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【医療システム業界】クリニック向け医療ITの今後の可能性について(診療所向けレセコン/電子カルテ/市場状況と有力ベンダー実名で)

初めての投稿です。

私は医療システムを提供する立場でここ数年は活動しており、これまで戦略・プロダクト開発・企画・導入・サポートを担当してきました。

今後医療システムを提供するにあたっての市場情報・現場でのニーズをまとめていこうと考えます。
ソースとしてはヘルスケア・医療業界で私が得てきた知識と有力ベンダー情報については調査会社・◯◯経済社などから15万円〜20万円で購入した市場データ資料を読んだ上での知見も織り交ぜつつ私の考察として記載します。


診療所(クリニック)におけるシステム:医療ITの中核は?

◯レセコン

医師の診療について国が定める診療報酬に基づき、点数を計算し、患者様固有の保険情報も加味した上で患者様へ請求すべき金額を算出する。いわばスーパーのレジのようなもの。
また、医療機関が売上として手にする診療報酬を申請するための元データを作成するためのもの。
提供メーカーも有力者は数社で分けあっており、寡占状態である。中では中立的立ち位置の日本医師会ORCA管理機構が市場シェアの3割以上程度を持っていると想定される。
社会保険審査機関への申請自体はデジタルで申請をするが、ここのツールの市場普及率は99%を超えている。

◯電子カルテ

いわゆる「診療録」であり、医師が患者様の症状や各種客観的情報をもとに診断、今後の診療方針を記載するもの。
先述のレセコンと深く関わり、医師の診察に基づいた診療行為をレセコンに連携して正しく点数計算ができるか、が(医療機関側からすると)かなり気掛かりなポイントである。が、しかし思ったようにうまくいかない。
それは抜け漏れもあるが、先述の審査機関側は随時変わる診療報酬改定や担当者による目視確認の際の”クセ”により取れるはずの点数が取れたり取れなかったりする。
それ以外の機能としては検査結果や撮影画像サーバとの連携でレントゲン写真などを起動する形で表示する、今では患者様が予約し問診をWEBで記載することも当たり前となっておりこれを搭載するカルテも増えている。

また政府主導で進められている医療DXにおいてレセコンの標準化、電子カルテの標準化が含まれています。

今回の提言では、厚生労働省が主導して、官民協力により低価格で安全なHL7FHIR準拠の標準クラウドベースの電子カルテを開発し、この「標準型電子カルテ」の導入を進める補助金などの施策を検討することが謳われており、2026年までに80%、2030年までに100%とする目標が掲げられ、「以下4点についても検討する」とされました。

1.閲覧権限を設定する機能や閲覧者を患者自身が確認できる機能の実装
2.診療を支援し、作業を軽減する機能の実装
3.検査会社との情報連携の方法を決めること
4.介護事業所などにも医師が許可した電子カルテ情報について共有できるようにする

これらは既に進んでいるオンライン資格確認や電子処方箋の文脈にも大きく関わるのでそれらの推進の意図や実績などもウォッチする必要があります。

◯政府系システムと、現場の医療機器に繋がるシステムとの絡み

上記に書いたオン資や電子処方箋、マイナンバーを使った6情報の利用/患者閲覧の流れ、保険証の廃止計画、医療機器との連携など官民双方の連携が求められ、そしてその中心にいる辛い立場にもあります。
また、古くからの医療機器メーカーさんや予約などのシステムメーカーさんはやりとりの方式、というか現場でtxtやdev交換をするというフォーマットもそうですし、なかなかレガシーなんです。

そういった全国数百社との連携をしなければならない。(しなくてもいいんですが、したほうがいい)
※完全に奉仕の心が必要です。

離島へ向けたオンライン診療の方が我々単体でできてしまうのでずっとやりやすいんです。

政府系についても対応はなかなか大変です助成金補助金が出るかどうかの機関と普及を急ぐがゆえに導入や利用開始が追いつかない、そもそもユーザーがマイナンバーカードを利用するのに追いついていない、という課題があります。
しかも診療報酬的にもマイナンバーカード持っていない方が点数的に有利になってしまうという進め方から始まって慌てて逆転させる改定を取ったりしています。これは医療機関側が困惑しても無理はありません。
点数までは我々が決める権利はないですけど、提案の余地があるならば是非やっていきます。(そのチャンスも実はありそうな?。。。)

◯地域医療連携

いわゆるSS-MIX2というフォーマットを使って病院-病院-クリニック-薬局などを繋いで、”同意の得た”患者様の医療データを共有する仕組み。
これは社会的に意義があるのは当然ですが、

  1. この大元の仕組みを提供する事業者がバラバラ

  2. 自治体レベルでの運営がほとんどで、自治体を跨いだ連携に弱い

  3. 助成金が出るうちは良いが、じゃあ実際使われているか?と聞かれると”?”である

入れておしまい。ただし”参加することに意義がある”という印象です。
もちろんしっかり運用されているところもあるので、個人的には残念。


医療機関側としてのシステム導入に向けてのハードルと考え方

予算

参加開業か既存クリニックの承継(代替わり、他者へ)かによっても変わるのでピンキリではあるけれど、基本的には個人事業主に近い形で開業される方が多いので資金としては潤沢にはない場合が多い。
銀行としっかり握って事業計画書を作り、診療権調査を行い標榜科をどうするかや集患方法の検討や広告・ツールの吟味をしっかりして多めの借り入れをして乗り切ることができるか。
またはリスクを考えてミニマム開業をされるか、これは考え方次第。
どちらにしても言えるのは以前のように電子カルテなどのシステムにハードも含まれて5年7年でリースするようかな形はあまり好まれないという感覚がする。なので安価なクラウド型、SaaS型が伸びているのだと思う。
郊外の一戸建てを借りたり建てたりして検査機器もがっつり整備するのか、駅前テナントで検査機器なく、一次医療をコンセプトにするクリニックも増えていると感じる。そうすると、機器購入やリースの必要もなく、間取りも狭くて良い、予約システムを整備することで待合室を最低限に(究極無くす、というところも出てきている)できる。

ITリテラシー

医療機関(こと診療所レベル)には規模によってまちまちですが医師、看護師、医療事務、事務長、検査技師、理学療法士、クラークといった方々がいらっしゃいます。
ただ、皆さん医療のプロフェッショナルではあるけれど、一般企業で数字分析やプレゼンを行うような経験のある方は稀ですし、僕らと同じようにリテラシーについては人それぞれです。
それに加えてこれまでも医療業界ではセキュリティや情報漏洩はあかん、という風潮でデータは自医院の中から外に出さない!といった考えが大半でした。
そう言う意味ではよりクラウドへの疑念が高かった業種かと思います。
また、これまでは紙の運用であったためにいくらでも偽装ができたところから嘘がつきづらくなってきたと言う背景もあるかと思います。
例えばカルテの編集についても以前は後から書いてもバレないものが電子的になった時には編集履歴も追えますよね、また勤怠管理・勤務記録についてもそれらがシステムで出退勤が管理されれば今まではエンドレス残業ももみ消されていた(消さねばならなかった)ものも明るみに出てきます。
なので個人としてのリテラシーに加え、業界としてのリテラシー(をあえて上げないための闇の力も働いていたのでは?)問題もあったのかと思わざるを得ないです(個人の感想)

電子カルテの実質的なシェアと強み弱み、僕らの戦い方

ここからは実際に医療システムを販売している立場から強いベンダーはどこか、どうやったら勝ち残れるか、新規参入の余地はあるのか、等について記述します。

私は株式会社xxxxxx(記事購入の方のみに下部に記載します)の医療事業部に所属しており、実際に日本の診療所(クリニック)向けの電子カルテや周辺システムを提供しており、トップシェアを狙える位置にきています。
その経験から市場情報を記載します。

電子カルテのシェアと書きましたが、今一番注視すべきは”のべ導入件数”ではなくて”直近どれだけの件数を導入したか”です。
僕らが販売活動をしている中でどう言った企業とぶつかるか、または競合したときに勝つ/負ける要因が重要です。

ポイント1:レセコン一体型か連動型か

利便性

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