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固茹春秋 2023年7月

一ヶ月で観た映画や本、その他エンタメを紹介する固茹(かたゆで)春秋。

7月に入って感じたのは「暑い」ということ。
もうほんとそれだけ。
米倉涼子「高すぎる!!」(楽天モバイル)ばりに「暑すぎる」。
これだけ暑いと「暑い」しか言うことが無くなってくる。
そのうち日本人は「あーついすねぇ!」の言い方や雰囲気だけで「あーついすねぇ!(今日中に資料まとめます)」みたいにコミュニケーションが成立するんじゃないかってくらい、もう「暑い」くらいしか言うことが無い。
そんな感じで、7月の固茹春秋です

■映画
・劇場版「aftersun/アフターサン」
・「バンブルビー」
・「アメリカの影」
・「フェイシズ」
・「ミッション:インポッシブル」
・「ミッション:インポッシブル2」
・「ミッション:インポッシブル3」
・「ミッション:インポッシブル ゴーストプロトコル」
・「ミッション:インポッシブル ローグネイション」
・「ミッション:インポッシブル フォールアウト」
・劇場版「ミッションイン:ポッシブル デッドレコニング PART ONE 」
・劇場版「君たちはどう生きるか」
※劇場版は単純に映画館で見たという意味です。

「aftersun/アフターサン」
ホームビデオで撮られた20年前の娘と父の二人のバカンス。
それを見ているのは20年後の娘。
ビデオに映る父と同じ年齢になった彼女が何を感じるのか。
そんな構成の映画なんだけど、これが抜群に面白かった。面白かったというのとは少し違うかもしれないけど、とにかく最高の幸福と、それをも凌駕してしまうある感情のコントラストがあまりに切実で絶望的。
父が本能的に希求しているものが何か、それがわかった瞬間に映画の見え方が大きく変わる。「絶望」と書いたけどその中のかすかな光が、文字通り眩しく、とんでもなく美しく儚く映るシーンは胸に刺さる。
aftersunは「日焼け跡」という意味。まさに日焼けのように心にこの映画の跡が残る。

「バンブルビー」
人気SF超大作「トランスフォーマー」の前章譚スピンオフ。シリーズの人気オートボット(変形型地球外生命対)バンブルビーが主役。
バンブルビーはなかなか好きなキャラだったけど、今回はその相棒役の女の子がなかなか素敵で声の吹き替えも土屋太鳳ちゃんというナイスチョイス。
シリーズでは喋れないこともあって微妙にどんなキャラなのか分からないバンブルビーだけど、今回は若武者ぽい荒々しさもありつつお茶目で可愛らしく人懐こさが感じられるのが良い。
特に太鳳ちゃんとの関係性の描写に時間が使われていて、シリーズの門番マイケル・ベイお得意のぐちゃぐちゃ爆発アクションのボリュームがかなり少なくなり良いバランスだった。
ちなみに今作の監督はNIKEの創業者フィル・ナイトの息子であるトラヴィス・ナイト。この人の「KUBO」という人形劇ストップアニメーション(に全然見えないけど)も面白い。

「M:Iシリーズ及び最新作デッドレコニング PART ONE」
今月は21日から公開のトム・クルーズの魂のシリーズ「ミッション:インポッシブル」の最新作を映画館で全開で受け止めるためシリーズをおさらい。
全力疾走するトム、なんとも言えない表情をするトム、飛行機に掴まって飛んでいくトム、トム…と思ったらメリメリメリ〜で違うヤツ、こいつ悪どいわぁ〜と思ってたらメリメリメリ〜でトム。
とにかく色んなトム盛りだくさんの「M:Iシリーズ」。CGを使ってるシーンはもちろんあるんだけど肉弾アクションはやっぱり生々しさがあって、なんというか肉体が、本能が、歓ぶ。そんな感じ。
しかしながら最新作「デッドレコニング PART ONE」は少しストーリー運びのための会話シーンが冗長な気がして、テンションの置き所に迷う感あり。最終作に期待。ちなみにトムが撮影中死んで残りのカットが無駄にならないように一番危ないシーンからクランクアップしたとのこと。トムすぎる。

「君たちはどう生きるか」
ジブリです。駿です。
巷では賛否両論の嵐が巻き起こってるようで、率直に言えば正直
「面白くなかったぁ」という感想ではあるんだけど、それでもやっぱり普通のアニメ映画という枠に収まらないのはこの賛否両論が証左では無いだろうか。
とは言いつつ「宮崎駿」だからというのはもちろん多分にあると思う。
一応人には「面白いとは思わないけど、嫌いじゃないね」という一定の理解を示している風は装っている。にしても観ながら早くおわんないかなと思いながら見ていた。
簡単にいうと退屈な映画ではあると思う。エンタメ性は皆無と言ってもいいかもしれない。
けど序盤の階段を駆け上がるだけのシーンで「何かヤバいかも」と思わせるアニメーション的興奮はやはりある。
頭に大きな出来事が起こって一旦ランディング、そして徐々にテンションを上げていく、という構成はもちろんあるけど今回はランディングしてずっと地上を歩いていくような平坦さ。
個人に的には物語の重要そうな要素「積み木」に対して主人公が
「ん?積み木…?」てな感じで全然興味を持っていないとこが印象的。
先人が大事そうに積み上げてきたモノ、それはつまり価値観とか常識とか美徳とか。そこに対して正直あんま興味ないっスみたいな主人公の無関心さが静かながら痛快だった。
あんまりどれがどのメタファーだとか考えずに空っぽで観るのが良いかな個人的には思う。
あとなんとなく宮崎駿って説教くさいみたいなイメージを持たれがちな気がするけど今作はタイトルほど説教臭くは全然ない。全然説教されないのでピュアな気持ちで観てみましょう。

■本
・緋色の研究 コナン・ドイル
・4つの署名 コナン・ドイル
・21世紀の名品小物101 納富廉邦
・降伏論 高森勇旗
・ナンシー関の耳大全77 ナンシー関著、武田砂鉄編

「緋色の研究」「4つの署名」コナン・ドイル
なぜかシャーロック・ホームズシリーズを読み始めてみている。まぁまぁ面白い。でも底抜けに面白いというわけでもない。これが今なお大人気というのはよく分からないけど、まぁ読みやすいので今後も読んでいきたい。
でも昔の小説(が、どんなものが多いか知らないけど)にも関わらずホームズのキャラクター造形は見事だなと思う。奇人、変人、天才、魅力的だ。
マンガ的というか(コナンに引っ張られてる気もするけど)いきいきとしている。まだこの時点ではワトソンはかなり無能で単なる語り手なんだけど、こいつ面白くなるんだろうか。あとホームズが普通にコカインやってて驚く。

「21世紀の名品小物101」 納富廉邦
文章を書くのは大変だと思うからあんまり悪口を言うのは嫌だけど、この本は酷かった。雑貨を紹介する本なんだが財布なら財布で数点紹介する。でも複数の財布についてなんてどんな手練れだろうがなかなかバリュエーション豊かに紹介できるモノじゃない。なのでずっと同じようなことを少し違う言い回しで紹介するんだけどそれが読んでいて辛い。
「小銭が取り出しやすいのだ」「開いた時に札が非常にみやすいのだ」
だいたいの財布そうだろ。
あと自費出版なのか誤字脱字がすごい。前のページの文章がそのまま載ってるページさえある。
こういう良くないものは逆に人に勧めたくなる。ぜひ読んでみてください。

「降伏論」高森勇旗
元プロ野球選手が書いた自己啓発、ビジネス本。
自己啓発系は何年かぶりに読んだけど、たまに読むといいカンフル剤になる。恥ずかしいのでキンドルで購入。
序盤はストイックを強要してきて結構好みだったけど中盤以降はやはり説教くさい感じ&自己啓発本特有の「成功体験」「人に好かれるにはまず自分を好きになる」的な文言が跋扈してきてまずい雰囲気に。
結局は「行動しろ!」に落とし込まれてしまい序盤の小さすぎる積み重ねに関してもっと小さく、詳細に書いてもらえたら良かったなと思う。

「ナンシー関の耳大全77」ナンシー関著、武田砂鉄編
亡くなったコラムニスト、ナンシー関のベストコラム版的な一冊。
コラムの選定は武田砂鉄という安心感。
世代ではないのでナンシー関がどんな存在感だったのは全然知らない。けど少し辛口だがべらぼうに面白い文章、とそこらでいわれてるので読んでみたのだけど本当にべらぼうに面白い。
切り口が鋭い、とかそういう次元じゃ無い。軽い言葉で片付けて良いような言語センス、表現センスではない。もっとこう、特殊な秘孔を刺してくる感じ。
笑える部分もあるし、本当に「言い得て妙」の連発だ。
なのに意外に言ってることに具体性が無いから不思議。
要は雰囲気、空気みたいなものを言語化する感覚がずば抜けてるんだろうか。
「武田鉄矢は全てにおいて過剰」
「(24時間マラソンを)感動した、泣いた、けど、つまらないって言ってもいいと思う」
など、テレビを観ていて感じるもやもややイラつきが見事に言葉にされて、しかも浄化・発散される感じ。
心地よくスパイスの効いた毒がスルスルとページを捲らせる。

■マンガ・アニメ
・「推しの子」

面白い。サスペンス、業界(芸能界)モノ、転生、などなど色んなジャンルをミックス、そしてクロスオーバーし、しかも全部一級品のクオリティ。
そして全部がしっかりと噛み合って最終的に異色作になっている。
漫画は少ししか読んで無いけどアニメはOPも含め本当に面白い。

■よく聴いた音楽
・「アイドル」YOASOBI
・「Bad Habit」Steve Lacy 

「アイドル」YOASOBI
「推しの子」のOPソング。主にYouTubeでアニメOP版を視聴。
1:00くらいのアイがこっちに勢いよく走り寄ってくるとこがすごくカッコいい。無敵感溢れる最高の表情と躍動感。
歌詞もパンチラインが散りばめられている。
「金輪際現れない一番星の生まれ変わり」
なんて鳥肌ものの一節。YOASOBI全然知らないけどめちゃくちゃパワフルで一気に好きになってしまった。村上くんの入場曲「群青」も好きでよく聴いている。
最近「すごい良い!」と最上級に思うものを見ると涙が出てくる。泣ける「感動」というか心臓掴まれる感じ。
「アイドル」でも何回も泣いた。

「Bad Habit」Steve Lacy 
浮遊感とあたたかさがあって良いです。
五月雨なブルーな朝、嘘みたいに暑い夏の正午、なんか切ない秋の夕暮れ、人恋しくなる雪の夜、全季節天候対応型良曲。
今調べたら全然新しい曲ではないとのこと。

そんな感じ!
暑いけど頑張ろうな!!


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