シンギュラリティの果てに待つもの

公衆の便所に入ると思うのだ。

スマホの所持率上昇によって、確実に人々の便座滞在時間が伸びている、と。

便意が押し寄せた時に発見するトイレマークは、天国への入場ゲートを見つけた感動を与えるものであり、便所に足を踏み入れ、入場ゲートをくぐった瞬間、昇天への3カウントが始まるのである。

しかしそこに待ち受けるのは赤い施錠マークで閉ざされた天国である。僕は地獄に突き落とされる。

奴らは必ずスマホをいじっている。そう確信している。排便もそこそこに、奴らはスマホでツイッターやヤフトピを見ているのである。早く出ろ!天国はみんなのものだ!

スマホの普及によって、一人当たりの便座滞在時間は大幅に増加している(と仮定する)。

ところで、長時間便座に腰を下ろすことは肛門への負担を増やし、痔のリスクを高める。

つまりだ。スマホを見ることによって便座滞在時間が増えた人類が行き着く先は、痔である。技術が臨界点を超え人々の生活を激変させる「シンギュラリティ」を迎えるとき、人類を待ち受けるのは痔持ちであふれた世界である。

1億総痔持ち。いや、70億総痔持ちが訪れる日は近い。

来るべきXデーに備え我々がすべきことは一つしかない。そう、「ボラギノール」を製造販売している天藤製薬に就職するのである。痔持ちであふれた世界の経済を牛耳るのは、間違いなく天藤製薬である。

人々はボラギノールを求めて右往左往するだろう。スーパーは阿鼻叫喚、ネットではボラギノールが高値でオークションにかけられ、スラム街では違法な経路で入手されたボラギノールの闇取引が横行するだろう。

世界は混迷を極める。各地で紛争が激化する。全てはボラギノールを求めて。

「ボラギノールがなくても治ります!まずは受診を!」
肛門科医の叫び声が聞こえてくる。


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