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RAW 少女のめざめ ~ 愛と青春のグロ映画

新年早々、なんという映画を観てしまったんでしょう。ホラー映画を観ようとして適当に探して、アマプラでレンタルして観たらドえらい映画でした。

このテキスト、ネタバレだし決して気分の良い内容じゃないので、爽やかな新年を迎えたい人は読まないのが良き。

▼登場人物

ジュスティーヌ

ベジタリアンの家庭で育った少女。親元を離れて大学の獣医学部に入学して寮生活を始める。

アレクス
ジュスティーヌの姉。ジュスティーヌと同じ大学の獣医学部で既に寮生活をしている。

アドリアン
ジュスティーヌのルームメイト。ナイスガイ。ゲイ。

▼あらすじ
16歳のジュスティーヌは厳格なベジタリアンの獣医一家に育ち、両親、姉と同じ獣医学校に入学。

初めて親元を離れ、見知らぬ土地の大学寮で学生生活を送ることになった彼女は、新しい環境で不安に駆られる日々を過ごす。新入生通過儀礼として 生肉を食べることを強要されると、どうしても学校に馴染みたいという思いから家族のルールを破り、人生で初めて肉を口に する。その行為によってジュスティーヌの本性が露わになり、次第に変貌をとげていく。

彼女が本当に求めるものとは..。

https://filmarks.com/movies/68766

冒頭、謎の交通事故のシーンから始まって、ヤベー大学寮のヤベー儀式、乱痴気騒ぎ。5分に1回「何だこれ」と言いながら観てました。

入寮初日に寝てたら叩き起こされて、先輩に無理やり乱痴気騒ぎの不健全な新歓パーティーに連行されるとか、入学記念撮影で新入生全員が動物の大量の血を頭からぶっかけられるサプライズとか。

とにかく不愉快で気持ちの悪いことばっかり仕掛けてくる最悪な先輩、しかもその大学の文化として、先輩には絶対服従。私だったら初日で逃げます。

真面目っ子のジュスティーヌもさぞかしキツかったろうと思いますが、周囲に馴染みたい一心で無理やり気味に自分をヤベー大学の文化に染めていくんです。なんかこの気持ちわからんでもないです。大学1年生ってそういう場面あるよね。

乱痴気騒ぎパーティー連行や、血のぶっかけよりは絵面的には地味ですが、最悪なのが新入生の通過儀礼として動物の臓物を生で食うという儀式。それも何だそれって話で、不愉快極まりないです。

ベジタリアンの家庭でともに育った姉のアレクスに助けを求めても、助けてくれるどころかそのアレクスにウサギの臓物を食わされる始末。

この出来事がトリガーになってえらいことに。

それ以来ジュスティーヌは肉が食いたくて食いたくて仕方がなくなってしまい、学食でハンバーグを万引きしてバレたり、寮のルームメイトのナイスガイのゲイ、アドリアンと抜け出してケバブを食いにいったり。

実家ではベジタリアンとしての生活を自然に受け入れていたようですが、実は肉が食いたくて仕方ないという自分の本性に気づいてしまいます。

ここでもうひとつ、もうひとつトリガーになる出来事が。

チャラい大学寮の文化に馴染もうとする一環で、陰毛の処理をするってことになって(なんだそりゃ)、アレクスにブラジリアンワックスで毛を抜いてもらうことに。

ワックスが剥がれずにアレクスがサハミで切ろうとしていたところ、毛がひっぱられて痛い!となってそのはずみでアレクスが指を切り落としてしまいます。

指切断の痛みで気絶しているアレクスの傍らで、ジュスティーヌは我慢できなくなってその指を貪り食ってしまいます。それ以来ジュスティーヌは人の肉が食いたくてたまらなくなるという。

ルームメイトのアドリアンが上半身裸でサッカーをやってる姿を見て、その肉付きのいい身体を見て鼻血を出すんですが、その目つきの恐ろしいことといったら。ポスターにもなってるこの映画の一番怖いシーン。

そして実はアレクスも人の肉が食いたくて仕方ないことを既に自覚しており、実際に食っていることが発覚。

アレクスはジュスティーヌを人通りの少ない道路に連れていき、通行する車の前に当たり屋みたいに飛び出して事故を起こさせます。そして死んでしまった運転手の肉をむさぼり食う。しかも手慣れた様子で、時々この手口をやってるみたい。

冒頭の謎の交通事故シーンは、アレクスがやったものだったとここでわかります。

映画の終盤、ある朝ベッドで目覚めたジュスティーヌは隣にルームメイトのアドリアンが寝ていることに気づきます。

酔っ払ってヤっちゃったかな?くらいに思ってたところで布団を剥いでみると、アドリアンの太ももが食い破られています。そして背中にはスキーのストックで突かれた傷があり、アドリアンは死亡しています。

あまりに人の肉が食いたすぎて自分がやってしまったのかと思ったら、部屋の隅に口に血をべっとりつけたアレクスが。

この事件でアレクスは逮捕され、ジュスティーヌは実家へ戻ることになります。

実家で父は「お前もアレクスも悪くない」と言ってシャツをめくり上げると、父の胸から腹にかけて無数の肉を食いちぎられた傷が。人肉を食いたいという性質は、母親からの遺伝だったという!

ベジタリアンの家庭というのも、人肉食への嗜好を目覚めさせたくないという両親の考えであったし、大学寮でのアレクスの態度や行動も、目覚めてしまった妹への姉の愛から来るものであったと種明かしされたわけです。

冒頭からわけのわからないシーンの連続で困惑しながら見ていました。

わからないなりに引き込まれるものがあってついつい観ちゃってるんですが、終盤から説明過多にならずに、それでいてハッキリとわかるように種明かしがされて、観終わってみたら面白かったです。

血がドバドバ出たりショッキングなシーンも出てくるんですが、会話シーンのちょっと違和感のあるセリフが観終わってみると意味がわかって怖いっていうところがあって震えました。

私の勝手な解釈で間違ってるかもしれませんが、学生同士で動物に自我があるのかみたいな話をするシーン。ここはジュスティーヌは動物にも自我があると主張するわけです。

人間と同じように動物にも自我がある、ってことは食肉として食われる動物にも自我がある。動物も人間も同じ。ということは人間が食肉として食われても・・・みたいな。怖い!

もうひとつは、アレクスの指切断事故、なくなってしまった指先は飼い犬が食ってしまったということになってしまったようで、父からの連絡でその犬は殺処分すると。

なんでかっていうと、一度人間の肉の味を知ってしまった動物は危険だから、だって。これって、人間の肉の味を知ってしまったのは犬じゃなくって・・・怖い!

ひたすら気持ちが悪くて、到底感情移入できない感じで映画は続くんですが、グロとか人肉食っていうはメインテーマではなくって、本来のテーマを伝えるための映画的表現のひとつって感じです。

本来のテーマっていうのは、思春期の少女が変わっていく、成長していくことを描いているということと、姉妹、家族の愛。

謎に見えたアレクスの行動は、持って生まれた避けられない、自分と同じ苦悩を抱えるであろう妹への愛から来るものですし、両親も子供の事を思って目覚めさせないよう苦労してきたということが明かされるわけです。

思ったのは、フランス映画の独特の雰囲気で、エグい導入部分から離脱してしまうことなく観れちゃったなってことです。描き方次第では気持ち悪くって観るのをやめちゃってもおかしくないです。

仮に同じストーリーで日本映画の典型的な撮り方だったら、不愉快さだけしか目につかなくて5分でギブアップだったでしょう。

なんにせよ、正月早々から観るような作品じゃないです。面白い映画ですけど、正月とか晴れやかな雰囲気の時じゃない時に観ると良きです。

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