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福島。果樹園とカルチャーと、人と。【6月8日 福島県福島市〜宮城県川崎町】

目覚めると、大きな雨音。そうだ、私たちは、早くも梅雨入りしてしまった東北南部にいる。梅雨前線から逃げるように北上する計画だったのにな。肌寒く、まだ眠っている子どもたちの体調を思って、暖房のスイッチをオン。もう一度布団に入る。

いつもなら朝ごはんの準備を考えるのだけど、あ、そうだ、今日は朝ごはんがお楽しみなのでした。友人の佐藤有美ちゃん(ちんどん)の紹介で宿泊させていただいた「Ji-kka」は、あんざい果樹園のご夫妻がオープンした民泊風の宿。広い和室と高い天井、ふかふかのお布団。洗練された空間ながら、心から落ち着けるのはなぜだろう。窓から見える果樹園の美しい緑色と雨のコラボレーションも、うっとりするほど美しい。

「朝ごはんできましたよ〜」お父さんに呼ばれ、いそいそととなりのギャラリーへ。お母さんが営む器と雑貨のお店の一角にご用意いただいた朝ごはんに、思わず声をあげる。なんて美しいんだろう。「そんなそんな、田舎のお料理だけどね〜」と笑うお母さん。自家製のお味噌でつくったお味噌汁、地元の美味しいお野菜、季節の山菜の煮物。丁寧につくっていただいた朝ごはんを、会話を交わしながらいただく幸せ。

息子を抱っこしてくださったお父さんとは共通の知人も多く、「えー、そこもつながってるんだ〜!」と、驚きながら会話も弾む。息子さんのこと、震災後の多くの出会いの話、果樹園の営みについて、福島のまちのこと。私たちの旅の話をすると、「へぇ、すごいなぁ」と、コーヒーの神様のお弟子さんがつくった焙煎所や、娘が喜びそうな水族館など、このあとのルートに合わせてお勧めしてくれた。こうやって、私たちのゆるゆる旅のルートは、出会った人の言葉で決まっていく。

楽しいひとときに、ご飯もおかわり。「ヤギを飼っている」と聞いて目を輝かせた娘。果樹園を案内してくださることに。

「晴れてたら遊べたのにね」と、ツリーハウスも見せていただく。「また必ず来ます」と静かに心に誓う私。あまりに美味しかったので、りんごジュースの配送をお願いし、身支度を整え、出発のとき。キャンピングカーが見えなくなるまで見送ってくださった安齋ご夫妻。心のふるさとが、またひとつ増えました。本当に、ありがとうございました。

果樹園をあとにしてコインランドリー経由で向かったのは、福島市の中心「福島県庁通り」に佇む、一軒の雑居ビル。この「ニューヤブウチビル」を中心に、福島のカルチャーが育っているという。まずは3階にある「食堂ヒトト」でランチを。ヒトトについてはちんどん執筆のこちらの記事に譲りますが、震災を経て吉祥寺から移転したこのオーガニック食堂は、休日のランチとあって多くの人で賑わっていた。息子をあやしてくれるお客さんや店員さんと会話を交わしながら、心まで満たされるお食事をいただく。娘は車麩のフライがお気に入り。

ヒトトのとなりにある「OOMACHI GALLERY」、2階のレコード・CDのセレクトショップ、フラワーショップ。どこも個性的で、見て回るだけでも本当に楽しい。多くの若い人で賑わっていて、あたたかな活気を感じる。

1階の眼鏡屋さん「オプティカルヤブウチ」を訪ねると、代表の藪内義久さんが出迎えてくれた。ちんどんが私たちのことを話してくれていて、旅のこと、このビルのことなど、会話を交わす。藪内さんの手書きの地図を頼りに、福島のまちを巡ってみることに。

福島のカルチャーをつくってきた老舗の服屋さんの新店舗、文房具カフェ、器屋さん、お蕎麦屋さん(覗いただけ)。この通りを軸に点在するお店の面白さに、ワクワク。一軒のブックカフェにたどり着き、休憩がてらコーヒーをいただくことに。

お店の中に所狭しと並べられた数々の本と、落ち着いた空間、コーヒーの香り。入った瞬間から、居心地の良さを感じる。娘はさっそく、パパに絵本をおねだり。

私もコーヒーをいただきながら、気になった本を手にとってみる。旅に連れて行きたくなる何冊かをパラパラめくりながら、店主の小島雄次さんと言葉を交わす。福島県庁職員からブックカフェの店主へ。その生き方に「でも、無駄だったことはなくて、全部今につながっている」と、小島さん。いすみの磯木さんと交わした会話にも通じるけれど、みんな自分の中で共鳴して、生きている。そんなあり方を心地よく感じながら、私たちの旅の話も少し。すっかり長居してしまいまいました。娘と絵本を選んで、お店をあとに。またエネルギーをいただきました、ありがとう。

気づけばもう夕暮れどき。ニューヤブウチビルに戻って、また藪内さんと会話を。お風呂と夕飯をオススメしていただき、心からのお礼を伝えて出発することに。

福島。そこに生きる人々の息づかい。子どもたちが寝付いた車内で、たくさんのことを感じた1日を振り返る。人を通してまちを見る。そんな旅になっていることが、じんわり嬉しい。

明日は山形方面へ。今夜はパーキングで眠ることになりそうです。飯坂温泉の共同浴場、気持ちよかったなぁ。


貴重な時間を割いて読んでくださったこと、感謝申し上げます。みなさんの「スキ」や「サポート」、心からうれしく受け取っています。