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教室の宇宙人とは?

数年前の小学校の教育実習訪問指導を思い出した。

そのクラスには、奇声を上げる子どもがいた。
授業が始まっても、奇声を上げるし、突然立ち上がって動き回る。
担任の先生は、授業は実習生がやるのでその子供にマンツーマンでついていた。
その子供は、担任の先生のいうことは聞くのはわかった。

が、担任の先生がちょっと席を外している時に、その子どもが突然叫んだ。

「私は宇宙人だ。この世界の果てに帰りたい」

と扇風機の前で話すときのような話し方で話したのだ。

実習生には、それを拾うことは無理だ。授業後に聞いたら、その叫び声も聞こえていなかったようだ。だが、ここは結構大事ではないかと思う。

「この言葉を聞いて、何か思う?」
「いえ」
「では、書き写してみてよく読んでみて、どう?」
「うーん、特に」

まあ、感じないかもなあ。

「私にはね、こう聞こえたんだよ。"私は、このクラスではエイリアンです。この世界のどこかにある、私の居場所に戻りたいです"とね」
「あー」
「あんだけ暴れて、叫んでいると、うるさいなーって思って無視しがちなんだけれども、よく聞くと、助けてくれって言っているようにも聞こえるんだよねえ」
「はい」
「そうだとしたら、担任はどうする?」
「助けてあげたいです」
「だよねえ」

違うかもしれないけれども、そうかもしれないという仮説を持つぐらいのことはできるようになった方がいい。

こういうのはどこで身につけるのか?
文学教育だなあと思う。ある種のシミュレーションができると思うからだ。

教師を目指す人は、文学はある程度は、学んだ方が良い。

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