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感覚的な「好き」に、理由なんてない。島時間が教えてくれたこと【6月29日〜7月1日 北海道礼文町】

稚内の道の駅で目覚め、駅弁を買って。朝からそわそわ。そう、今日は礼文島へ渡る日。北海道旅の中でもとても楽しみにしていた。あいにくの雨だけど、ワクワクは止まらない。いそいそと、フェリー乗り場へ。

約2時間、波が穏やかで揺れも少ない船内で駅弁を食べてごろごろしていると、あっという間に到着。最北の島へ上陸!とあって、車内で歓声をあげてしまうテンション高めの私たち。フェリー降り場周辺は、昔ながらの港町といった風情。数少ないながらもホテルや温泉、お土産物屋さん、海鮮料理屋さんなどが軒を連ねている。洗練されすぎない、その感じがなんだかとてもいい。ウミネコの声に誘われて、さっそく島内をドライブしてみることに。

礼文島は、島の北端から南端まで1時間かからないほどの小さな島。道もわかりやすいので、ドライブに最適。まずは南端にある「北のカナリアパーク」へ。高台へ上がったところで車を降りると、海に向けて広大な丘が広がっていた。遠くには、おとなりの利尻島も見える。ウミネコの声、穏やかな風。「あ、私、ここが好きだ」瞬間的に、そう感じた。先に車を降りて散策していた娘と主人と合流し、しばし、周囲を散策。

廃校になった小学校校舎のおとなりには、遊具もある。あ、ここは映画のロケ地として有名な場所だったのね。娘と童心にかえって遊んだり、コーヒーを淹れて飲んでみたり。

足元に咲く小さな花々も、とてもいい。そうそうこの島は、花が有名なのだった。低い標高にもかかわらず、さまざまなめずらしい高山植物に出会えるという。明日は花も見に行ってみたい。

そうだ、フェリーで手にした冊子に、メノウ石がたくさんある浜があると書いてあった。調べると、10分ほどで行けそう。娘に聞くと、「拾いたい!」と即答。車を走らせる。「メノウ浜」と名付けられた砂浜に降り立ち、しばし石拾い。遠くまで見渡せる景色と、透明の海、ウミネコの声。冷たい小雨が降る曇天だけど、やっぱりここも、好きだと感じる。この感じ、不思議だな。

さて、メノウ石。娘と主人と3人、あちこち散策したり、石の山を掘ってみたり…しばらくすると、「あった!!」と、娘の声。見ると、おぉ、それはシーグラスだね。でもとってもきれい。娘に「メノウはね、白っぽくて…」と説明しようしたら、「知ってる!!」と。もともと人から教えられるのが大嫌いな娘、まったく聞いてくれず。笑 まあ、シーグラス探しもいいよね。とにかくキレイな石を探してみよう。

石探しに集中すること、1時間ほど。結局、メノウっぽいのはひとつだけだったけど、たくさんの美しい石を拾い集めて、大満足。近くの温泉で冷えた身体をあたためると、主人がそわそわし始めた。「ウニ行こう!」と子どものようにはしゃいでいる。そう、礼文島のお楽しみのひとつは、旬真っ盛りのウニを味わうこと。ワクワクが止まらないまま、漁港近くのお店「かふか」へ。

お品書きの中から、ウニ丼とほっけのちゃんちゃん焼き、お寿司などをチョイスして、待つこと数分。来ました来ました、お待ちかねのウニ丼!とっても貴重なエゾバフンウニが、どっさり♡

ひとくち口に入れた主人、「これは…すごい!」と、言葉にならない様子。あはは、顔がとろけている。私もいただくと、ふわぁ、と口の中でとろけ、そして後味に全く臭みがない。これは、確かに絶品〜!

そしてこちらは、ホッケのちゃんちゃん焼き。ホッケの上にネギ味噌がたっぷりのっていて、いい香り。ほぐして一口いただくと、ほろっほろでふわっふわの食感。今まで食べていた干物のホッケとはまったく別物のよう。わぁ、これは本当に美味しい〜。この味、この大きさで800円とは感動!私の中のホッケ観を塗り替えた逸品だった。

礼文島の豊かな食を堪能して大満足の私たち。今夜は北部にある久種湖畔のキャンプ場で眠ることにした。静かで幻想的な夕暮れのキャンプ場に、キャンピングカーや車中泊の車、ライダーさんのテントがポツリポツリ。雨だけど、とっても冷えるけど、楽しいなぁ。寝袋に入った私は、自分が心から満たされているのを感じた。

翌朝。みんなが寝静まっているキャンピングカーを抜け出して、外へ。鳥の声がすごい。朝から美しいハーモニー。いったい何種類の鳥がいるんだろう。みんなが起きたら、お散歩に出かけよう。

娘が起きて、主人も起きて。お隣で車中泊していたご夫妻と、あれこれ旅の話を。岐阜から車中泊しながら、2人で長い旅をしているという。素敵な生き方だなぁ。「私たちはこんなに食べないから」と、お米を分けていただいてしまった。息子さんが育てているという無農薬米。丁寧に、1合ずつ袋詰めまでしてある。わぁ、ありがたくいただきますね。お心遣いに、感謝。

朝ごはんは、娘が作ってくれた海苔巻きをごちそうになる。この旅で、少しずつ「当番」みたいなのを決めたりしているが、今日は娘が食事係。他には、掃除や片づけをする「お部屋係」や、息子のお世話をする「たすく係」もある。強制するとイヤになってしまうので、娘の気分が乗っているときだけだけど、それでも、旅という助け合いが必要な場を、感じてくれるといいな。

娘の変化といえば、この旅で、ちょっとだけ柔軟になったかな、と思う場面が何度かあった。これまでは、一度何かを言い出したら、決してそれを曲げることはしなかったのだけど、ときどき、「ま、いいか」という言葉を聞くように。今朝も食後、湖畔のお散歩に誘ったら、「えー、疲れるから嫌だ」と言っていたのに、そのうち「疲れたら帰ってくるからね!」と条件をつけつつ、一緒に来てくれた。ちょっとしたことのようで、すごい変化だと私は思っている。

というわけで娘も一緒に湖畔の遊歩道を歩いていると、丘まで続く細い道を発見。このまま湖畔を一周するつもりだったけど、この先に行ったらどうなるんだろう。娘も「こっち行こう!」と冒険心が芽生えた様子。てくてくと、生い茂る草をかき分けながら、上り坂を歩く。少しして後ろを振り返ると、わぁ、すごい景色!久種湖が一望できる。ワクワクに誘われ、もっと上、もっと上へ。ちいさなベンチが置いてあるところまで到着すると、湖の向こう側に海まで見渡せる、素晴らしい眺望が広がっていた。わぁ、気持ちいい!

予期せぬ光景に気持ちが満たされる。下り道は、所々で静かに咲いている花たちを眺めながら、てくてく。心地よい朝時間に感謝しながら、キャンプ場をあとにした。

石拾いに続き、今日の娘のお楽しみは貝殻集め。貝が貝を食べることによってできる「穴あき」の貝殻がたくさんあるという。穴の空いた貝で、ネックレスとか指輪をつくりたい!とのことで、車を走らせて浜へ。降り立ってみると、そこはまさに貝殻の宝庫。探さずとも、無数の貝殻が積み重なるように足元に転がっていた。娘は大興奮。さっそく穴あき貝を見つけて、次々に集めていく。昨日に引き続き、シーグラスもいっぱい。私もアクセサリー、つくってみようかな。

歩いて拾って、少し疲れたので近くのカフェ「お休み処 談」でランチがてら休憩を。この島出身というマスターに、あれこれ訪ねてみる。中でも印象的だったのは、高山植物についてのお話。この島に花を鑑賞に来る人たちも多いのだが、ラベンダー畑や芝桜のように、花が一面にぎっしり咲き乱れているのとは様子が違うと言う。希少なことで有名な「レブンアツモリソウ」などは、島内に「群生地」があるけれど、そこも、ポツリポツリと咲いているだけ。人の手が加わっていない自然の花ってそういうものなのだ、と。

なんだかこの話、私はとってもしっくり来た。意図してつくられたひまわり畑や一面に広がるラベンダー畑も圧巻なのだけど、私がこの島に来ていいな、と感じていたのは、あちらこちらで感じられる、素朴さや健気さ。ポツリポツリと、健気に咲く花たちがとても愛おしく、それを愛でて保護している島の人や旅人の影も感じられて、心がホッとあたたかくなる。自然に咲く花を維持するのは大変だし、観光用に植えることもできるかもしれないけど、そうはせず、できるだけ自然に近いままの姿を見せてくれている。そんな花々、そして人々が、私はとても好きだ。

レブンアツモリソウの咲く時期はとても短く、今年は1週間ほど前に終わってしまったのだとか。一期一会。今度来たときは、出会えるといいなぁ。

さて今日は最北限のスコトン岬にある民宿へ。久々にお布団で寝ようと、予約を取っていた。スコトン岬の駐車場に着くと、ものすごい強風、そして雨。民宿までは、徒歩で小さな階段を下らなければならない。強風に煽られながらも、娘を身を寄せ合いながら、なんとか玄関にたどり着く。えらいときに来てしまった、と思ったら、ここではこのくらいの風、普通らしい。キャンピングカーが倒れないかと心配する私を、「大丈夫ですよ〜」とやさしくなだめてくださった。

娘の表情のとおり決死の覚悟で向かった宿だったが、お部屋に入ってみると、いたって平和。眼の前の海には、ウミネコがすぐそこまで飛んで来ているし、アザラシも訪れるという。海に開けた露天風呂は、家族風呂として使わせてくださり、ぜいたくな時間を過ごした。そして夕飯。ウニ、お刺身、ヤナギノマイの煮付け、海鮮フライ、ウニ載せすき焼き…。礼文ならではの味覚が並び、大満足を超えたお食事だった。ふぅ、おなかいっぱい。ふかふかのお布団も、車中泊で縮こまった身体にやさしく、ありがたくてありがたくて。家族で9時には寝てしまい、朝までぐっすり心身ともに休ませていただいた。あぁ、回復。幸せ、幸せ。

翌朝、ゆっくりと朝ごはんをいただいたあとは、お土産を探したり、美しい岬の風景をもう一度堪能したり。最後まで曇天だったけど、礼文の良さを堪能させていただいたので、心から満足。稚内行きのフェリー乗り場へと向かった。

礼文島、あまり調べずに上陸したけれど、景色に、花に、海に、人に、いろいろなものに触れるたびに、なんだかとても「好き」だと感じた。この感覚に、たぶん、理由なんて無い。だれもが理由なしに心惹かれるものってあると思うけれど、きっと礼文島には、私にとっての感覚的な「好き」が詰まっていたのだと思う。また来たいと心から思うし、きっとまた来るんだろうな、と思える。普段は頭でばかり考えて、そういう感覚を見逃してしまうことが多いけれど、旅ではそれが花開くのがうれしい。「なんか好き」は、きっと自分自身にかえっていくきっかけとなるサイン。大切にしたい。

最北限の島を味わい尽くし、このあとは稚内、宗谷岬経由で道東へ。お天気が気になるけれど、新たな出会いを楽しみたい。「なんか好き」を見逃さずに。



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池田美砂子

フリーランスライター・エディター、2人の子どものお母さん。人の言葉をありのままに聞くことで本質を見つめるインタビューがライフワーク。現在は主にウェブマガジン「greenz.jp」にて、「ほしい未来」のつくり手のみなさんの言葉を紡いでいます。

育休キャラバン 〜キャンピングカーで子連れ日本一周放浪の旅〜

2019年夏。家族4人、育休取って日本一周の旅路へ。0歳児と6歳児を連れて、キャンピングカーに乗って。家族の濃密な時間を、のんびり記録していきます。
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