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いけばなの舞台     広瀬典丈

「いけばなの舞台」
 以前、言葉を持たないいけばな表題=名前は、語るべき考えを補う道具ではなく、ものごとをぶつけて映像を結ぶレトリックだと言いました。このボクオブジェ木曽川から流れ味噌川ダムで上がった流木に、真鍮板を貼り付けたものです。水主(みづち)水の神ボク量塊流木の由来を示す名前が付きました。

左 名古屋松坂屋ホール展示作             右 大阪高島屋合

「はなの題名」
 「
水主(みづち)は、201718両年いけばなスペース花展を飾りました。最上段の作は2018年第11回有松町並保存地区山田邸に置いた、ノバラを添えたもの。
 上左は、名古屋松坂屋ホール開催の草月会愛地県支部出品時の展示。
 上右は、大阪高島屋開催の第51回日本いけばな芸術展ノバラを添えた合作展示。(広瀨典丈榎本とも子斉藤沙映中村香令山口渓晶)

     絞 オマージュ ①第15回展「倣玉つなぎ」②第6回展「倣嵐絞」③第1回展「青海波」

「見立て」 
一連のいけばなスペース合作には、小紋名や絞技法名がつけられています。これももちろん技法の説明ではなく、小紋有松絞への敬意と「見立て」が醸し出す効果がねらい。「心の説明としてものを作る」のは順序が逆で、「ものに即して心を感じる」のが「見立て」です。
 上3作はいずれもいけばなスペース花展合作

          古典花 左より 池坊立花・嵯峨御流生花・真道流生花・松月堂古流生花

「型」
 
立花生花」、流派によって「格花流儀花」などと呼ばれる、江戸昭和期に編みだされた、特定のを真似て作るスタイルがあります。
 絵画彫刻建築での「模写模倣」も、「そっくり真似る自由解釈」まで、さまざまな方法がためされ、生み出されました
 短歌の「本歌取り」も、古人思い追体験 しながら、別視点を取って新たに見せる技法。「網目のように組み重ねられて来た過去に対する敬意」と、「自身の今の立ち位置」を確認していく試みです。

          古典花 左より オモト・嵯峨御流生花・真道流生花・松月堂古流生花

葉組み
 江戸時代中末期に確立したいけばな古典的なレトリックに「葉組み」があります。当時園芸市場も活況を呈し、本草学の知識から、植物植生出生を重視する「葉組み」の方法とミックスした「生花形式」が生まれました。しかしこれは必ずしも「自然の模倣」ではなく、「理想化された自然」の内に、あるべき「美の形」を見い出す努力です。作例は全て広瀬典丈作。

  音楽との共演 ①フルート(坂本実奈美)・②ギター(関将)・③琴(杉浦充)・④チェロ(有泉芳史)

「音楽との共演」
 最近複数分野の共演によるパフォーマンスが増えています。いけばなはもとより、歌唱演劇踊りから彫像建築に至るまで、全て融合した教祭礼儀式空間がありました。はなをいける様ショー化は勅使河原蒼風がはしりかも知れませんが、手練れ職人の動きには無駄がなく、今や料理見る食べるイベントです。いけばな作者が習熟した職人と言えるかはともかく、音楽とつながる場を頂ける僥倖を私は楽しんでいます。


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