五十嵐亮

新潟県長岡市の弁護士。弁護士法人一新総合法律事務所所属。労働法関連や交通事故の案件を多…

五十嵐亮

新潟県長岡市の弁護士。弁護士法人一新総合法律事務所所属。労働法関連や交通事故の案件を多く取り扱う。 一新総合法律事務所の企業法務サイト⇒https://niigata-common.com/

マガジン

  • 人事労務担当者のための労働法解説

    人事労務担当者のための労働法解説を書いています。 労働法を体系的に理解することを目的としています。 主に、以下の文献を参照しています。 菅野和夫『労働法』(弘文堂) 土田道夫『労働契約法』(有斐閣) 西谷敏=野田進=和田肇編『労働基準法・労働契約法』(新基本法コンメンタール)(日本評論社) 佐々木宗啓ほか編『類型別労働関係訴訟の実務』(青林書院) 倉重公太朗編『企業労働法実務入門』(企業人事労務研究会)

最近の記事

人事労務担当者のための労働法解説(12)

【賃金保護のための法規制】 賃金は、労働者の生活の糧となる重要な労働条件であることから、賃金の全額が確実に労働者の手元に渡る必要があります。 そのような観点から、労働基準法は、賃金の支払方法について規制を設けています。 1 賃金支払に関する4つの原則労働基準法では、賃金が確実に労働者の手元に渡るようにするために、  ①通貨払の原則  ②直接払の原則  ③全額払の原則  ④毎月1回以上定期払の原則 という4つの原則を定めています(①~③は労働基準法24条1項、④は2

    • 人事労務担当者のための労働法解説(11)

      【休業手当について】 労働基準法26条に休業手当の定めがあります。 どのような場合に休業手当を支払う必要があるのか、いざというときに焦らないためにも、きちんと押さえておくとよいでしょう。 1 休業手当とは 労働基準法26条は休業手当について以下のように定めています。 (休業手当) 第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。 ノーワークノーペイの原則からする

      • 人事労務担当者のための労働法解説(10)

        【賃金の定義と賃金請求権について】 今回は労働基準法における「賃金」の定義と賃金請求権の発生について書きたいと思います。 労務提供が履行不能となった場合に賃金請求権が発生するか否かという問題は、実務上問題となることが多いため基本的な考え方を押さえておくとよいでしょう。 1 賃金の定義 労働基準法11条は、 「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」 と規定しています。 この定義規定は

        • 人事労務担当者のための労働法解説(9)

          【試用期間について】 新たに採用した労働者に対して試用期間に設けている企業は多くあると思いますが、試用期間だからといって、自由に本採用拒否ができるのでしょうか? 1 試用期間とは何か?試用期間とは、労働契約成立後(採用後)、使用者が労働者の職務能力や適格性を判断し、正社員として本採用するか否かを決定するための期間です。 試用期間は、3か月~6か月程度の期間を置き、就業規則に、「試用期間満了時までに従業員として不適格と認めたときは解雇し、または本採用しない」と定められること

        人事労務担当者のための労働法解説(12)

        マガジン

        • 人事労務担当者のための労働法解説
          12本

        記事

          人事労務担当者のための労働法解説(8)

          【採用内定取消しの注意点】 前回は、採用内定の法的性質について書きました。 採用内定は、始期付解約留保付きの「労働契約」が成立したと評価されるため、解雇権濫用法理の規制が及ぶことになります。 今回は、採用内定取消しの適法性が問題となった裁判例をみていきたいと思います。 1 リーディングケースとなった大日本印刷事件 大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決・労働判例323号19頁)は、新卒で採用内定をもらったが、入社前に内定取消しをされたという事案です。 会社側が主張

          人事労務担当者のための労働法解説(8)

          人事労務担当者のための労働法解説(7)

          【採用内定の法的性質について】 企業においては、採用予定の者に対し「採用内定」を出すことがあると思います。今回は採用内定の意義や、採用内定=契約成立なのか?という点について書きたいと思います。 1 採用内定の意義?   契約は、申込みの意思表示と承諾の意思表示の合致によって成立します。  採用は、使用者が労働者からの契約の申込みの意思表示に対する承諾の意思表示なので、正式に採用した段階で、労働契約が成立することに争いはありません。  正式に労働契約が成立すると、労働契約法1

          人事労務担当者のための労働法解説(7)

          人事労務担当者のための労働法解説(6)

          【求人票の記載と実際の労働条件が異なる場合はどうなるのか?】  求人票の記載と異なる労働条件で労働者を雇用する場合、労働者側から、「求人票には○○と書いてあったのに」と主張され、トラブルになることがあります。  今回は、労働条件明示義務と実際にトラブルになった裁判例について書きたいと思います。 1 労働条件の明示義務  労働条件明示義務は、労働基準法15条で定められています。  労働基準法15条1項は、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他労働

          人事労務担当者のための労働法解説(6)

          人事労務担当者のための労働法解説(5)

          【採用について】 普段何気なく採用活動を行っていると思いますが、採用には意外なリスクが潜んでいますので、注意が必要です。 1 採用とは?  労働法の場面において、採用とは、使用者が労働者からの契約締結の申  込みを承諾し、労働契約を締結することをいいます。  いったん労働契約を締結すると使用者による一方的な解雇が厳格に制限されている日本においては、より良い人材を採用したい、反対に問題のある人物を採用したくないという考えが働くことは当然のことです。  労働契約も契約の一種であ

          人事労務担当者のための労働法解説(5)

          人事労務担当者のための労働法解説(4)

          【労働者と業務委託の違いは?】 「委託」や「請負」という名称であっても、実は業務実態をみれば、「労働者」であると認定される場合があります。  思わぬところで足をすくわれないように注意したいところです。 1 労働者とは? 労働者とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者」(労働基準法9条)をいいます。労働契約法2条1項にも労働者の定義規定がありますが、ほぼ同じ内容です。 2 労働者に該当するとどうなるのか?  労

          人事労務担当者のための労働法解説(4)

          人事労務担当者のための労働法解説(3)

          【労働条件の設定方法】 労働条件の設定方法には労働契約、就業規則、労働協約等があります。 抜け漏れがあったり、相互に矛盾があったりすると思わぬトラブルになることがあります。 それぞれの方法の特徴を押さえておきたいところです。 1 はじめに 法律上、労働条件という用語がしばしば登場しますが、「労働条件」についての定義規定はありません。一般的には「労働契約関係における労働者の待遇の一切」と定義されます。 前回、労働契約の権利・義務について書きましたが、労働条件には、労働者の「権

          人事労務担当者のための労働法解説(3)

          人事労務担当者のための労働法解説(2)

          【労働契約によって生じる権利義務とは?】 今回は、労働契約によって生じる権利義務について書きたいと思います。 労働契約の性質上、使用者も労働者も様々な権利を有し義務を負います。 企業を運営していくに当たってはこのような様々な権利義務が機能する必要があります。 総花的な話で退屈ではありますが、各論を理解するうえで重要な視点ですので、是非押さえて頂ければと思います。 1 労働契約とは~おさらい 労働契約とは、労働者が使用者の指揮命令の下で労働を提供し(労務提供する義務)、使用者

          人事労務担当者のための労働法解説(2)

          人事労務担当者のための労働法解説(1)

          【労働契約とは何か?】今回は、労働契約とは何か?ということについて書いていきたいと思います。 1 労働契約とは? 労働契約とは、労働者が使用者の指揮命令の下で労働を提供し(労務提供する義務)、使用者がその対価として賃金を支払う(賃金支払を支払う義務)ことを内容とする契約です。労働契約法6条に定めがあります。 労働契約の締結の基本的な効果として、 労働者には、①労働者が使用者に対して労務を提供する義務が生じ、 使用者には、②使用者が労働の対価として賃金を支払う義務が生じます

          人事労務担当者のための労働法解説(1)