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プルースト効果

先日、フランス文学の授業を受けた際に、プルースト効果というものを習った。特定の匂いが、その匂いに結びついた過去の記憶や感情を呼び起こす効果のことを言うらしい。

興味を持った私は、プルーストの名著『失われた時を求めて』の、プルースト効果が実際に用いられている部分、いわゆる、「マドレーヌの場面」を読んでみた。(吉川一義訳ver)

「過去は知性による努力で想起することができない。過去は偶発的な物質的対象との出会いによって想起することができる。」という抽象的で判然としない前置きから始まり、その後にこの前書きを裏打ちする「私」(主人公)の体験が語られた。その「私」の体験は概ね以下のようなものであった。

マドレーヌのまじった紅茶を飲んで、私は未体験の快感を覚え、それが何に起因するか突き止めるために知性によって再現を必死に試みるが、ことごとく失敗する。私が怠け癖を発動させ、「過去」から目を逸らし、今日の心配事や明日の望みに想いを馳せて紅茶を飲んだところ、叔母との思い出が思い出されて、当時の私の住環境も鮮明に蘇った。

私はこのお話を、「気を張りすぎない方がうまくいく」ということだと解釈した。過去の想起は人為の及ばない範疇であり、また、偶然の産物でしかない。だから、「なんとしてでも思い出そう」と頭を抱えて苦悶するよりも、気を抜いて、過去の身体的体験を偶然にも再体験することに賭ける方がいい。ということなのではないか?

プルースト効果よりも広い意味を含む言葉として、無意志的記憶現象がある。

過去と現在の感覚の一致という偶然の 作用によって、私たちの意志や知性の働きを介さずに、過去の真の印象=真の現実がおのずから意識の表面に浮かび上がってくる現象

無意志的記憶『失われた時を求めて』 の原母体 武藤剛史

らしい。無意志的記憶現象は現代でも盛んに援用されていると思われる。
ex:帰郷し、近所の公園に行ったら、公園で遊んだ幼少期の記憶がふと思い出される。とか
よくあるシチュエーションだと思う。
フランス文学のことはよくわからないが、現代でも盛んに用いられている叙述方法を、20世紀初頭のうちに初めて?実践してみせたプルーストは確かに偉大なのだろう。



追記
フランス文学なんて全く興味がなくて、今回初めて触れました。というか、海外文学なんて読んだことがなかったです...
たったの数ページ読んだだけですが、かなり多くのことを学ぶことができたので、各国の代表的作家の代表作くらいには目を通してみようと思います。

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