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ドロドロに溶いた豆腐って飲んだことある? 映画「チョコレート・ファイター」(感想)

 ひとっ風呂浴びたあとに、うっすい低脂肪乳(カルシウム増し増し)を飲んで「フゥゥウーーー!!」ってやる感じを得るために借りてきた本作。タイ発アクション映画「マッハ!!!!!!!!」のプラッチャヤー・ピンゲーオ監督作、期待値大。

観客様はみな鰯 咽喉が鳴ります牡蠣殻と

 もうお口ぽかーーーーん。ストーリーもアクションも濃密すぎて、目をまんまるにして顎をカクッと下げてただただモニターを見ているしかない。

 脳に障害のある少女が、何故戦うのか? プロットの時点で全然バカ映画じゃなかったー!!!! 母の医療費のため、昔母が貸していたお金を取り立てに行く。ただその金貸しをしていた経緯も相手も悪かった!!!!

 主人公の少女ゼンは、ムエタイジムの練習をいつも窓から見ている。彼女の特別な能力が、見ただけの情報から自分の体を完璧にコントロールして再現させる。そして優れた知覚も相まって、最強のソルジャーを内に秘めていた。戦いの中でだけ彼女の目には火が灯り、それ以外ではどこか焦点も合わずゆらゆらと体を揺すっている。

 母を救うことと戦うことが直結してしまう虚しさが、彼女のもつ障害であり能力を浮き彫りにする。大好きな母親と一緒にいたいという思いただひとつが、周りのどんどん状況を悪化させていく。

アクションが物語を紡ぐ

 圧倒的にセリフが少ない。ゼンがどうやってものを知覚しているかを、視線の動かし方、まばたき、そして音の反響やスローモーションによって常人とは違う時間の速さで捉えている様を表現する。頭の中でどのようなロジックを辿っているのかを、彼女の視点からのショットの連続で「これを見て、こっちを見て、あ、だから次はこうする」と観客に理解させる。それらのスピード感がとても心地よいけど、処理すべき情報がものすごく速く流れてくるので画面に釘付けにならざるを得ない。

 初めて格闘に目覚めた瞬間は、過去に見たアクション映画(ちなみに「マッハ!!!!!!!!」)のモノマネだったのに、実戦の中でそれが彼女のモノになってくる様。これまで出会ったことのないタイプの敵との戦いで、序盤はやられていたのにどんどん動きをトレースして遂に相手を超越する瞬間。どんどん戦いの中で成長していくアクションの設計が濃密すぎる!!!!(そして戦いの中でしか成長しないという対比も刺さる) 

 この映画には、あらかじめ突き刺さるはずの柵や牛のはく製なんてものはない。腰より低い高さしかない場所でどう戦うか? 幅30cmの場所でどう戦うか? なぜその武器を手にしたか? すべての展開に物語としての解答がある。その場にある物を駆使したアクションが「設計されたアクション」と全く感じさせないセッション感を生み出している。

こんな衝撃「マッハ!!!!!!!!」以来、「マッハ!!!!!!!!」の20倍

 嘘じゃない。だってマッハ!!!!!!!!を初めて見たときも本当に衝撃的だった。そこからストーリーもアクションも、クオリティがとんでもなく上がってるし、物語とアクションがちゃんと両輪として機能してるからめちゃくちゃ面白いんだよおおおお!!!!(泣) 特にストーリーの濃度が上がってるからアクションの雄弁さが極まってるんだよおおおお!!!!(泣)

 エンディング後の、ジャッキー・チェン映画風NGシーン集が、もはや事故映像。えげつない負傷シーンの数々を見せられて、映画の中よりもイタイイタイイタイイイ‥!!ってなる。そしてそれよりも恐ろしいのは、この事故映像集、「最もひどいシーンを集めました」というより「見せられるのはこれだけでした」とすら思わせるところ‥。もっとひどい事故絶対起きてただろ!!!!

まとめ

 人間ってここまでやれるんだ‥。よくやったよ、本当に。観終わったあとはため息しか出ない。ねえ、風呂上がりにうすい牛乳飲もうと思ったら、あれっ特農?!いや生クリーム?!もしかして甘酒?!‥いやいやドロドロに溶いた豆腐だったーー!!!!って経験したことある? 本当に濃密なたった100分、これは本当に観て、よかった!!!!!

 2018.11.2のコンテンツ会議で紹介していただきました! note公式さんありがとうございます!


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