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「スーパーひたち」の衝撃

南海ラピートって確か1990年代に登場した車両だと思うのですが(記憶があいまい)、正直言って、このとき私は「全く驚かなかった」。

ラピートは、登場時、鉄道趣味界隈の人々達でも賛否両論真っ二つでした。

賛成意見は、引用記事の写真をご覧いただければお察しいただけるかと。この先頭形状が強烈で、側面の客席窓は全部縦長楕円、奇抜の域に達している(と当時は思えた)内装。

反対意見は、それがそのままひっくり返っているというか、
(1)あまりにも奇抜。奇をてらいすぎている。
(2)先頭形状子供のロボット玩具のようで幼稚。
(3)車内の座席が、合成繊維とはいえ「ヒョウ柄」なのは、ヨーロッパで毛皮反対運動が盛り上がっている現代(1990年代当時)において、時代錯誤も甚だしい。
……などなど。他にも色々あった気がするけど、忘れました。30年前くらいの話なので勘弁してください。

で、当時の私の感想は

「もう驚かなねーよ」

その理由は「651系スーパーひたち」の衝撃で免疫が形成されていたから。

「651系スーパーひたち」は、多分私が生涯で受けた衝撃上位100位内くらいに入ると思う。そりゃ災害とかテロとかの方がショックだし怖いし、趣味云々と余裕こいてるような話ではなくて桁違いに大ショックでしたが(それでも今の90歳くらいの老人から見たら「戦争を体験していないお前なんか全然苦労していない」とぼろくそに叩かれる世代の日本人なのだろうなとは思う)、それでも「総合上位100位」に入りそう。もちろん「鉄道趣味的ことがら」に限定するなら、生涯第一位。多分。

1989年「スーパーひたち」651系登場。やはり鉄道趣味界隈では賛否両論ありまして、素晴らしいという感想と、奇抜過ぎるという感想があった。私は後者。

生々しい毒虫のような造形で気持ち悪くて生理的に受け付けられない。
「こんなものは鉄道界にあってはならない」

翌1990年から私は通勤で常磐線を使っておりまして、さすがに当時の地獄の常磐線朝ラッシュには現れなかったものの(乗車率200%超くらい?)、651系の実車を見る機会は多々ありました。そのたびに気持ち悪くなった。

でも、ある日、ふと気づいたんです。651系って、7両編成と4両編成があって、そのつなぎ目でボンネット先頭車同士の連結部を見て「犬と犬が顔を突き合わせているようだな」。
つまりは、こんな感じ↓(2000年代に日暮里あたりで撮影)

「よく見たら可愛いやん」。

そこで、初めて飲み込めたというか、受け入れることが出来た「スーパーひたち」。時、既に1991年。つまり受け入れるのに「3年掛かった」。

それで初めて「実車に乗ってみたい」と思うようになり、このnote冒頭の写真へとつながる訳です。
近くで見ると、やっぱり可愛いよこれ。
初めて体験した「在来線130km/h」は従来の在来線特急と新幹線の中間的な、聞いたことのないリズム。
背面プラスティック製の、心地よい座席(後に布張りにリニューアルされたそうですが)。
と言うわけで一気に好きになりました、651系。

その後次々に斬新なデザインの車両が各社から登場。JR東海371系「2階建て小田急線直通特急」、JR西日本「500系のぞみ」、JR東日本209系「平成究極の通勤電車」。

そしてついに南海ラピートが登場した訳ですが、その時の私の感想、

「いつかはこのくらいの奴を、誰かが造るだろうなと思っていたよ」

もう(鉄道車両的に)何が出てきても驚かない自分が、そこにいました。今でもそうです。運転席なし、パンタなし、時速400km「東北新幹線の遠い未来のイメージイラスト」にも驚きはなかった。

で、最初の「ラピート」の話に戻りまして、実際に営業運転が始まって鉄道雑誌に写真が載るようになると、いかにも昭和っぽい商店街の踏切を渡るラピートの写真が発表されたりして、現実は「レトロフューチャー」とのコンセプトを突破していた。当時の沿線の子供達が「電車仮面」というあだ名を付けたそうです。子供の視点ってストレートですね、そうかそういう見方もあるのか、と感心したり。

そのラピートを使った臨時ツアー列車を、普段と違う区間に走らせましたよ、というのが、このnoteの冒頭に引用したニュース記事の内容なのですが、この記事を見て「ほう」と感心したことが一つ。その臨時ツアー列車の企画は「阪急交通社」。将来構想として、新大阪ー大阪駅付近に南海と同じ狭軌の阪急電車「阪急新大阪線(?)」を作って、大阪駅付近で大阪メトロ&南海電車と直通して新大阪駅と関空を直結する、と言う構想があるとか。もうその「協力関係」は動き始めているのか、と。

その構想が実現する頃にはラピートも古くなって、地下線経由の関係上「前面貫通扉つきラピート」なる車両に交代するのかもしれない。でも、そこにどんな車両が登場しても、私はもう驚かないという自信があります。

私、このくだらない自信自慢のために、何時間無駄にしてるんだろうな?
ひなさんは、呆れかえってとっくに眠ってしまいました。

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