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「好きを仕事に」難民にならないための天職の見つけ方

 「好きを仕事にしたい」「自分らしく仕事をしたい」「自由に生きたい」というフレーズは、独立起業を目指す人には甘く心に響く。しかし私は、このフレーズほど、誤解を招く表現はないと思っている。

 このフレーズのせいで、「好きを仕事にしなければ独立する意味はない」と思い

●自分が夢中になれるものをずっと探し続けて独立できない
●好きを仕事にしたら、お金にならなくてジリ貧
●好きを仕事にしたせいで、好きだったことも好きじゃなくなってしまって辛い
●贅沢なライフスタイルを見せて憧れさせ「私のようになれるよ」と誘う高額講座に引っかかる

 といった「好きを仕事に難民」が増えているのではないか?と思うのだ。

 もちろん、好きを極めて仕事にしている人もいる。たとえばさかなクン。お目にかかったことはないけれど、きっと彼にインタビューをしたら「魚が大好きで大好きで、夢中になっていたらいつのまにかそれが仕事になっていました」と言うだろう。

 夢中になれるものを見つけることができた人は幸運だ。その道を突き進めばいい。しかし、私を含めた大多数の人は、小さいころから好きで好きでたまらなくて、もうこれを仕事にする以外に考えられなくて、寝ても覚めてもそのことだけ考えていて、寝る間を惜しんで没頭した、なんて経験は、まずない。

 夢中になれるものを見つけようとするから迷うのだ。もちろん夢中になれるものを見つけられたら本望だが、なかなか見つからないのなら、嫌だったりユウウツだったり、つらかったりするもの、でもどうしてもそれを求めざるを得ないものを仕事にする。ダメな自分を目の当たりにするけれど、それでも諦めきれずに理想の未来を求めて努力する。そのプロセスを経たゴールがとてもすがすがしく、やめられない。それが「好きを仕事にする」ということではないかな?と私は考える。

「夢中」は、「ときめき」の顔をしているとは限らないのだ。

 自分のダメさかげんを目の当たりにしてもう這い上がれない、ということだってある。アイタタタ、なこともたくさん経験する。でも、ぜーんぶ振り返って自分の歴史を眺めてみると、「私、意外といけてるんじゃない?」と思える瞬間はきっとある。それを見つけることが「好きを仕事に」の本質なのではないだろうか。

 例えば私の場合、今でこそプレゼンや資料作成の方法を研修や講演で教えることが多いが、もともとはひどいあがり症で赤面症だった。人前に立つと思うと3日前からユウウツで仕方がなかったし、カンペを持つ手が震えて、ここ一番のプレゼンでどこを読んでいるか分からなくなって固まったこともある。

 でも、そんな自分でも、一生懸命準備したスライドが分かりやすいと言ってもらえたこと、ためになったと言ってもらえること。その一言が嬉しくて、どうしてもうまくなりたい!と、プレゼンの手法や図解を徹底的に分析し、口ベタでもあがり症でも話せるためにはどうしたら良いかを研究した。プレゼンの前には必ず、自分ひとりで大きな鏡でリハーサルを続けた。

 そんなことを続けた結果、プレゼンや図解の本を出せるようになり、講師としてプレゼンを教えることができるようになった。今も緊張して胃が痛くなることもあるし、取りかかる前はユウウツになったりもするけれど、受講生が変わっていく姿を見ると、やっていて良かった、と思う。

 本当の自由とは、果たして、お金がたっぷりあって何もしなくて良いことなのか。ワクワクして楽しくて仕方がないことを見つけることなのか。私はそうではないと考える。創意工夫を続けて、泥臭いことを続けながらも自分が理想としている未来を、自分の事業を通じて実現していくことこそ、本当の自由だし、好きを仕事にしていることだ。

 起業とは、あなたの人生を掛けて挑むプロジェクトだ。寝ているだけでラクラク稼ぐなんて道は存在しない。しかし、試行錯誤して見つけたあなただけの道を周囲に伝え、そのプロセスを通じて多くの人を喜ばせることができ、関わった人の人生を変えることができる。それこそ、起業の醍醐味だと私は思う。

 自由な人生を送りたければ、今の不自由を愛そう。そして、不自由の中からどうやって創意工夫してきたかの記録を残していこう。不自由から自由を見つける方法こそが、あなただけが知っていて、みんなが知りたいことなのだ。

 夢中になれるものが見つからないのなら、嫌でユウウツで辛いのに、どうしてもやめられなくてずっと続けていることを探す。そこに「好きを仕事に」のヒントが隠れているはずだ。

写真は、強い雨でも傘が重くても「じぶんでやる!」と傘を持つとら(息子)。傘が重くても、じぶんでやることに意味があるんだよね。

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