」 「あ、はい。その通りでして」  肯定した藤村が、トートバッグからファイルを抜き出してテーブルの上で開いた。現れたのは十代後半から二十代前半くらいの女性が凄まじい営業スマイルで写ったバストアップの写真と、簡易なパーソナルデータと自己PRが記載された所

        「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#6

          「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#2

           肩をすくめて振り返ったワタシの腰の辺りに、髪を鳥の巣の如く乱した中年男性が、眉毛を八の字にして縋りついて来た。濃い色のスーツを着ているが、その風貌からは何処となく貧乏臭い雰囲気が立ち上っていた。ワタシはジャケットを掴む男性の手を振りほどきながら尋ねた。 「アンタ、どちら様? 何でワタシが探偵だって知ってんの?」  男性は離した両手をリノリウムの床に着いて土下座の様な姿勢を取りながら、妙に潤んだ目でワタシを見上げて答えた。 「それは、さっき貴方にババ抜きで勝った娘が『探偵さん

          「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#2

          「その男、ジョーカー」EPISODE 1『卒業』#1

           ワタシは今、崖っぷちに立たされている。  目の前には、裏側をこちらに向けた二枚のトランプカードが掲げられ、その奥には狡猾そうな笑みを浮かべながら、やや下瞼の上がった目でワタシを見つめる若い女の顔がある。そこから視覚を下へパンすれば、ラメが散りばめられたドレスに包まれた、目の覚める様な巨乳がテーブルに鎮座している。その胸の前には五十枚のトランプカードが山と積まれていた。五十足す二で五十二。トランプの枚数としては一応合ってはいる。だが、この場にはもう一枚カードが存在する。それこ

          「その男、ジョーカー」EPISODE 1『卒業』#1

          番外編 ビジュアルイメージ大全その2

           どうも、松田悠士郎です。  今回は、「その男、ジョーカー」関連の記事はお休みして、以前にも書いた拙作登場人物のビジュアルイメージを披瀝する回とします。まずは小説投稿サイト『エブリスタ』にて不定期連載中のボクシング小説「絶対王者ができるまで」に登場するキャラクターのビジュアルイメージを詳らかにします。  長谷部利伸(プロボクサー志望の高校生)→古尾谷雅人さん  三枝昇(『大森ボクシングジム』トレーナー)→蟹江敬三さん  友永祐次(『大森ボクシングジム』所属プロボクサー)→内

          番外編 ビジュアルイメージ大全その2

          「その男、ジョーカー」第一話のゲストキャラクターを考える②

           どうも、松田悠士郎です。  前回に引き続き、このnote上で連載予定のハートボイルド小説「その男、ジョーカー」第一話に登場するゲストキャラクターを創造します。  一話の軸になる姫宮桃子が所謂「地下アイドル」なのは前回までに書いた通りです。さて、アイドルに限らず人前で何かを披露する「エンターテイナー」と呼ばれる人達に付きものなのが、 『ファン』  です。  と言う事で、桃子にもファンは付いていた筈だと決めて、キャラクターを考えます。  本来ならこういう場合、平凡な日常を送

          「その男、ジョーカー」第一話のゲストキャラクターを考える②

          「その男、ジョーカー」第一話のゲストキャラクターを考える①

           どうも、松田悠士郎です。  前回から、このnote上で連載する予定のハートボイルド小説「その男、ジョーカー」の記念すべき第一話の内容を考え始めた訳ですが、今回からはその第一話に登場するゲストキャラクターを作る作業に入ります。  前回書いた通り、椿桃子は夫の大悟と結婚する前はアイドル歌手でした。と言っても大ヒット曲がある訳でもなく、メディアへの露出が多い訳でもない、即ち「地下アイドル」と呼ばれるカテゴリーに属する存在でした。桃子が歌手活動をしていた時の芸名は『姫宮桃子』です

          「その男、ジョーカー」第一話のゲストキャラクターを考える①

          「その男、ジョーカー」第一話のあらすじを考える

           どうも、松田悠士郎です。  前回は若干脱線しましたが、今回から「その男、ジョーカー」の話に戻ります。  これまで、主人公である私立探偵青天目譲の周辺を固める作業を行って来ましたが、いよいよ本編のストーリーに関わる作業に入ります。  この企画は大分前から(それこそ「こぶし探偵ともちん」執筆時から)考えていましたが、その時点で最初に扱うエピソードも決めていました。そのエピソードとはズバリ、 『椿大悟と桃子の馴れ初め』  です。  椿大悟は既に紹介済の、『JOE 探偵事務

          「その男、ジョーカー」第一話のあらすじを考える

          番外編 ビジュアルイメージ大全(言い過ぎ)

           どうも、松田悠士郎です。  前回までで、このnote上に載せる予定の一人称形式ハートボイルド小説「その男、ジョーカー」の周辺設定を考えて来ました。その過程で、それぞれのキャラクターのビジュアルイメージを提示しました。  この作業、実は結構前から行っていて、私が小説のストーリーやエピソードを考える際の一助になっています。なので今回は、「その男、ジョーカー」関連の作業を一旦休み、私の過去作品の登場人物のビジュアルイメージを紹介します。皆様が私の小説を読む際のイマジネーションの助

          番外編 ビジュアルイメージ大全(言い過ぎ)

          「その男、ジョーカー」周辺設定まとめ

           どうも、松田悠士郎です。  前回までで、「その男、ジョーカー」の主人公である青天目譲の周囲を固めるキャラクターの設定が出揃ったので、ここにまとめて記載します。 ①『喫茶 カメリア』マスター 椿大悟(男性、38歳)ビジュアルイメージ:草野大悟さん ②『レストラン&バー WINDY』店主 風間荘助(男性、41歳)ビジュアルイメージ:藤竜也さん ③『キャバクラ HONEY FLASH』コンパニオン マリア(女性、22歳)ビジュアルイメージ:マギーさん ④『キャバクラ HONEY

          「その男、ジョーカー」周辺設定まとめ

          「その男、ジョーカー」の周辺設定を作る⑦

           どうも、松田悠士郎です。  今回は、先ず前回作り始めた情報屋の設定を更に考えます。  主人公の私立探偵青天目譲が、かつて刑事だった頃から付き合いがある情報屋で、表向きには古本屋を経営、ビジュアルは松重豊さん、という所までできました。  さて、この男が何故情報屋になったかを考えます。  ありきたりなのは、反社会的勢力に所属、または仕事上の関係を持っているという設定ですが、ここはひとつ外して考えます。そこで思いついたのが、 『元新聞記者』  です。  新聞、それも社会部辺り

          「その男、ジョーカー」の周辺設定を作る⑦

          「その男、ジョーカー」の周辺設定について⑥

           どうも、松田悠士郎です。  今回からは、「その男、ジョーカー」の主人公である青天目譲をサポートする仲間を考えます。  今作でオマージュを捧げるテレビドラマ「探偵物語」には、主人公の工藤俊作(演:松田優作さん)を取り巻く仲間が何人も登場します。思いつくまま列挙しますと、イレズミ者(演:初代→野瀬哲男さん、2代目→前田哲朗さん)、ダンディー(演:重松収さん)、骨董屋のイイヅカ(演:清水宏さん)、ポン引きのサブロー(演:庄司三郎さん)、故買屋の山崎(演:榎木兵衛さん)、風俗嬢の

          「その男、ジョーカー」の周辺設定について⑥

          「その男、ジョーカー」の周辺設定について⑤

           どうも、松田悠士郎です。  今回は、前回作った刑事とバディを組む刑事の設定を考えます。  前回も書いた様に、探偵と相対する刑事は大抵ふたりひと組です。「探偵物語」の服部(演:成田三樹夫さん)には松本(演:山西道広さん)が、「私立探偵濱マイク」の大坪(演:石橋蓮司さん)には小坪(演:森下能幸さん)がそれぞれバディとして付いています。なので、「その男、ジョーカー」に登場する刑事もバディにします。  元のイメージから、基本的には譲の事を快く思っておらず、何かと言うと噛みついて

          「その男、ジョーカー」の周辺設定について⑤

          「その男、ジョーカー」の周辺設定について④

           どうも、松田悠士郎です。  前回までで、4人のサブキャラクターについて言及しました(内ふたりは「こぶし探偵ともちん」と共通)。  ここまで来て、決定的に足りないキャラクターが居ます。それが、 「探偵を目の敵にする刑事」  です。勿論このキャラクターのモチーフは、「探偵物語」レギュラーの服部刑事(演:成田三樹夫さん)と松本刑事(演:山西道広さん)です。しかし、松本刑事的キャラクターは既に「こぶし探偵ともちん」に松木直道刑事として登場しているのでここでは使えません。かと言っ

          「その男、ジョーカー」の周辺設定について④