見出し画像

魅惑のテルグ映画 ラーナー・ダッグバーティー特集(2019年6月29日〔土〕開催) Rana Special Shows by Indoeiga/ Saturday June 29th, 2019

インド映画において、悪役の存在は物語の完成度をも左右する。伝説のヒンディー映画『Sholay(炎)』(1975)でアムジャッド・カーンが演じた悪役ガッバル・スィンは、半周回ってヒーローとして慕われている。主役を演じたアミターブ・バッチャンも「ガッバル・スィンを演じたかった」と答えているほどだ。『バーフバリ』での悪役バラーラーデーヴァーも、ヒーロー性を湛えた存在だった。演じたラーナーの鬼気迫る演技は、多くの観客の脳裏に刻み込まれたはずだ。

今年から始まった「魅惑のテルグ」企画において、ラーナー・ダッグバーティー主演作2本が6月29日(土)に上映される(主催:インドエイガ)。上映作品1本目『Krishnam Vande Jagadgurum(意訳:宇宙の創造神、クリシュナ)』は、悪徳な開発を進める権力者に戦いを挑む、ヒンドゥー神話がストーリーに昇華した勧善懲悪ドラマ。2本目の『Nene Rahu Nene Mantri(意訳:我は王、我は首相)』は『バーフバリ』での悪役経験を生かしたダークヒーロー譚。過去2回のプラバース特集ではラブコメ、アクションジャンルの作品が中心だったが、今回は、神話に着想を得たドラマと政治スリラーの二本立て。そのどちらもが、ラーナーのファンでなくても十分に見応えがある作品であることは記しておきたい。

[開催日時]

2019年6月29日(土)

[会場]

SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 4階映像ホール

http://www.skipcity.jp/visit/access/

※会場を借りた自主上映のため、入口に看板や案内は掲示されません。入口を通り奥の建物の4階映像ホールを目指してください。

[主催]
▼インドエイガ
http://indoeiga.com

▼「魅惑のテルグ映画」による案内はこちら

https://note.mu/miwaku_telugu/n/nc093c45145e2

[料金]

1作品 事前予約:2,200円/当日券2,400円
(お弁当、スナックは別料金)

▼申し込みフォーム

http://indoeiga.com/Booking.htm

※2作品ともに英語字幕付きでの上映を予定。日本語の解説シートも配布される予定(セブンイレブンで印刷料金を負担して利用者が印刷するシステムでの配布)。

[タイムテーブル]

■ランチ(インド料理のお弁当): 11時30時ごろから
一つ800円。映画鑑賞料金には含まれません。

■チケット販売開始:12時ごろから
-Movie 1 (Krishnam Vande Jagadgurum) 12時30分上映開始
-Movie 2 (Nene Raju Nene Mantri)16時上映開始
※休憩時にサモーサーなど軽食あり(500円)
※時間がずれることがありますので、予めご了承ください。

[作品紹介]1作品目:Krishnam Vande Jagadgurum(意訳:宇宙の創造神、クリシュナ/2012)

▼予告編
https://youtu.be/Gbv6mDaV_UE

Director: Radha Krishna Jagarlamudi
ジャンル:ドラマ、アクション
共演:ナヤンターラ、Kota Srinivasa Rao, Milind Gunaji, Murali Sharma, Raghubabu, Satyam Rajesh, Ravi Prakash, Posani Krishna Murali, LB Sriram, Hema, Annapurna
コメディ担当 ブラフマーナンダム
音楽:Mani Sharma
上映時間:2時間15分(途中休憩あり)

亡き祖父の夢を叶えるため、バーブは神の化身となる

■あらすじ
不法な掘削を進めるために、森林を焼き払い住民を立ち退かせる悪徳実業家、レッダッパ。恐れを知らぬジャーナリスト、ディーヴィカ(ナヤンターラ)は、土地を追われた人々の訴えに耳を傾け、レッダッパの悪事を取材する。一方、劇団の座長だった亡き祖父の遺志を叶えたいと、アメリカでエンジニアとして働く夢を持つB・テック・バーブ(ラーナー・ダッグバーティー)は、クリシュナ神を讃える演劇の上演のため一族の故郷であるベッラーリ村を訪れる。そこはディーヴィカが命がけで不法掘削の取材を続ける村だった。バーブらは悪の実業家、レッダッパと村人との対立に巻き込まれる。そして、バーブの劇団を訪れた老婆との出会いから、彼が孤児となった過去が明かされる。獅子神ナラシンハーのごとく、バーブの心に復讐の炎が燃え上がるー。

■見どころ
テルグ映画を起点とし、北上してヒンディー映画でアクシャイ・クマール主演のヒンディー映画『Gabbar Singh』もヒットさせ、最近では役者から政治家に転じたテルグの大スター、NTRの伝記映画を撮ったクリッシュ監督作品。2012年11月の公開時は高い評価を受け、国内外で大ヒットした。

本作は実在の劇団、スラビ・シアターをモデルにしたストーリーで、テーマはテルグ映画の本流でもある神話と勧善懲悪。ラーナー・ダッグバーティは恵まれた長身を生かし、神の化身かと見紛うアクションで悪をなぎ倒す。テルグ映画あるあるの超人的なアクションだが、本作を見れば、その超人的アクションはむしろ神の化身であるヒーローが神通力を使い悪を倒す手段として使われていることが分かる。ラーナー・ダッグバーティーまだ若かりし頃の作品ながら、劇中劇の長ゼリフまわしひとつ見ても、彼の役者としての力量を感じられる。ヒロインは、タミル映画を中心に活躍する演技派ナヤンターラ。ラーナーとナヤンターラはその年の南印国際映画賞(SIIMA)で、それぞれ批評家が選ぶベスト俳優賞を受賞。俳優としてのラーナーの成長を刻んだ作品でもある。

■トリヴィア
人間にも獣にも、そして何時も殺されない体を得た魔王ヒラニヤカシプを、隠れていた柱の中から飛び出し退治した半獅子神のナラシンハ(ヌリシンハ)と、冠に孔雀の羽を戴き横笛を手にし、多くの悪を誅したクリシュナ(黒の意)のエピソードの予習をおすすめ。

劇中のソング&ダンスシーンで本筋に関係なく踊り子として登場する(=アイテム出演)のは、サミーラ・レッディー(Ashoka)と、ヘイゼル・キーチ(現在は俳優をほぼ引退し、クリケットスターの妻)。ラーナーの伯父上、ヴェンカテーシュもカメオ出演。

[作品紹介]2作品目:Nene Raju Nene Mantri (意訳:我は王、我は首相/2017)

▼予告編
https://youtu.be/0WVqKbGN3RI

Director: Teja
出演:カージャル・アグルワール、キャスリーン・テレーザ、ナヴディープ、Ashutosh Rana, Posani Krishna Murali, Jaya Prakash Reddy, Raghu Karumanchi, Bittiri Sathi, Prabhas Srinu, Sivaji Raja, Josh Ravi
ジャンル:政治ドラマ、スリラー
音楽:Anoop Rubens

我が存在は妻のため。王になろうと男は権力を追い続ける

■あらすじ
幼い頃から常に一緒に過ごし、結婚後も幸せな日々を送るジョーゲンドラとラーダー。待望の子を授かり、無事な出産を祈るため二人は寺院に参拝する。ラーダーが聖なるランプに火を灯した時、嫉妬した村の権力者の妻にハシゴを外され、ラーダーは流産してしまう。失意の底に落ちたジョーゲンドラは権力者の家を訪れ、彼の選挙運動に加わりたいと嘆願する。これは復讐の始まりだった。

■見どころ
『バーフバリ』以降、最初の出演作となった本作は2017年8月に公開され、公開初週で30カロールのヒットを記録。ラーナーが演じるのは、妻を愛するあまりに村の権力者への復讐を画策し、権力を得ようと私欲がエスカレートしていくジョーゲンドラ。高みに上るにつれ彼は追い込まれる。そしてテレビジャーナリストのディーヴィカーとの関係から、ラーダーとの間に溝が生まれ、ジョーゲンドラは徐々に崩壊していく。そんな難しい役をうまく演じきれたのは、バーフバリでの役作りでの経験が役立っているのだろう。

物語の中で耳を銃弾で負傷したジョーゲンドラは、欠損を隠すため金のアクセサリーを着ける。ユニークなファッション性も持ち合わせた役作りもラーナー・ダッグバーティーの魅力だろう。共演は、妻役に南印トップ女優の一人、カージャル・アーグルワール、女性ジャーナリスト役にキャスリーン・テレーザ、テルグ映画でおなじみのナヴディープが主人公の鉄砲玉役。コメディー担当はテルグ映画界のベテランコメディアン、ブラフマーナンダムという豪華キャスト。音楽は、アヌープ・ルーベンス。

* * *

ラーナー・ダッグバーティー、役者としての存在感

プロデューサーとして映画界に入り、主役俳優として『Leader』(2010)でのデビュー以来、テルグのみならずヒンディー、タミル映画にも活動の場を広げるラーナー・ダッグバーティー。役者としての個性よりも興収が重要視されるインドの映画業界では、トップ俳優は幅広い年齢層の観客を取り込める娯楽作品への出演を期待視されるが、ラーナーは敢えてスター街道を選ばず、独自の路線を歩んでいるようにみえる。今回上映される二作品を観れば、彼が役者として丁寧に出演作を選び、自身のイメージを作り上げようとしていることをうかがえるだろう。『バーフバリ』のドラマの深さは、ラーナーが演じた鬼気迫る悪役、バッラーラーデーヴァーの憎々しい存在があったからこそ、観客がマヘンドラに感情移入でき、悪が倒されたときの爽快感が昇華した。ヒーロー足り得る容姿だけでなく、競合なき個性を持つ俳優として、ラーナー・ダッグバーティーの魅力ある存在を感じ取れるプログラム構成になっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?