『プロフェッショナル原論』読了感想

波頭 亮著『プロフェッショナル原論』を読んでの備忘録

2006年に刊行された本書は時代背景として耐震構造偽造問題やライブドア問題に大きく影響を受けていると考えられる。

なぜプロフェッショナル達が上記のような問題に関与してしまったのか、プロフェッショナルの仕事の定義や要件などを構造的に紹介し、現在の日本の世の中の構造の変化に伴って起きたことであると書かれている

プロフェッショナルについて解説していく内容と当時の日本の価値構造をうまくリンクさせて原因を分析を行なっており、これらが面白いくらいリンクしていると感じた点は非常に秀逸だった

最後は現代のプロフェッショナル達に対して、プロフェッショナルの要件などを今一度見直すことができれば、このような事件を引き起こす人物になることはないと言うメッセージを送ることが本著の目的なのかなと感じた

さてでは、なぜ件のプロフェッショナルたちは問題を起こしてしまったのか

プロフェッショナル達の仕事は高度な技術や知識に基づく属人的な仕事であり、他人からの監督される訳ではないのでブラックボックスになりがちであり、強い倫理観を持っていない場合簡単に手抜きをすることができる

日本の経済合理性という経済的に合理的なことは正しく、非合理なことは正しくないという価値観がはびこっていたという外部要因が意思決定に影響を与えた

本来のプロフェッショナルは公益に利する存在でなければならないという掟を持っているはずであり、独立的な職業であるが、社会全体が経済的に合理的なことを最優先する社会においては、プロフェッショナルの高い倫理観は排他されてしまう

そのため、本来持ち合わせるべき高い倫理観に準じると自分の生活が立ち行かなくなる可能性を孕んでいる時代であったとしている

これらの背景から、件の事件は起きたと推論している

著者はプロフェッショナル達へのメッセージとして、「プロフェッショナルはさらに自らの職能を磨き、プロフェッショナルの掟を一層厳しく守るのみ」と回答した

倫理観を欠き汚職に手を染めれば、プロフェッショナルの唯一の財産と言える資格を剥奪される可能性が高い。そのため、一層高い倫理観を持ち続けることが寛容であり

職能を今以上により磨くことで、クライアントの経済合理性第一主義を満たしつつ、社会的な正義を満たすアウトプットを出すことに専念せよと結論づけている


個人の感想

耐震構造偽装問題は僕が中学の時に世の中がそのニュースで持ちきりになったという印象を持っているくらいのビッグニュースだった。

なぜそれが起きたのかをプロフェッショナルの要件や特性、職能などを構造的に解説しつつ、それらに紐付けながら、問題の原因を明らかにしていく行程は非常に面白かった。

著者が問題視していることの問題の背景とプロフェッショナルの仕事の要件が見事なまでに深くリンクしている点が本著の面白いところ

この本で学ぶべきだと思った点

全権意識(センス・オブ・オーナーシップ)〜全て決め、全てやり、全て負う〜

個人的に責任を負う覚悟、自覚が足りない、どうやったらその責任を負うことができるのかのイメージがついていない

言語的な意味を理解できても、自分の中に内面化できている自覚がない部分なので、責任を負うという部分について深く考える機会になったなという印象

今後読み返すとすれば、プロフェッショナルたちの行動特性も学ぶべき点があったので、そこは取り入れていきたい

①(超)行動的(プロアクティブ):一流であり続ける

②意欲的(チャレンジング):やるなら史上初

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