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300円の中古レコード

ケチケチな、いい音オヤジとしては、中古レコード屋へ入り物色する時、まず目をやるところは、値札。

500円あたりを中心に、タイトル(曲名)や、演奏家の名前を確認する。

よっぽど目当てにして探している物以外、1,000円以上のものには、目もくれない。

たまに、ジャズに明るいカミさんと行って、カミさんがピックアップする物は、好みの演奏家達の物という事なので、私の予算感を超えて、これどぉと聞いてくる。さすが、カミさんの選択は的を得ていて、失敗したということがない。

がしかし、300円で買ってきたレコードが意にそぐわず失敗した。という事もあまりない。

大体、中古レコードといえども、まず、盤に傷があったり、音飛びがする様な物はあまりない。300円のレコードでも、3,000円のレコードでも使用感による品質という面では、比較できない気がする。300円の物でも一回しか聴いていないような、埃さえ付いていない様なものもある。

そして、演奏が上手くないとか、録音が良くないという事も、値段だけでは、判断できない。レコードを出すことができるほどの演奏家であれば、少なくても、その時代何千人、いや、何万人のファンがいて、プロとして活動していたのだろうから、聴くに耐えない演奏という物は少ない。録音だってそこそこの物になっているだろう。

すると、やはり、巷で人気があるかどうかとか、人気のあるアーティストのレア版かどうかといったことが、一枚のレコードの値段を大きく左右するのだろう。

あと、優秀録音盤なんて言う高価な物もあるようだが、ダメ耳の私には、どのレコードも十分な音質に思える。

勿論、ジャケットのヨレ、汚れ、破損状況、帯がある無しなども、値段に影響するだろう。私としては、よっぽどのことがない限り、レコード自身の品質が問題ない限り、周りのジャケットには拘らないので、二つ同じものがある場合は、安い方を選ぶ。

そんなわけで、300円とか、500円とか、たまには、100円とかのレコードを買うことが多い。

そんな、ケチケチジジイの選択の裏側には、できるだけ沢山のいい音楽、いい演奏を聴いてみたい、発掘してみたいという願望がある。

世間で評価されている3,000円の特定のアルバムよりも、300円を10枚買って、色々な曲や、演奏家に出会ってみたい。

そして、今までこの歳になるまで知らずにいた、新しい曲や、演奏家に出会って、自分の感性で好き、嫌いを見つけ出したいという思いがある。

この歳になっても、世間の評価とは別に
自分の感性だけを頼りに、好きなものを見つけることができることが楽しいのである。

最近、クラシックコンサートで、偶然であるがドボルザークの曲を聴くことが多かった。デュダメルの新世界、バルカン交響楽団の弦楽セレナーデ、N響+カミーユ・トマのドボコン。新世界は、交響曲9番と言われているので、1からずっと聴いてみたくなった。そこで、見つけたのが、演奏はそれほど有名ではない様であるが、全7巻のCDのセットで、600円台だったので即購入した。この新しい曲との出会いがワクワクする。

ジャズでは、ベースの音が好きなので、ベースが主体のトリオのアルバム欄を見て、知らないアーティストだけど、予算内であれば購入してみる。そんなアルバムでも、意外なところに発見があったりする。

300円のレコード棚を一枚ずつめくっていき、バッハの演奏を見つけた。ジャケットは汚いが、なんとなく自分が持っていなそうな曲の様な気がして、購入。大当たりで、聴いたことがない曲であり、演奏も新鮮味があって、意外な感動をもたらす。

この歳になってもそんな宝探しができるなんて幸せだなと思っている。

株価が史上最高値を更新し、四万円を超えるのを横目に、私は、300円で自分の感性に投資をしているのだからと言い聞かせながら、なんでも自分で作りたい私は、次は何を作ろうかと考えながら、ドボルザークの交響曲2番を聴いている。