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フランス暴動は「差別と格差」のせいなのか

日経新聞が「フランス暴動1週間、格差・分断を露呈 パリ五輪に課題」という記事を出しています。

記事には次のようにあります。

今回の暴動はフランスが抱える差別と格差という根深い問題を改めて露呈させた。

パリやマルセイユといった大都市周辺には、低所得者が多く政府から政策介入が必要との指定を受ける「バンリュー(郊外)」と呼ばれる地域が多く存在する。仏国立統計経済研究所(Insee)によると、こうした地域の貧困率は平均43%と、全国平均(15%)を大きく上回る。
バンリューにはアフリカなどからの移民やその子孫が多く暮らし、人種問題と貧困が複雑に絡み合う。射殺された少年の母は事件後、息子が「アラブ人の顔つきをしていたから」撃たれたと発言し、人種差別が原因だと主張した。

日経に限らず、日本のメディアはどこも、今回の暴動は「差別、格差」のせいだと書いています。

産経は

暴徒の多くはアフリカ系移民出身の10代の若者。経済格差や差別への不満が噴出した形で、マクロン政権は押さえ込みに懸命となっている。

ナンテールは北アフリカ系移民が多く、警察に射殺された少年はアルジェリア系の移民2世だった。壁のあちこちに「警察に死を」「警察は人種差別主義者」など、憎悪の言葉が赤ペンキで書かれていた。

と書いている。

日テレは、これは「差別」に対する「抗議デモ」なのだと報じている。


NHKは「フランス帝国主義」「植民地支配」が差別と格差をもたらしているのだと明言しています。

「郊外」が抱える課題は、フランスの植民地支配の歴史と密接につながっています。帝国主義の時代、フランスはイギリスなどと競い、中東やアフリカも侵略して、広大な植民地を支配しました。なかでも、なかなか手放さなかったのがアルジェリアで、アルジェリアは8年に及ぶ激しい独立闘争を余儀なくされました。しかし、独立後も、フランスと旧植民地の経済格差は深刻で、多くのアラブやアフリカの人たちがフランスに仕事を求めてやってきました。こうした人が多く移り住んだのが「郊外」です。  
 死亡した17歳の少年もアルジェリア系でした。「少年はアラブ系だから殺されたのではないか」という人種差別への怒りや、「郊外」での苦しい生活に対する不満が、人々の抗議行動の背景にあるのです。

ヨーロッパではこれまでも、北アフリカ系移民が事件や騒動を起こすたびに差別と格差のせいだと主張する政治家や有識者が現れ、メディアも差別と格差のせいだとさかんに書きたててきました。

しかし、今回の暴動を差別と格差のせいにする論調には多くの問題があります。

第一に、

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