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おさかなサブスクプロジェクト 目指すのは、常備菜ならぬ“常備魚” 

「さかなとくらしone bite fish」が立ち上がるまで①           

「東京企業」「地場(長崎)企業」インタビュー

伊藤忠インタラクティブ(以下、IIC)のメンバーのアイディアを元に、2020年にスタートした、長崎県地場企業と東京企業がタッグを組み、事業創出を行うプロジェクト「おさかなサブスクプロジェクト」。

実証実験を2020年におこない、現在も進行中の同プロジェクトについて、「東京企業」「地場企業」「地場支援チーム(県・市・銀行等)」それぞれの関係者の皆様にインタビューを行い、発足後、どの様な経緯でプロジェクトが立ち上がっていったのか、オープンイノベーションの有効性などについて、お伺いしました。

第1回目の今回は「東京企業」と「地場(長崎)企業」へのインタビュー、第2回目(2023年2月予定)は「地場(長崎)支援チーム」へのインタビューを掲載します。

※このインタビューは2021年に行われたもので、第1フェーズから第2フェーズになるタイミングのものとなり、現在は3年目、徐々に会員も増え始め、フェーズとしては第4フェーズ、実事業に進んでいます。

■「東京企業」インタビュー
【伊藤忠インタラクティブ株式会社】
・プロジェクト内の役割:ブランディング、クリエイティブ企画制作
 水谷氏(コピーライター/プランナー)
 松本氏(アートディレクター)

 松本氏                   水谷氏

――どのような経緯でお二人はプロジェクトに参加されたのでしょうか?

水谷:地域課題と東京の企業をつなぐワークショップで長崎市の漁業を課題にした回があり、私が長崎出身ということで半ば強引に誘われました(笑)

松本:やはり長崎出身ということで、なんか格好いいデザインをしてくれないか?くらいのノリで誘われました(笑)とはいえ、最初の取り組みは、デザインとは関係なく、プロジェクトの中で、大学で学生にサービスを考えてもらう、コンペ形式の授業を行う企画があったのですが、そちらでメンターとしての参加でした。自分の本来の職域とは異なる話でびっくりしましたが(笑)面白い体験でした。

――プロジェクトが立ち上がっていった経緯を教えて下さい。

水谷:ワークショップ内で出した最初の案を元に、長崎市との対話が始まり、直ぐにプロジェクトになっていきました。初回の話を受けて次の回には、当社内で「おさかなサブスク」具体案を作って提示したのが、形になっていったポイントだと思います。

――プロジェクトが立ち上がっていく中で東京側の役割(クリエイティブ・ブランディング)が大きく機能した部分の一つとして、おさかなサブスクの上段に「FFF(Find Fish’s Future)」というコンソーシアムとしての理念を作った事があると思いますが、経緯を教えて下さい。

松本:「おさかなサブスク」のブランディングを考えていきましたが、ステークホルダーがいろいろ現れてくる中で、メインで進めている三社だけの話にするにはもったいないと思いました。皆で一つの方向を見ることが出来るよう旗を掲げる必要があったと考えています。FFFを早めのタイミングで掲げたのがあるから今があるような気もしますね。

【松本パート:FFFの理念を立ち上げ・皆に伝えた打ち合わせメモ】
【水谷パート:FFFの理念をストーリー化】

――第一フェーズの難しかったところを教えて下さい。

松本:いかにプロダクトをミニマムな条件でまとめるかという点と、進行に関して誰が決めるのか?という点でしたね。普通の企業内のプロジェクト進行と大きく違う点として、関係者全体でモチベーションを維持しながら握手をして進めていく必要がある部分だと思います。

水谷:制作に関しては、IICが業務に縛りがない動きやすい会社だったから形にできた部分はあります。進行に関しては、誰が決めるんだというプロセスは進行を遅くするし、逆に誰か一人の意見で決めると座組が成立しないところですが、鍬先さん(十八親和銀行)を軸に縦型組織の構造をそこそこにして、最後は必ず全体の意見を確認する形で進んでいった気がします。メンバーが一人でもちがっていたら、もっとカオスになっていたかもですね。また、時間をかけて全体が成長してチームになっていった気もします。

――現在第二フェーズですが、ここから目指していきたいことを教えて下さい。

松本:売りたい!!そして、ここからさらに自分の一番得意領域のデザインでもっと貢献したいです。でも、ポジションとかを変えずにデザイン視点でビジネスを考える今の取り組みは面白いですね。

水谷:FFFをもっと発展させて、オンライン会議はもう当たり前だし、全国は勿論、海外ともつながっていくような長崎に留まらない活動に広げていきたいですね。取り組みもさらに先進的な漁業の活動にも関わっていきたいです。

■「地場(長崎)企業」インタビュー
【株式会社ジョイフルサンアルファ】
・プロジェクト内の役割:サービス運営、商品開発
 久保井氏(管理部部長)
 森氏(取締役 プロセス運営部本部長)

【F.デザインNAGASAKI株式会社】
・プロジェクト内の役割:商品開発
 永石氏(代表取締役)

※肩書はインタビュー当時のものです。

   森氏     久保井氏                 永石氏        

――どのような経緯でプロジェクトに参加されたのでしょうか?

永石氏:ジョイフルサンアルファさんとのお仕事で、商品開発や、外商の部分のお手伝いなどをさせていただいていたのですが、同社近藤前社長と一緒に、長崎県平田副知事から、十八親和銀行の鍬先さんと長崎県の松尾さんをご紹介いただいたのがきっかけでした。最初は当社として関わるつもりはなかったのですが、参画のご相談を受ける中で、商品開発や販路の開拓のイメージはついたのでチャレンジしてみようと思いました。

森氏:先の話にでた、近藤前社長からの指示があり、「凍眠」という冷凍技術があるから見に来てほしいと言われ、技術を知ったのがきっかけです。機械の効率化の伸びしろと、魚の商品もなかったので、販路拡大の可能性を感じたのと、魚を冷凍して食べるという発想がなかったので、面白いと思いました。

久保井氏:先の近藤前社長の退任にあたり、アサインされたのがきっかけでした。第一印象は、また近藤前社長が大変な相手をひっぱってきたなという感じでした(笑)とはいえ、初めて参加した打ち合わせの席でいきなり、テレビ局の取材等が入っていたので、メディアの関心の高さ等を感じました。

【地場(長崎)企業×東京企業で作り上げた第一フェーズ商品】

――このプロジェクトの面白さはどのあたりでしょうか?

永石氏:ミーティングの中での東京側企業や、他の関係者の考え方の整理が学びになっています。第一次実証実験の中では、実験を重ねて商品を完成させていく感動がありました。最近もブラッシュを続けていて、ついに満足の行く商品ができたと感じています。早く皆さんに食べてほしいです。また、このプロジェクトの先にある、冷凍技術で、市場価値のつかなかった魚を売り出していける可能性に、面白さを感じています。

森氏:色んな人が参加してものを作る点です。東京側が提案してくる、物語を作るプロセスが面白いです。商品を形にしていくのは大変ですが、今までの仕事で一番面白いです。

久保井氏:私は魚が好きなのでシンプルに楽しいです。あと、あまり他の会議では見られないくらい、大人が真剣に議論しぶつかり合っていて(笑)、面白いと思います。

――逆に辛い部分、難しい部分はどのあたりでしょうか?

永石氏:可能性を感じるものの1,2年かかっているのにまだ、数字に返って来ない部分ですね。会社の中で数字責任がある中で忍耐力がいると思います。サンプルづくりや、人的リソース等、コストもかかるので、マネタイズを急ぎたいですね。

森氏:従業員に「冷凍のさしみ」に対して理解をしてもらうのが難しかったです。作っては食べさせを繰り返していって、メディアで取り上げられている姿を見せて、興味とか納得感を少しずつもってもらって進めてきました。とはいえ、数字に返ってこないと本質的には認めてもらえない。全国で今回の冷凍の魚が食べられている姿を見せて、スタッフをギャフンと言わせたいです。

――オープンイノベーションについて可能性と、難しさを教えて下さい。

永石氏:オープンイノベーションという仕組みというよりも面子だと思います。今回のメンバーでなくなったらできるのかなと思いますね。土日でもリモートで集まって飲みながら話したり等、このプロジェクトは奇跡的に熱量がある人たちで構成できているので形になっているのだと思います。支援側メンバーも行政や銀行の立場を飛び越えて熱量を持って打ち合わせに毎回参加してくれていたり、チームとしての安心感があります。

森氏:私もメンバーに人間性、信頼関係が無いと上手くいかないと思います。思いが違ってきてしまうので。人間関係の出会いがこの座組の素晴らしいところだと思います。

久保井氏:オープンイノベーションの取り組みも初めてではないのですが、複数の関係者で進めていく座組自体はどうしても腹のさぐりあいなどが発生し、中々、利害を一致させるのが難しいと思います。今回はチームで完全に「魚の商品を売る!」という点で一致しているから話が早い気がします。信頼感もありますし、大義があるから心理的な安心感がある気がします。

――現在第二フェーズですが、ここから目指していきたいことを教えて下さい。

永石氏:地方での飲食店での雇用を作っていきたいです。そのためにも、生産者・加工業者との連携を作っていかないといけないし、新しい商品もさらに作っていかなくてはいけないと思っています。今回のプロジェクトでは水産事業者全体のサステナブルの可能性を感じます。たとえば傷がついている魚も売っていくことが出来たら生産者は勿論、消費者の世界も変わります。そういったイノベーションをこの取組のさきに起こしていきたいです。

森氏:冷凍の魚が市民権を持つところを目指したいです。そして、漁業関係者の後継者が儲かる仕組み、若い人が生きる道を作りたいです。販路を広げていって、漁協や個人をユーザに直接繋げる仕組みづくりを、ジョイフルサンで担っていけたらと思っています。

久保井氏:内部的な話でいうと社内への落とし込みをしていくことです。長崎県内だけでなく、全国に展開していく、今回のプロジェクトへの関わりで、従業員の仕事へのやりがいやプライド、会社への思い入れを醸成していきたいと思っています。

※次回(2月上旬)は、地場(長崎)支援チームの方々のインタビューを掲載予定です。

さかなとくらしone bite fish

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