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脳振盪後リハビリテーション及びレッドフラッグを再確認する

今回のこのNoteは2021年夏に出版になった、「できるセラピストと言われるために3年目までに知っておきたい115のこと」の補足記事です。

このNote記事単発でも完結するようにはなっていますが、ぜひ書籍を手にとってご覧いただけたら幸いです。

書籍で「3年目までに知っておきたいこと」として脳震盪の項目を作っていただけました。正直、3年目までのセラピストがトピックとして知っておく必要があるのか?ということは自分の中でも迷いました。

「脳振盪」として知っておく必要は必ずしもあるものではないが、それに付帯する知識は知っておく必要があるという判断で今回掲載にいたりました。

更に今回のこのNoteで皆さんに知っていただきたいことが補足できると確信していますので、御覧ください。

「医療は常にアップデートされる」「レッドフラッグ」という2点について触れていきたいです。

脳震盪の分野は特に近年発展してきた分野ということもあり、情報がどんどん更新されています。

 またレッドフラッグについては普段の保険内医療、特に病院など常にDrが身近でいる環境ではなかなか気づきづらいことです。

レッドフラッグという言葉に馴染みがない人は書籍で解説していますので是非チェックしてください。

さて一つの事例をご紹介したいと思います。

最近SNSで一般でみれる状態の投稿をみました。

「2010年代(前半)にラグビーをしている時のタックルで急性硬膜下血腫で引退の危機になりましたが何とかリハビリを重ねて最近復帰することができました。」

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と言うものです。一見喜ばしい記事にも思えます。(画像は無関係。筆者がフォローしているラグビー部)

しかし私には疑問でした。
 私の記憶には自分が学生(ラグビー)選手の時に後輩が急性硬膜下血腫になり、専門ドクターの診察により「基本的には引退」という勧告を受けていたのを覚えていたからです。

その後輩はある試合で脳振盪を起こし(本人もその時には気づいていなかった!あとでビデオで確認、明らかな脳震盪と思われる場面はなかったものの一瞬おかしい場面があったとのこと。)その数日あとの練習中に急な嘔吐、意識レベルの低下を起こし緊急搬送されたところ硬膜下血腫が見つかったという件でした。

そしてその後輩は保存療法(手術をせず)で問題なくADL(日常生活)レベルに復帰しましたが、チームドクター、ラグビー関係の脳外科Drにより「(今後のことも考えれば)基本的には引退したほうが良いだろう」という1件がありました。

そんなことがありましたので、
私は普段からお世話になっているラグビーに関係する脳外科のドクターにこのSNSの件を聞いてみると、以下のような返事が返ってきました。

「〇〇年(2010年代)と記述されていますがその時代あたりから脳振盪に関しては知識が広がってきました背景もあります。」

(中略)

(あくまで個人としての見解ですがと前置きした上で)血腫があっても吸収されれば、外科的なことがあってそれに関する問題がなくなれば(例えば頭蓋骨の固定など)復帰をOKする医師がいる可能性はないことはないでしょう。」

「ましてやスポーツに関心のない脳外科のドクターが診察したら特に不思議でもないかもしれません。」

というものでした。

「ただし」、と続きます。

「個々の症例で判断することの困難さ、安全第一、統一した基準に基づく対応にすることでの復帰判断者の責任問題を考えれば今(2021年)の流れでは当然復帰は不可能でしょう」

ということでした。

先程の「脳外科的な(血腫の吸収や、頭蓋骨自体の術後固定)話がクリアされる」ことと、「脳機能という不確定要素が大きいことに対する医師の責任問題」は区別して考えられなければいけません。

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この「不確定要素に対する責任問題」という話で言えば、今イングランドでラグビー協会でこんな問題が浮上しています。

「試合思い出せない」英ラグビー元選手、脳患い訴訟へ
https://www.asahi.com/articles/ASNDV1693NDCUHBI045.html

特に先程のSNSの投稿はラグビーという競技中に起こったことでした。イングランドでの問題はプロフェッショナルレベルのラグビー選手というカテゴリーの差はあるにせよ、スポーツを続けることにはこういった「団体の責任問題」「許可した医療者の責任」というものも同時に伴います。

記事の無料部分だけでも(2020年の時点で)42歳の選手が、「現役の時に練習で激しく頭をぶつけたせいだ」としています。

この例のように脳振盪・脳科学の分野に限らずですが医学の世界では日進月歩と言うのは皆さんも承知の通りです。またそこにはスポーツ団体、専門家たちの責任が伴います。

特に脳震盪に関しては特に最近アップデートされてきた分野でもありどんどん更新がなされています。

書籍の中でもSCAT5を紹介しましたが「5」という数字が示すとおりアップデートがなされています。

脳振盪に関して言えば、数年に1度、更新する国際会議などが行われています。こうした情報のアップデートに我々も置いていかれないようにする必要があります。

昨今ではsnsなどの情報手段も普及してきていますから比較的早めにアップデートに追いつくことができますが、逆にいうと2次、3次情報も溢れてしまっています。(こういってしまうと元も子もないですが)私のこの情報ももちろんそうです。

そこでその分野の第1人者を知っておく必要があります。
日本では脳震盪に関しては東邦大学の中山先生がこの分野の第1人者といっても差し支えないと思います。

「東邦大学医療センター大橋病院 脳神経外科 スポーツ頭部外傷外来」などのFacebookPageで最新情報を更新していただいてますので、是非チェックをしてください。

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レッドフラッグと開業権

書籍中にレッドフラッグについて言及しました。

保険内理学療法を行う上では基本的に文字通り指示通り理学療法を行っていればまず心配しなくては良いです。
 「リハビリテーションは医師の指示のもと行う」のであえて意地悪な言い方をすれば「医師の処方箋のとおりやってればいい」わけです。

ですが現実問題としてはいろんなことが絡みます。
特に昨今のリハビリテーションでは高齢者が多く、たとえ運動器リハビリテーションのオーダーでも内科疾患が併存していることはもはや当たり前です。いわゆるリスク管理ですね。

医師のリハビリテーション処方箋にないことはこのレッドフラッグの可能性を含んでいることを頭の片隅において置かなければなりません。

たとえば大腿骨近位部骨折の高齢者の患者さんが心臓疾患の既往がある、なんていうことはよくあることです。もちろんすべてがすべて気にしないといけない疾患であるわけではないですが、呼吸循環器に関する内科的な知識、またそれに関連した血液データ、フィジカルアセスメントなどの知識、またそれらを解釈できる力は必要となってくるでしょう。(書籍境田他記事参考。)今回の本の追加記事として以下のNoteも記しましたのでご興味があればご覧いただければ幸いです。

さて日本では理学療法士に開業権は認められていませんが海外では理学療法士自体が開業を認められている国もあります。

いろいろな違いはありますが、教育面での差ではこのレッドフラッグによるものが一つ挙げられます。
日本ではレッドフラッグについて療法士の養成過程で学ぶ機会は少ないですが海外の開業権が認められている国ではレッドフラッグの教育が養成校の時点であります。

開業している理学療法士にレッドフラッグの患者が来たら対応してはいけない(というよりできない)ことを彼らはわかっています。

別の言い方をすると目の前の患者がレッドフラッグに該当していないか?という視点を持っています。

理学療法士として運動学やそれに関するものを勉強することも当然ですが、リスク管理としての知識も少しずつ広げていきましょう。

書籍中でもあげた、例えば選手がタックルなどのシーンで頭を強くうったなどの「脳振盪が想定される場面」でも、それが「心停止」「脊椎損傷」「急性硬膜下血腫」なのかは鑑別できませんし、またそれ(鑑別、診断をすること)は我々コメディカルの仕事ではありません。

特にトレーナーや自費の活動といった「一見普段医療機関内と同じことをやっている」ようでも「医師の指示を受けてない理学療法・治療場面」、「保険内理学療法以外」の場面がある人にはレッドフラッグの知識は必須と言って良いでしょう。

今回は以上になります。
ご質問いつでもお待ちしております。


プロフィール

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境田淳平

理学療法士、メディカルトレーナー
ラグビーを中心にトレーナー活動をしています。
高校ラグビー、関東大学対抗戦、神奈川県国体チーム成年男子(セブンス)

このNoteでは
「就職・転職活動のリアル」「理学療法士におけるトレーナー活動とは」
「理学療法士はどんなセミナーに行ったらいいの?」
「理学療法士の勉強の仕方」「資格って何をとったらいいの?」

実はラグビーのレフリーもできます。
C級ですが、、。ラグビーの安全管理にグラウンドレベルで関わりたいという思いから活動しています。

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