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真空管アンプにはバランスボリュームが必要なのかもしれない

真空管アンプを作り始めて5年ほど経つだろうか?今まで、左右のバランスをそれほど気にしてこなかったのだが、最近かなり気になる。

先日も左右バランスの不揃いをレコード盤の録音のせいにした記事を書いた。

でも、根本は、やはり自身が作ったシステムに問題があるようだ。

というより、製造時の真空管個々の品質を一定に保つ事が難しいという宿命がそこにあるのではないだろうか?という事に気がつき始めた。

つまり、真空管は古い技術であり、人が手で作成したものである。そこには、作り手の技術力、熟練度によって出来上がる真空管の品質がまちまちであるという事である。

人と同じように、個々がそれぞれ違うという事は、むしろ好ましく、だからこそこの真空管というものに魅力を感じるのだろう。

今一度、自分のオーディオセットを一つづつ見直した所、どうやら、プリアンプの左右に偏りが出ている事に気がついた。

この自作のプリアンプは、12AX7を4本使っており、フォノイコライザーに左右で2本、そして、フォノイコ側の増幅とプリ全体の増幅には双三極の片側ずつ使い、左右で2本という構成である。

これらの、それぞれの12AX7の性能、つまりIp、バイアス値、また、Epが違っていれば、それぞれの増幅率が違ってくるので、左右の出音の偏りができてしまうのである。
いわゆる、真空管のバラツキである。

よく、プッシュプルは、マッチドペアでなくてはいけないと言われるが、シングルでも、プリアンプでも、真空管のバラツキで10%も増幅率が違えば、左右からの音の量は明らかに違う。

初めから、多少の個体差を認めつつも出音に違和感がなかったのでそのまま使っていたが、経年変化のせいか、最近特にその左右の偏りが気になる程出てきた。

ここで、私が参考にした元の回路図の、バランスボリュームの存在の意味を理解したのである。
もう、数十年も前の真空管アンプが全盛だった頃の回路図には、プリアンプに左右のバランスを調整するボリュームが付いていた。
しかし、私が自作する際に、できるだけシンプルな構造にしたいという思いで、バランスボリュームを割愛していたのである。今になって、その機能の必要性が、当時の真空管を扱うという技術の中で必要不可欠なものであったのだろうという事に気がつかされた。

今まで無知だった私の頭の中に、左右のバランスを整えるという発想が無く未熟だったようである。
このようなバラツキのある真空管というものを扱っているのであるから、左右のバランが揃わない事を前提に、バランスボリューム機能を付加するというのは必須だったのだろう。

それを理解した今、無性にバランスボリュームをつけたくなってきた。
そして、当時のバラツキのある品質をそのボリュームを使い調整をするという事に、変なこだわりと愛情を感じ始めている。

車の世界も、全く同じなのだろう。安全で、快適で、エコで、メンテフリーな車を求め、最新の技術がもてはやされる時代に、やはり、クラシックで、単純な機能しかついていない、決して快適とは言えないような、不完全で、手を入れてあげなくてはまともに動かない車達をこよなく愛するファンがたくさんいる事に納得ができる。

趣味の世界というものは、一見、面倒くさく、マイナスの要因だと思うことも、発想を自由に変え、広い懐でとらえてあげる事ができるのし、そうする事で、益々、そこに愛情を注ぐ事が出るようになるのだなぁと自身で納得している今日である。

え、もしかして、不完全な、不便な、めんどくさいものごとの中にだからこそ、実は、幸せが発見できるのかもしれない?