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2021年新建築・住宅特集、総復習。前半

今年から恒例にします、新建築・住宅特集 総復習 

12月27日だったか、ふとYouTubeを開くと、新建築社ONLINEのアカウントで2021年の住宅特集の総評がライブで行われていた。
スピーカーは勿論座談月評を担当されていた乾久美子氏、石上純也氏、長谷川豪氏の3名。お話も面白く、途中参加した事もあり、あっという間にライブ終了。

これはいい。
「年越しは、新建築と住宅特集を今年1年分読みながら過ごそう」

やってみたらやはり楽しい。以下には僭越ながら感想を書いてみようと思う。
感想を書くにあたって題材として選んだ十数作品は、僕の好みが色濃く出てしまった様な気がする。んー、、
でも今年は自分の好みを明確にする意味も込めてこのまま書いてみようと思う。

ランドスケープと建築

新建築1月号は石上純也と藤本宗介による建築論壇から始まる。両者共に屋外空間や庭、ランドスケープ、そして、そと といったものをキーワードに論が展開された。
両者の文中にもあるように昨今のパンデミックが都市の窮屈さ・危険性を露呈させ、都市における屋外空間の重要性に皆が気づいたことにこの注目は起因する。
学部時にはランドスケープデザインの研究室に所属していた僕としてはとてもアツイ展開である。
しかし一言にランドスケープと言っても様々な領域がある。
先日話題を呼んだ「徳島新ホール整備計画」において石上純也は2つのコンセプトを掲げていた。①箱ではなくランドスケープをつくること②多様な価値観で楽しむこと である。ここで用いられたメタファーとしてのランドスケープは森の様な空間的多様性と山の様な景観的象徴性を合体させたような意味ではないかと私は考える。
一方で藤本宗介は自身の「UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店」の階段空間について、道空間でも広場でもあり、傾斜ゆえにランドスケープ的な意味合いもあると語った。人が地続きに立ち入ることができる公共的空間と地形が相まったこの場所をランドスケープと形容した。

空間的多様性と景観的象徴性として/地続きな公共性として



また、ランドスケープは地球環境や生態学といったエコロジカルな分野も含んでいるだろう。
その点で興味深かったのが、住宅特集10月号での能作文徳による論考と「明野の高床(藁)」「氷見移住ビレッジ」の2つの建築である。近代知から生態知への組み替えと題された論考では人類の環境負荷とそれを招いてきた近代の生活様式や建築様式を批判し、表面的な自然ではなく生態学的な環境をこれまでの知を用いて築く事が重要であると述べた。
明野の高床(藁)では鉄骨の独立基礎を用い、土壌に空気を送り込もうとする計画が行われている。更に壁には藁が用いられているが、藁は高い断熱性能を誇り、且つ土に帰す事ができる。
この様に建築が生態環境の一部として機能・寄与しているものもランドスケープの領域の一つに数えられるだろう。

最後に、純粋に豊かな屋外空間という点で気になったのは、
住宅特集2月号に掲載の1-1 ARCHITECTSによる「HOUSE OS 3つの屋根の下」。敷地が宅地、農地(接道あり)、農地(接道なし)の3筆の土地になっている事から、住宅、農業用倉庫、温室という3つの建屋を作り、それらを敷地境界ギリギリまで寄せて一体とするという建築である。熱帯植物の栽培を生業としている事もあり、この計画になっているそうだが、植物と人間の活動が3つの建屋のもとで不思議な交差を生むとても魅力的な建築・空間だと感じた。

生態学的環境として/豊かな屋外空間として


しかし、翌月の座談月評を読むと、空間的魅力、市街化調整区域としての可能性には一定の評価が出ているものの、法的条件をここまで受け入れた理由が明確でないとも書かれていた。

なるほど、そういうところも見るのか。気づかなかった。

次回、後半では座談月評のなかから興味深かったものから感想を書いてみたいと思います。

後半:なるほど座談月評、建築・建築家と都市

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