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教えるプロがインフルエンサーを目指してはいけない理由

インフルエンサーの「あなたにもできる」は、前提を疑え

 インスタグラムのフォロワーが30万人近くいるインフルエンサーの方が登壇するイベントに、聴衆として参加する機会があった。聴衆もやはり、自分の好きなこと、得意なことを発信してインフルエンサーを目指したいという方が多いようで、活発な質問タイムとなった。

●とにかく発信していけ!と、ある先生に言われたけど、どこからどうまとめたらいいか分からなくてとっちらかっている
●生き様をさらせ、ワクワクを追求せよ、と言われたが、興味の範囲が料理、食べ歩き、旅行、面白い人など様々で、ぜんぶワクワクする。一体どうやって発信すればいい?
●過去の経験を発信したいが、どこから始めたらいいか、何をどう発信していけばいいか分からない
●自分の病気克服体験を発信したいがどのツールが最適か?

 など、様々な質問があり、インフルエンサーの方も丁寧に回答していた。大変ためになる時間ではあったが、一部、「それはインフルエンサーにすでになっているあなただからできることだよ」と感じることもあった。

 「私も最初はフォロワーゼロだった、だからあなたもできるよ、私のようになれるよ」という論法は、半分正しく、半分間違っている。

 フォロワーゼロだったときに、何から初めてどう工夫してフォロワーを増やしたか、は、これからスタートする人にはとても価値がある情報だ。しかし、今何をやっているか、どんな工夫をしているかをインフルエンサーに聞いてしまうと、知りたい答えは得られないことが多い。それは「今、インフルエンサーにすでになっているあなただからできること」だからだ。

 「あなただからできたんでしょ」は思考停止の言い訳だ、と言われることが多い。そんな暇があったらとにかくやれ!という人もいるだろう。しかし、本当に「あなただからできたんでしょ」と言わざるを得ないときもある。

 すでにインフルエンサーになった人のやり方が、これから個人の名前を立てて生きていく人にそのまま役立つとは限らない理由は次の2点だ。

1. マーケティングデータを集めるための環境がそもそも違いすぎるから
2. 常に新しいサービス、ネタ、話題を追い続けなければいけなくなるから

順番に説明しよう。

1. マーケティングデータを集めるための環境がそもそも違いすぎるから

 インフルエンサーはすでにフォロワーが多い。自分の考えをフォロワーに投げれば、その反応で自分のすべき道が分かる。つまり、発信することでマーケティングデータを瞬時に集められる。いまからやろうとしていることが成功しそうかどうかは、フォロワーがどう反応したか、アンチがどう反応したかで大体アタリがつく。だから、即行動に移せるのだ。

 インフルエンサーは行動が早く発信量が多い。だから自分も行動を早くして、発信量を増やそう、考えるより動こうとするのは間違いだ。インフルエンサーは、インフルエンサー「だから」、行動が早くても問題ない、というだけの話だ。まだフォロワーが少ないうちに、インフルエンサーのマネをしてはいけない。

 まだフォロワーが少なく、発信もまだ少なく影響力も少ない状態では、発信しても反応が薄いかゼロだ。だから、自分の発信や今後行くべき方向性が良いのか間違っているのかを、ネットで発言してマーケティングデータとして収集することは難しい。

 私たちがまずすべきは、ネットの発信で反応を探ったり、バズる記事を書こうとタイトルを工夫することではない。足を使って、現場のナマの声を聞くことだ。自分が提供しようとしている価値が、果たしてニーズがあるのかどうか。それは、実際に会って、話して聞いていくしかない。

 「こんな人に役立ちそうだ」と思った自分の価値にアタリをつけたら、3人〜5人くらいの候補の人たちに、「こんなことを教えようと思っているんだけど」と、実際に会って聞いてみよう。会うのが難しければ、メールでも良いから直接コンタクトし意見を聞いてみよう。その結果「いけそう」だと感じた仮説を、コンテンツ化してネットに投げるのだ。その順番を間違えてはいけない。

 自分の足で経験を積み重ねる。ナマの声を聞く。そこからまずはじめよう。

2. 常に新しいサービス、ネタ、話題を追い続けなければいけなくなるから

 インフルエンサーという職業は大変だ。人の興味が常に移り変わり、炎上したことすら2週間後には忘れられてしまうような世の中で、常に新しい話題、新しいネットサービス、新しい儲かるネタ、新しい生き方やライフスタイルを追いかけなければいけないからだ。

 ブログ、ツイッターの黎明期に、たまたまブログ、ツイッターで有名になったから影響力を得ることができた人は大勢いる。その成功体験があるから、今後ブレイクしそうなサービスをいち早く試して先行者利益を得ようとする。すでに影響力がある人が新しいサービスを使えば、ランキングは(すでに有名なので)当然上がる。

 VALU、Timebank、Voicyなどなど、新しく話題になるウェブサービスのランキング上位は常に、いつもの見慣れた人ではないか。それは、いち早く試して最初のパイを取ろうと、一生懸命最新のツールを追っているからだ。

 もちろん伝えるツールは大切だ。どのツールを使うかで、自分の主張がより多くの目に止まり、本当に必要な人に届く可能性も高まるからだ。しかし、私たちは有名人になることがゴールではないはずだ。有名人になったとしても、それはあくまでも過程だ。

 「教えるプロ」となって、過去の自分のように困っている人たちに手をさしのべる存在になりたいのなら、新サービスや新しいネタを追いかけてアクセスを稼いでも意味がないし時間のムダだ。自分の教える技術の刃をコツコツ研ぐことのほうがよっぽど大切だ。

 先行者利益を得ようと新しいサービスに飛びつく必要はない。せっかくインフルエンサーが頑張って新ツールを試してくれているのだから、「私たちのためにどうもありがとう」と感謝して、流行が落ちついて定着したツールを、あとで使えば良いだけだ。

 新しいネタをやみくもに追う必要はない。本当に良いコンテンツを必要な人に届けるためには、知名度をあげようと考えて外の環境に右往左往せず、今ある自分の価値をしっかり掘り下げることから始めよう。自分の中にあるネタを探り、それをコンテンツ化(商品化)する商品開発力こそ、教えるプロには必要だ。

コンテンツ主義になろう。

<まとめ>
●すでにインフルエンサーになった人がやっている方法をやみくもにマネしてはいけない
●マーケティングデータはネットからではなく足で集める
●教えるプロになりたいなら、新しいサービスやネタを追うのではなく、自分の価値を掘り下げ、コンテンツを作ることに時間を使う

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